シャープは同社製の太陽光パネルに「PID」と呼ばれる産業用太陽電池特有の出力低下現象が起きないと欧州最大の研究機関に認められた。欧州ではPID現象による太陽光パネルの出力低下が相次ぎ、品質問題として注目されている。同研究機関が欧米や中国の13製品を独自試験したところ、PID現象が発生しなかったのは4製品だけ。日本製は欧州での事業規模が大きいシャープと京セラが試験対象となり、いずれも出力低下は確認されなかった。
フラウンホーファー研究機構(本部=独ミュンヘン)が欧州、北米、中国、韓国メーカーなどの太陽電池モジュール13製品を評価した。日本製で対象となったのはシャープと京セラの製品。同機構は結果を明らかにしていないが、これまでに京セラ、ドイツの最大手Qセルズも現象が起きなかったと公表している。
シャープは3―4年前からPID対策の研究を開始。「2年前に独自の評価基準を作り、現象が起きない製品を出荷してきた」(吉岡秀起ソーラーシステム事業本部品質・環境統轄)という。今回、同機構によって第三者にも現象の発生がないと認定された。
PIDは高温多湿の環境で高電圧が流れるとモジュール回路内に電流漏れが発生し、出力が落ちる現象。同機構の試験で現象が見られた9製品の平均低下率は56%、最大で90%低下するモジュールがあった。出力低下のメカニズムは解明されていないが、ガラス内部からナトリウムが溶け出し、ガラスに電気が流れやすくなると発生すると見られる。対策として保護材や封止材の見直しが指摘されている。
欧州の産業用発電システムの電圧は1000ボルトが標準なのに対し、日本は600ボルト未満が多い。今後600ボルト以上の高電圧システムが増えると予想され、欧州と同様にPID現象の発生が懸念される。出力が低下すると売電収入が減り、設置者の投資回収が遅れるため、日本でも調査や対策が求められる。