[月刊チャージャー]

バックナンバー 2007年2月号
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【調査】まずは疑って係!/外務省&大使館に聞いてみました 「外国人犯罪者」って、逃げ得じゃないの?
 
犯罪被害者に聞いてみました
2005年10月に起きた「2歳女児交通死亡事故」で最愛の娘、理子ちゃん(当時2歳)を突然失った山岡宏明さん、理恵さんのご夫妻は、ほかのブラジル人犯罪被害者の方々と力を合わせ、事故直後から「引渡し条約」の締結などを求めて署名活動などを展開してきた。深い悲しみの渦中にありながら、泣き寝入りするしかない現状を打破するための戦い。別の事件で「代理処罰」への動きが実現し、一歩前進した印象はあるのだが…。山岡理恵さんが、今の胸中と、この問題に対する思いを話してくれた。
日本で犯した罪は日本で償ってほしい
(山岡理恵さんへのインタビュー)

 時効が迫った1999年に起きた落合さんの事件(女子高生死亡ひき逃げ事件)や、2005年の三上さんの事件(レストラン経営者強盗殺人事件)について、最近になって「代理処罰」への動きが実現しました。今までまったく不処罰だったのが、処罰への道が開けたことは大きな一歩だと思います。ある程度の犯罪抑止にはなるでしょう。

 でも、代理処罰には日本とブラジルの量刑に差があったり、被害者が裁判を傍聴するにもブラジルまで行かなければいけないといったさまざまな問題があります。被害者の遺族として、納得できるものではありません。日本で犯した罪は日本で償ってほしい。ちゃんと謝ってほしいというのが私たちの気持ちです。

Hello Again りとたん 忌まわしい事故で理子を失うまで、こんな問題があることはまったく知りませんでした。事故の直後からインターネットなどでいろいろ調べるうちに、同じような被害者の方のWebサイトと出会い、私たちも知り合いのパソコンの先生のお力を借りてホームページ『Hello Again りとたん』を立ち上げました。そのホームページを通じてブラジルとの犯罪人引渡し条約の締結を求める署名を集め、多くの方にご協力いただきました。また、街頭でも署名活動を行いました。昨年4月から9月までの半年間で、本当に多くのみなさんに署名をいただいて、とても感謝しています。

 集まった署名は外務省に提出しました。当時、対応してくれた南米カリブ課長でさえ、この問題を「地方新聞は読まないので知らなかった」というのには失望しましたね。被害者がここまで動かないと何もしてくれなかったのに、代理処罰が決まった時の報道で、自分たち(官僚たち)の苦労ばかりを強調するコメントを目にして、国を動かすことの困難さをさらに痛感しています。

 私たちは、決してブラジル人や外国人の排斥運動をしているのではありません。たくさんの日本に住むブラジル人のみなさんが署名をしてくれたし、活動そのものを手伝ってもくださいました。犯した罪の責任を明確にするための、こうした法整備が進むことで、日本に住む外国人へのいわれなき差別が減り、お互いに信頼できる共生関係が育んでいけると思っているのです。

 理子を失った寂しさや会いたい気持ちは、時が経つにつれてむしろ深くなっていきます。私たちに「早くなんとかしてよ」と伝えようとしている気がしています。地元の警察では、理子の事件についても代理処罰のために、捜査資料の翻訳などの作業を始めてくれているようです。でも、代理処罰で決まってしまうと、引渡し条約への道が止まってしまうことにもなりますから、私たちはまだ代理処罰を受け入れるつもりはありません。あくまでも、日本で罪を償ってほしい、謝ってほしいというのが私たちの正直な気持ちです。時効まで、まだ、6年ありますから……。(談)

・『Hello Again りとたん
犯罪まとめ
 突然の事故でかわいい娘を失い、加害者は卑劣に罰を逃れ、謝罪さえもない。その悔しさと痛みは、想像するだけで辛くなるほどだ。国と国とのやりとりの中で、命の価値は後回しにされることがある。

 今回の取材で日本、中国、ブラジルに質問を投げかけて、お願いした期日に回答が戻ってきたのはブラジルだけだった。多忙であるに違いない役人に、こちらの都合で勝手に質問を投げかけているのだから、そこを糾弾するのは申し訳ない気もするが、この些細なやりとりの中で感じた「じれったさ」は、おそらく山岡さんが感じた国への「失望」と同じ病巣から生じているのだと思う。

 つまりは、一人の人間としてきちんと責任を取る覚悟の有無だ。覚悟を決めた山岡さんたちの活動は、事実、じりじりと国を動かしている。役人はもちろん、こうした報道を目にしながら、平和なはずの日本でのほほんと暮らす僕らには、はたしてどれほどの覚悟があるだろう。

 ブラジルからの回答で、引渡し条約と同時に「年金問題」が語られているように、国と国との利害も絡み、この問題はとても根深く、幅広い。今回の特集が、読者のみなさんの「覚悟」を見直すきっかけになることを願いたい。



構成/寄本好則(三軒茶屋ファクトリー)
撮影/三軒茶屋ファクトリー

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Theme No.2竹原慎二のボコボコ相談室 Round.16
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Theme No.3横山剣/あえて自分で会社をつくったのは、クレイジーケンバンドの音楽性のため
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Theme No.4サラリーマンのための水着ヨガ教室! Lesson.5
 Theme No.5
Theme No.5外務省&大使館に聞いてみました/外国人犯罪者って、逃げ得じゃないの?
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Theme No.6エプロン美女の手料理教室 Menu.3 チョコ煮込み
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Theme No.7「胃もたれ」にもいろいろある。自己判断で安易に薬を飲んじゃいかんぞよ
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