東芝AKKY事件の流れを表にしてみました。


98年12月 A氏、東芝製ビデオデッキを購入
99年1月上旬 A氏、東芝に修理依頼の電話
1月中旬 A氏、ビデオデッキに手紙を添えて東芝社長宛に送付
1月下旬 ビデオデッキがA氏宅に戻る
2月上旬 A氏、ビデオデッキを製造販売会社の東芝ビデオプロダクツ社長宛に送付(後日返送される)
2月18日 A氏、東芝に電話。同社渉外管理室の担当者が「お宅さんみたいなのはクレーマーっちゅうの」と発言
6月3日 A氏、HP「東芝のアフターサービスについて」を公開。暴言の音声公表
6月23日 HPのアクセス数が約26万件に
7月5日 「週刊ダイアモンド」7月10日号「東芝への苦情電話で暴言を浴びせられたユーザーの『一矢』」を掲載
7月8日 東芝、A氏に対する反論を自社HPに掲載。「通常のクレームの範囲を超えていたため渉外管理室が応対した」
7月10日 新聞各紙が報道、このころまでにアクセス数は100万件を突破
7月12日 東芝、福岡地裁にHP内容の一部削除を求める仮処分を申請
7月16日 アクセス数約470万件
7月19日 東芝、記者会見でA氏に対して陳謝。仮処分申請を取り下げる。電子メール、電話などでこの件に関し約2000件の意見が寄せられ、大半が批判的内容だった。
7月20日 HPアクセス数が約650万件を超える
7月21日 A氏、HP閉鎖の告知(実際には以後も継続)。閉鎖理由は「匿名に身を隠した方の嫌がらせに耐えかねた」と説明。A氏のもとへは、この日までに約1万2700通のメールが寄せられたが、6割が嫌がらせの内容
7月22日 町井副社長ら東芝幹部5人とA氏が福岡市内のホテルで面会。議論は平行線のまま
8月18日 A氏HPの8月23日までの「休止」を表明。同日「週刊文春」8月26日号「東芝に謝罪させた男は名うてのクレーマーだった」を掲載
8月26日 「週刊文春」9月2日号「東芝に謝罪させた男は富士通関連会社課長を退職に追い込んだ」を掲載
9月2日 「週刊文春」9月9日号「東芝『クレーマー』事件 私はこう考える」を掲載
9月3日 A氏HPに週刊文春記事への反論を掲載
9月13日 A氏HP更新。文春への反論に家電販売会社の領収書などを追加。大量返品の事実を否定
10月14日 A氏HP更新。他のユーザーから送られた体験談を紹介する「東芝製ビデオ 同様の体験談」を新設
11月10日 A氏HP更新。「HPでなく法廷で経緯を明らかにする」として閉鎖を示唆
11月11日 A氏、HP削除(アクセス不能)




「取り屋」という言葉があります
以下は、立花隆さんの
週刊現代97年4月19日
情報ウォッチングからの引用です


「週刊文春」の4月3日号を見て驚いた。後半のカラーページに「NEWS EYE」というページがあって、<健全な大衆娯楽を目指して変わりゆくパチンコ業界>という大見出しの記事が3ページにわたってのっている。
 その冒頭のリード部分に、大きな活字でこうある。

<「このごろのパチンコが変わったね」という声が巷で聞こえ出してきた。というのはハイリスク・ハイリターンのギャンブル性の高い機種が次々に撤去されているからだ。昔のようにお小遣いでちょっとした射幸心を満たす。そんなストレス解消の場にパチンコホールは戻りつつある。>
 そして、パチンコ台がずらりとならぶ写真があって、「次々と計画にしたがって撤去される社会的不適合機」というキャプションが付いている。
 記事の内容を読むと、パチンコがもっぱらギャンブル性の高い機種中心になってしまったため、<夫婦でパチンコに熱中している間に、駐車場の子供が自己にあったり、変造・偽造カードの使用が多発したり、売上金が強盗に襲われるなど、ホールがあたかも犯罪の温床>になっているという事実が指摘されている。パチンコを健全化するためにはギャンブル性を低くする以外ないとパチンコ業者も考えており、そのため、業界は、ギャンブル性の高い機種を「社会的不適合機」として、撤去することにしたというのだ。社会的不適合機は全パチンコ台の18%、約70万台あり、その撤去を昨年10月からはじめ、来年1月末まで4段階にわけて行う。自治巣美1月末までに行われた第1次撤去は約29万台で、目標の97.3%が達成されたという。
 おおむねこんな話が書かれており、読んでいくと、かねて批判が多かったパチンコのギャンブル化の問題は、社会不適合機の排除で解決されつつあるのだなと感じるような記事の作りになっている。
 しかし、私はこれを読んで、「なんだ、これは」と思った。
 週刊文春は、昨年7月から10月にかけて、<パチンコ30兆円産業の暗部>と題して、パチンコ業界の闇の部分を徹底的に批判するキャンペーン記事を連載した。その中で、この社会不適合機の撤去問題も取り上げ、<パチンコ業界「ギャンブル化防止策」のまやかし>(96年9月19日号)という記事で、徹底的に批判しているのだ。
 パチンコがギャンブル化したのは、よく知られているように、カードで遊ぶCR機のためである。プリペイドカードを普及させるために、CR機だけ大当たりの確率を高くすることが許されたからだ。
 だから、ギャンブル性を低めるというならCR機をやめる方向に行かなければならないはずなのに、社会的不適合機として撤去されるものに、CR機はほとんど入っていない。撤去されるものは、ほとんどが、CR機以外の人気機種だから、社会的不適合機の撤去は、CR機をもっと普及させるためにやっているようなものだというのが、<まやかし>の記事の主張なのである。<今、パチンコ業界で起こっている大問題、変造カードも、子連れ主婦ののめり込みも、その結果としての幼児死亡事件も、サラ金も、女性客の売春も、全部が全部、CR機を外すことで解決する>
 ところが、第1次撤去18機種の中に入っているCR機はたった1機種だけ。その後の第2次から第4次撤去分の59機種の中にも3機種しか入っていない。
 その結果やどういうことになるか、<まやかし>の記事は、次のように書いている。
<大阪の経営者が明かす。
「今回の措置で、CR機以外のお客様を呼べる台を撤去させる。

(中略)
射幸性があってお客にカねを使ってもらえる台となるとCR機となるとCR機しかない。したがって撤去台の大半がCR機に入れ替わる。これが行政と台メーカーが描いたシナリオです」
 推測通りにちがいない。パチンコカードの東西二社は今期、変造カードの横行で六百三十億円もの損害を受け、その大半を裏社会に流出させた。そういういわくつきのカードに懲りず、カードでしか遊べないCR機にさらに突っ込んでいく。これはもう愚挙としかいいようがない。>
 これほどくそみそにやっつけた社会的不適合機の除去を、今回の<変わりゆくパチンコ業界>の記事では、<業界が一体となって健全化に努力>とほめそやしているのである。そして、CR機については、<CR機も全てが悪いのではなく、カードも経理の明瞭化のためには残します。>と書いている。
 両方の記事を読んだ読者はみな「なんだ、これは」と思ったに違いない。

 しかし、記事の最期の所まで行くと、謎がとける。<提供/遊技業2001年会>とある。つまり、この記事は、実はパチンコ業界のPR広告なのである。
 いわゆるブラック・ジャーナリズムの中には、商売としてこういうことを日常的にやるところがある。そういう雑誌は”取り屋雑誌”と呼ばれ、業界では深く軽蔑される。
 今回週刊文春がやったことは、「取り屋」がやることと同じである。
<30兆円産業の暗部>とういう連載記事は、内容的にも優れた記事で、ジャーナリズム界内部でも評価が高い記事だったが、このPR広告ひとつで、その評価はゼロになった、ゼロどころか、週刊文春はメディアとして社会的信用を失ったというべきだろう。


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