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滞納管理費等の時効を停止させるには?‐マンションに関するQ&A

マンション管理Q&A

Vol.07 滞納管理費等の時効を停止させるには?

滞納管理費等の時効を停止させるには?

私が理事長を務めるマンションで、管理費・修繕積立金を4年間に渡り滞納している人がいます。現在、抵当権者が競売に掛けているのですが、競落者が現われたという話はありません。

管理費・修繕積立金の時効は5年と聞いていたので、時効の成立により請求が出来なくならないか心配しています。ついては、管理費・修繕積立金の時効を停止させるために、管理組合が行なうべき手段を教えて下さい。

おっしゃるように管理費・修繕積立金(以下、「管理費等」と称します)の消滅時効は5年で成立するとされています。そうなると消滅時効まであと1年です。このような長期滞納者がいる管理組合の理事長としては、どのようなことを行なえば時効が停止するのかは気になるところだと思います。

では、どうすればいいのでしょうか。

具体的には、「時効の中断」をするための手続きが必要となります。
「時効の中断」は、債権者(今回の場合は管理組合)が権利行使をすることで成立し、時効期間の進行を止めることができます(民法147条)。
なお、その権利行使の手段としては、1.請求、2.差押え(仮差押え・仮処分)、3.承認の3つがあります。それぞれの具体的な説明・手段は以下の通りです。

1.請求
裁判上の請求、支払督促など、裁判所が関与する形で権利者が権利を主張するもの。従って、裁判所が関与しない「請求」はここでいう「請求」に該当しないので注意が必要です。
訴えの提起、支払督促の申立、和解、調停の申立が該当します。

2. 差押え、仮差押え、仮処分
差押え・仮差押・仮処分といった裁判所からの財産保全命令も時効中断事由に該当します。
なお、他の債権者の申立による競売手続きにのる形で管理組合が該当債権についての配当要求を行った場合は、差押えに準ずるものであるとして時効の中断事由に該当します。

3.承認
承認とは、債務者自身が自分の債務を自ら認める行為です。例えば、債務者(今回は管理費等を滞納している人)から管理費等の一部を支払ってもらったり、「○月×日までに支払う」といった書面をもらえばそれで承認したことになります。
但し、管理費等の一部を受け取る際は、それが管理費等の一部である事を書面で明記して下さい。

内容証明郵便により債務者に支払いを「催告」することが良く行なわれますが、「催告」しても債務者から支払がなされなかったり、承認しなかったりした場合は、その後6ヵ月以内に訴訟などの裁判上の手続に移行しないと時効を「中断」する効果はありませんので、注意が必要です。(その場合、債権発生時より時効を中断させるべき事由がなかったのと同じことになり、債権発生時から5年でもって消滅時効が成立します。)

なお補足しますと、万一時効が完成しても、滞納している管理費等を請求すること自体は問題ありません。また、その請求に応じて滞納している区分所有者が支払ってくれれば、その支払ったものを受領することになんら問題はありません。
また、時効完成後であっても「管理費等の支払が遅れているので○月×日までに支払います」という一筆を入れてもらえれば、法律上、時効完成後に時効の利益を放棄したと考えられますので、本来時効にかかっているはずの管理費等についても支払義務が発生します。

消滅時効は、その時効の利益を受ける人(今回の場合管理費等滞納者)が時効の利益を受けるということを宣言して(=消滅時効を援用して)始めて時効が成立します。つまり、消滅時効の期限が到来したとしても、滞納債務者が消滅時効の援用をしなければ、管理組合では、今まで通り時効にかかった分も含めた滞納管理費等を請求しても問題ないことになります。

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