理事会決議で法的手段を取れるように管理規約を改定したい |
昭和57年度竣工のマンションの理事長です。 私は当マンションに転居する前に、別のマンションで理事をやっていましたが、そこでは同様の手続きが理事会決議だけで実施されていました。当マンションの管理規約は、竣工当時に分譲会社より提供された管理規約をそのまま使用し、改定を行っていないようで、そのような新しい規定が反映されていないようです。 当初からの居住者に確認したところ、今までは管理規約の変更を必要とするような事象が特になかったので、あえて手間を掛けてまで管理規約の変更を行なっていなかったとのことでした。
しかしながら、滞納金の可及的速やかな回収は当管理組合にとっても最も喫緊の課題となっており、今後益々理事会のレベルでの迅速、適確な取立て活動が要請されると思います。今回の件があったので、理事会としては管理規約を変更し、管理費等滞納者請求を理事会決議だけで簡便且つ迅速に行えるよう変更したいと考えています。 |
現在国土交通省(平成16年1月)より提供されているマンション標準管理規約(以下、「標準管理規約」という。)では、既に管理費等滞納者への請求について理事会決議で訴訟などの法的手段がとれるように改定(標準管理規約第67条第3項)されているため、貴組合の管理規約が標準管理規約の改定にあわせてあれば、法的手段はとれた案件です。 この標準管理規約は、区分所有法の変更(昭和57年1月、平成9年2月、平成16年1月)および、新設されたマンション管理適正化法・マンション建替え円滑化法も考慮し改定されていますし、このような法改正とは関係がないものでも、現在の社会情勢を踏まえて改正された事項もありますので、今回のような機会を契機に見直しを行なった方がよいでしょう。 では、管理規約の変更には、どのような手順を踏めばよいのでしょうか。
区分所有法では、管理規約の変更は「区分所有者及び議決権の各4分の3以上の多数による集会の決議によってする(区分所有法第31条抜粋)」となっています。
但し、実際に変更するにあたっては、上記のような手続きだけでは不完全です。管理規約というマンションで生活する上でのルールを変更するわけですから、マンションで生活する人達を納得させることが必要となります。 そしてそれらが打ち出されたら、次はそれを具体的にどのような文章で管理規約に反映させるかを検討する必要があります。その際には、区分所有法その他の法律との整合性を考慮しなくてはいけませんが、標準管理規約記載内容を利用する場合は、この整合性の問題はないと考えてよいでしょう。 あとは理事会にて、管理規約を変更する旨とその意図、メリット等を広報や説明会などを通してそれを管理組合員に啓蒙していく必要があるでしょう。 管理規約の変更には「区分所有者及び議決権の各4分の3以上の賛成」が必要となりますが、こうした地道な努力を通しより多くの人の賛同を得るよう根回しをすることが、結果として円滑な管理規約の変更に繋がるのではないかと思います。このような実務上の手順を踏んだ後に法的に必要な手順を経ることで、管理規約の改定作業はスムーズに進みます。 そのあたりから考えると、今回問題になっている「管理費等滞納者請求」にかかる管理規約の変更だけにとどまらず、管理規約全体を現行の標準管理規約を参考に検討してみてはどうでしょうか。 貴管理組合の場合は、かなり前の管理規約をお使いのようですから、現時点で特段の問題がなくても、マンション管理適正化法など各種法律との整合性やマンションをとりまく諸環境の変化に対応する必要から早晩、規約の他の部分も変更する必要性が出てくるのはないでしょうか。今回の件を契機に、貴マンションの管理規約を全て見直してみることをお勧めします。 なお、下記に平成16年1月の標準管理規約改定の主な変更箇所は以下の通りですので、ご参考にして下さい。
<平成16年1月に変更された標準管理規約の主な改定部分> |