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立川断層帯 大規模な調査へ
去年の巨大地震の影響で、地震の危険性が高くなった可能性があると指摘されている関東の活断層、「立川断層帯」について、東京大学などがこの秋から、過去の活動の時期や規模を探る大規模な調査を行うことになりました。
「立川断層帯」は、東京の多摩地域から埼玉県南部にのびる活断層で、政府の地震調査委員会は、去年3月の巨大地震による地殻変動の影響で、地震の危険性が高くなった可能性があると指摘しています。
地震調査委員会は、断層全体で地震が起きた場合、マグニチュード7.4程度の大地震になるおそれがあると発表していますが、「立川断層帯」の過去の活動や地震の規模などには不明な点が残されていました。
このため、文部科学省や東京大学、それに東京都などの担当者が17日会合を開き、ことし秋から3年間にわたって、大規模な調査を行うことを決めました。
調査は、東京大学の研究チームが中心になって行い、東京の武蔵村山市や多摩市などで地面に震動を加える特殊な車両で地下の断層の構造を調べたり、掘削調査を行ったりして、「立川断層帯」で過去にどの程度の地震が起きていたのかや、断層がどこまで続いているのかなどを調べることにしています。
調査にあたる東京大学地震研究所の佐藤比呂志教授は「立川断層帯は詳しい活動が分かっていないうえに、去年3月の巨大地震以降、断層にかかる力が変化して新しい危険性が生じていると考えられる。都市部で地震が起きると大きな被害が出るため、今回の調査はとても重要だ」と話しています。
「立川断層帯」は、東京・府中市から埼玉県飯能市にかけてのびる長さおよそ33キロの活断層で、政府の地震調査委員会は7年前までに過去の地震活動などの検討結果をまとめています。
それによりますと「立川断層帯」では、過去に1万年から1万5000年程度の間隔で地震が発生し、最後に地震が起きた時期は2万年前から1万3000年前までの間と見られることから、地震の危険性がやや高いと考えられてきました。
政府は、首都直下地震の想定の1つとして、「立川断層帯」で大地震が起きた場合、東京の多摩地域や埼玉県南部、それに神奈川県北部などの広い範囲で震度6強以上の非常に激しい揺れになるという想定を公表しています。
また、ことし4月に東京都が新たにまとめた地震の被害想定では、死者は都内だけで2600人に上ると推計されています。
ただ「立川断層帯」で実際にどのような地震が起きていたのかは、まだ十分には解明されていません。関東平野には火山灰などが厚く堆積しているうえに、開発が進んで元の地形がわからなくなり、過去の地震活動を示すデータが得られにくくなっているためです。
今回の調査では、東京の武蔵村山市と立川市にまたがる広大な自動車工場の跡地で、地面に人工的な震動を加える特殊な車両を使って深さ10キロ程度までの地下の構造を調べ、地下深くでの断層の形状を明らかにします。
また、断層を横切る形で長さおよそ300メートルにわたって地層を掘り起こし、地震で断層がずれ動いた時期や活動の間隔について詳細に調べます。
さらに、断層がどこまでのびているのかも調査します。
「立川断層帯」の南の端は府中市内の多摩川の北側までとされていますが、さらに南にのびて多摩市にまで達しているという過去の研究結果もあり、研究チームは、改めて調査する方針です。
仮に、断層が長くなった場合、地震の規模が大きくなったり、被害の範囲が広がったりする可能性があり、地震の想定や防災対策にも影響が出ることになります。
「立川断層帯」の調査はことし秋からおよそ3年にわたって行われ、研究チームは結果が分かり次第、公表するとともに、政府の地震調査委員会にも報告することにしています。
07月17日 17時27分