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2012年7月19日23時1分

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《いじめを見ている君へ》田中泯さん

写真:田中泯さん拡大田中泯さん

■今の自分、カッコいいか

 最初に断っておくが、いじめは子どもの責任じゃない。大人の責任だ。子どもはきょろきょろ大人を眺め、大人のまねをしているに過ぎない。

 大津の問題では、自殺から9カ月が過ぎたというのに、今ごろ大人たちはバタバタしている。学校も教育委員会も警察も自分に都合のいいことばかり言う。

 君は、大人の「見せかけの本音」を見抜いているだろう。言い訳で身の回りを固めた大人たちの姿をカッコ悪いと思うだろう。

 でもね、大人だって、かつては子どもだったんだ。君だって大人になるんだよ。ある日突然、子どもを卒業して大人になるわけじゃない。今の君の生き方が大人の君をつくるんだ。

 今、君がいじめを見て見ぬふりをしているなら、大人になった君もきっと傍観者だ。面倒な問題とは無関係な安全地帯に身を潜めるだろう。それでいいのか。

 僕も小学校時代、散々いじめられた。背が低く、どもりもあったから。土に埋められ、砂も食わされた。誰も助けちゃくれない。でも逃げ場はあった。川や森に逃げ、独りで過ごした。そこで孤独の素晴らしさを知った。

 協調性ばかりが求められる世の中だけど、僕は孤独が大事だと思う。誰にも見られていないときにこそ、本当の自分がいるんだ。

 君は親や先生や友達の前ではカッコよくふるまうだろう。でも、周囲に知人がいない孤独なときにこそ、カッコよく生きてほしい。僕が思う「カッコいい」の意味は、自分の生きている理由を自分で考え、自分の意思で行動できることだ。

 孤独なときに考えてごらん。今の自分がカッコいいかどうか。どんな大人になりたいのか。進学先や就職といったちっちゃな話じゃないぜ。いじめられている友達の顔も思い浮かべてごらん。そこで考えた結論が、「大人の君」を決定づけるかもしれない。(舞踊家)

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