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米国発「シェールガス革命」 日本の期待と根強い輸出反対論

WEDGE 7月10日(火)13時40分配信

 AEIのマイケル・マッザとゲイリー・シュミットが、6月10日付ウォール・ストリート・ジャーナルに掲載された論説で、米国は、ポスト福島の原発停止で大量の天然ガスを輸入せざるを得なくなっている日本に、アラスカ産天然ガスを輸出すべきだが、米国内にはこれを阻む勢力がある。しかし、米の対日ガス輸出には、経済的利益のみならず、大きな戦略的意義もある、と論じています。

 すなわち、福島の原発事故の後、日本は原子力発電所の操業を停止したため、一夜にして発電能力の30%が失われてしまった。このギャップを埋めるため、昨年日本は約8千万トンの液化天然ガスを660億ドルかけて輸入した。他方、アラスカでは、天然ガスの爆発的生産増加が見込まれている。これは、日米間で良き貿易が成立することを意味するはずだ。

 ところが、米国のリベラル派や環境第一主義者たちは、ガスの輸出を止めようと躍起になっている。エド・マーキー下院議員は、国内ガス供給を潤沢にし、燃料費を下げるためと称して、2025年までいかなるガス輸出も禁ずるとする法案を提出した。

 有力な環境保護団体であるシエラ・クラブなどは、シェールガスの採算性を上げて、頁岩層に水を注入する採掘法によってシェールガスをたくさん採ることになったならば、環境破壊の度合いは計り知れないので、アラスカ産の天然ガスは外国に売るべきでない、と主張している。

 しかし、アラスカのガスを輸出すべきかどうかなど、考えるまでもないことだ。日本は、米国が豊富に持っている資源をぜひ買いたいと思っている。米国にとっては、ガス輸出による経済的利益は、貿易赤字の削減と新規雇用の創出につながる。

 さらに、戦略的にも重要な意義がある。不安定な中東諸国、あるいはロシアに全面的にエネルギー源を頼らずに済むようになれば、日本は共通の安全保障の課題に立ち向かう上で、より頼りになる同盟国となろう。他のアジア諸国にも天然ガスへの強い需要があることを考えれば、米国の埋蔵資源は米国の地政学的優位を築くために使われるべきだ、と論じています。

 * * *

 ポスト福島の原発停止により、日本は、火力発電の燃料としてLNGを大量に輸入していますが、スポット市場で調達しているために、100万BTU(英国式熱量単位)当たり16ないし17ドルを支払っています。アラスカから日本へ輸出する場合、これが11ドルないしそれ以下に下がります。そしてアラスカには、北極海に面したノース・スロープ・ガス田だけで、日本の電力が必要なガス90年分をゆうにまかなう量があるといいます。

 日本では、米国発の「シェールガス革命」への期待が高まっていますが、米国内にはガス輸出への根強い反対論があることをよく認識し、注視する必要があるでしょう。本論説のような主張が多く出てくれば、心強いことです。

 筆者らが案じるとおり、日本は、米国からガスを買うことができなければ、ガス大国ロシアに対し、何かと抵抗しづらくなります。イランからの日本、インド、欧州向けの石油輸出についても同様のことが言えます。米国のガス輸出が地政学的意味合いを強く帯びている、という筆者らの指摘は全くその通りです。エネルギー資源を媒介に日米関係の強化を図る、という発想が求められます。

著者:岡崎研究所

最終更新:7月10日(火)13時40分

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