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政治
【主張】東電値上げ 国の責任で柏崎再稼働を
東京電力の家庭用電気料金の値上げ問題は、人件費削減など合理化拡大で引き上げ幅を平均10・28%から8・47%に圧縮することで決着した。
だが、東電に何より求められているのは安価で安定的な電力供給だ。そのためには、東電の総合特別事業計画でも料金値上げと並び収益改善の柱と位置づけている柏崎刈羽原発の再稼働が欠かせない。野田佳彦政権は、地元の説得を含めて再稼働を主導しなければならない。
9月から実施される値上げは、原発停止で発電比率が8割を超えた火力発電の燃料費上昇などを補うのが目的だ。上げ幅の圧縮は、燃料調達の見直しや資材入札の拡大などで実現するという。
値上げ幅の決着を受け政府は今月末、1兆円の公的資金を注入し東電を実質的に国有化する。東電の資金繰り不安はひとまず解消する。公的資金を使う以上、可能な限りの経費節減は当然で、今後も徹底した合理化は欠かせない。
人件費をめぐっては消費者庁委員会の指摘を受け、管理職の年収減額を約31%、全社員平均で約24%減らすことになった。これは東電の計画を上回り、一時国有化された、りそなホールディングスの減額と肩を並べる水準だ。
とはいえ、東電には事故処理や賠償に加え、安定した電力供給の任務があることも忘れてはならない。技術者などの人材確保や士気低下を招かないよう社員の待遇に一定の留意は必要だろう。
すでに企業向けは4月から16%台半ばの値上げを実施済みだが、こちらも家庭用料金の改定に合わせ、14%台後半に圧縮される。混乱を招かないよう丁寧な説明が求められる。
今後の焦点は、柏崎刈羽原発の再稼働だ。事業計画では来年度中に7基ある柏崎刈羽原発のうち、最大4基の運転再開を目指す。これによって東電は黒字転換を図り、円滑な事故賠償と安定的電力供給につなげる考えだ。
しかし、新潟県の泉田裕彦知事は「事故原因の究明が先で、その前の再稼働論議はない」と厳しい姿勢を変えておらず、事態打開のめどは立っていない。あえて国との対立を強調するかのような態度は問題だ。
東電の経営が揺らげば、賠償や電力供給にも支障を来す。再稼働に向けた野田首相の強い働きかけが必要だ。
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