第二夜 悪戯コンビ『てゐや』
「そんじゃまたな霊夢」
「また来なさいよね」
俺は、あの後小一時間霊夢をからかい、彼女が涙目になるまでいじってやった。
いやはや楽しいね。何ともいじり概がある。
最後の方なんて涙目のままジト目で何か訴えかけてきていたが。あれはいかんね。
ますますいじめ…もといいじりたくなる。
最後にはやりすぎて機嫌を悪くしていたんだが、夕飯を作ってやった所。すぐさま回復したようだった。
それで現在だ。
霊夢からいろいろ訊いたし、久しぶりの幻想郷。
いろいろ廻ってみたいと思う。
「また今度メシ作ってやるよ」
「貴方の料理本当に美味しかったわ。いや、レベルが高過ぎよ」
「外の世界で一度そんな仕事をしていた時期もあったんだ」
「他にもしてたみたいな言い振りね」
「まぁ、してたしね。
いろいろやったよ。SP・傭兵・料理人・執事・ゲーム開発者・鍛冶屋・洋服屋・探偵・画家・陶芸家・彫刻家・鑑定士……etc、etc」
「多すぎて何が何やらね」
「人間と違って時間がいくらでも有るからね」
「あのお金はそこからきてたのね」
「ああそうだよ」
おかげで金には困らなかったが、どれも極めてしまって金が有り過ぎて逆に困ったよ。
まぁその話は今は良いんだ。
「とりあえず俺は今から永遠亭に向かうとするよ。
とりあえず住む所が欲しいんでね。あそこに住む事にするよ」
「永遠亭? 知り合いでもいんの?」
「なに。永琳とは古くからの知り合いでね。まぁ後は察しろ」
「…解らないけど、解ったわ」
「そんじゃまたな」
「えぇ」
「おっと。最後に一つ訊くが…」
「何よ?」
「輝夜の奴はまだ引き篭もってんのかい?」
「…えぇ」
「…はぁ」
ったくあいつは…
◆
竹、竹、竹、竹…
辺り一面全て竹。
うん。アレだ。
「ものの見事に迷ったね」
現在、霊夢と別れてから、数十分。
永遠亭に向かったのは良いんだが。流石は迷いの竹林。
早速迷ってしまったよ。
面倒事は面倒事で楽しかったりするんだが、こういったのはどうもね。
何の刺激も無くて面白くない。
仕方なくうろうろしている訳だが。事が一向に進まない。
(いっそ、能力を使うか?)
そんな考えが頭をよぎるが、なんとなく却下。
此処まで来て能力使って、はい終了じゃ面白くない。
あぁでもアレだ。前却下却下。面倒だ。使っちまおう。
俺がそう思って、口を軽く開けた時だ。
「旦那?」
ん? この声は。
振り向くとそこには兎耳を生やした少女。否、幼女がいた。
「おぉ、てゐか。良いところに。今絶賛迷子中だったんだよ」
幼女の名は、因幡 てゐ。ていじゃなくて、てゐだ。
こんな姿だが、永琳や俺に及ばないにしろ。神話時代から生きてるご長寿さんだ。
言うところの『因幡の素兎』本人だ。
「やっぱり!夜の旦那ですね!! お久しぶりウサ!」
「うん。久しくウザい語尾だねぇ。てゐ」
「おおぅ。相変わらず容赦無いウサね」
「あぁ、ま挨拶みたいなもんだから気にしなさんな。時にてゐ…」
俺は一度そこで言葉を切って、にやりとする。
「悪戯の方は巧くやってんのかい?」
「はい。最近は師匠の始めた診療所のおかげで、人が来るウサ。ですので」
にやりと返すてゐ。
「訊けば、お前さん方『異変』っての起こしたらしいじゃないか。
言ってくれれば、月の使者なんぞ俺が八つ裂きにしてやったのに」
「いやいや、旦那はその時旅に出てたウサよ」
「うちの子に手を出そうってんなら、タダじゃおかないよ」
「話聞いてるウサか?」
「まぁそんな事は今置いといてだ」
「旦那が始めた話ウサよ」
「そう。悪戯、つまり罠の話だよ!」
「全くこっちの話を訊いて無いウサね」
「そんなに心配するな、てゐよ。
外の世界を廻ってきた俺には様々な知識と道具がある!!
さぁ罠の強化(主にエロ方向で)を行おうじゃないか!!」
「…もういいウサ。でもその話は乗ったウサ!!!」
「ふはははははははははははははは」
「ウッサッサッサッサッサッサッサ」
「笑い方、ウザいな」
「酷いウサ」
◆
「「できた(ウサ)!!」」
「ふっふっふっふ。こんな時の為に死ぬ程捕まえておいたよ」
「このトラップは最低ウサね」
「できれば掛かれ!美少女!!」
「相変わらずドストレートウサね。旦那」
「人生を楽しむ秘訣だよ。ワトソン君」
この罠は三段式だよ。
一段。「え?きゃぁぁぁぁ!!」
二段。「へっ!?」
三段。「駄目ぇええぇえ!!」
こんな感じだよ!!
今から楽しみで堪らないね。ふっふっふ。
「旦那。顔が凄い悪い顔ウサ」
そりゃねぇ。
ん? 誰か来たね。
「てゐ―!! 夜さ―ん!!」
「うどんげだね」
「鈴仙ウサね」
鈴仙・優曇華院・イナバ。
紺色のブレザーを着た兎耳少女だ。
俺と永琳はうどんげと呼んでいる。
ただ彼女、てゐと違い出るとこは出ている。
「あ。いました!師匠の言ったとうりです! 夜さん、お久し振りです」
「いよぉう。うどんげ久しぶりだね。できれば後三歩程前に進もうか」
「? 良いですけど…」
さぁいけ!!掛かれ!! うどんげなら申し分なく美少女だからね。
おいおい。てゐ。そんなにニヤニヤするな。バレちまうよ(アイコンタクト)。
旦那もにやけてるウサよ(アイコンタクト)。
仕方ないだろう?
仕方ないウサね。
ふはははははははははははは
ウッサッサッサッサッサッサ
「? 二人とも見つめ合って何にやけてるんですか?」
一歩
二ぃ歩
三歩ぉお!!
かちっ
「え?」
一段『対人式地雷クレイモア発動』(夜製作)
発動したクレイモアから無数の弾が発射される。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
「安心しな。うどんげそれは実弾じゃなく『餌』を塗り固めたものだよ」
「え、餌? 何のためにそんな…」
「まぁ解るよ」
二段『落とし穴発動』(てゐ製作)
「へっ!?」
「安心するウサ鈴仙。深さはたったの5メートルウサ」
「「そして下には(ニヤリ)」」
「「うなぎ地獄だよ(ウサ)!!!」」
三段『うなぎ地獄発動』(てゐや共同制作)
ふははははは。さぁうなぎ達よ!! うどんげについた餌を求め彼女の身体を這い回れぃ!!!
「え! ちょっと!? 服の中に! だ、駄目ぇええぇぇええええぇ!!!」
「「YES!!」」
俺とてゐはハイタッチ。
さてと。
「てゐ。準備はいいかい?」
「OKウサ」
「「レッツ…」」
「「シャッターチャンス!!」」
「撮れ!! 撮りまくれてゐ!!
あとで怒られないためにもねぇ!!」
「了解ウサ!!旦那!!」
「ふはははははははははは」
「ウッサッサッサッサッサ」
その後、十数分シャッターを切る音が竹林に鳴り響いた。
◆
とある幻想郷のブン屋宅。
「あやややや。今何かスクープがあった気が…」
◆
あの後、うどんげとてゐの道案内も有り。俺は竹林の奥にある永遠亭に辿り着く事ができた。
今、うどんげが「師匠を呼んできます」と言って永琳を呼びに行ったところだ。
俺は、用意されたお茶を喉に流す。
ふと、目の前の襖が開いた。
そこには赤と青が半々の変わったナース服(?)を着た、銀髪の美しい女性が立っていた。
「ただいま。永琳」
「おかえりなさい。夜」
二人は挨拶を交わした。
二百年の空白をまるで無かったかのように。
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