石原慎太郎東京都知事は4月16日、米ヘリテージ財団で講演を行い、東京都による尖閣諸島の購入に言及した。
石原氏の講演の主な内容は以下の通り。
【毛沢東の「矛盾論」】
私は、共産主義は嫌いだが、中国共産党の指導者だった毛沢東は彼の方法論についてのごく短い論文「矛盾論」の中でとてもいいことを言っている。私たちが目の前にある問題で解決しなければならないと思っているものの背景には実はもっと大きな矛盾がある。彼はそれを「主要矛盾」と言った。自分の目の前にある厄介な問題として解決を強いられている問題は、実はその「主要矛盾」から発生した「従属矛盾」であって、目の前にある問題を解決しようとすればその背後にある大きな矛盾を捉えないと本当の解決にはならない。これから世界は時間的空間的に狭くなり、いろいろな問題が起こってくるが、実はその背景で世界全体の歴史の中で大きな波が来て動いているということを知らなければならない。
【環境問題、残された時間は60年】
その一つは環境問題だ。私は自分が国会議員だった40年ほど前、東京に来たスティーブン・ホーキング博士の講演を聞いた。そのときにある宇宙学者が「この宇宙全体に地球ほど文明の進んだプラネット(惑星)がいくつぐらいあるのか」と聞いたら、彼はすぐに「200万ぐらいある」と答えた。次に「では200万も文明のある惑星があるのなら、なぜ私たちは実際に宇宙船を見たり宇宙人に会うことがないのか」と聞かれ、ホーキング博士は「地球ぐらいに文明が進んだ惑星は自然の循環が悪くなり、宇宙時間からいうと『瞬間的』に生命が消滅する」と答えた。そこで私は挙手し「宇宙時間での『瞬間的』というのは地球時間で何年ぐらいか」と聞いた。彼は「100年だ」と答えた。あの講演を聴いてから40年たった。彼が神様であるかどうかわからないが、あれから40年たってしまった。言われたことからするとあと60年しか残っていない。米航空宇宙局(NASA)のジェームス・ハンセン博士はだいぶ前に「あと15年たったら北極海の氷は全部溶ける」と言った。実際にどんどん溶けている。あと50年たったら北極海はなくなって海としてよみがえり、大西洋から太平洋まで北極を通り抜けられるようになる。北極海に面しているロシアとカナダと米国は氷が溶けた後の北極海の海底資源の奪い合いをやっているが、非常に愚かな試みだと思う。世界中の氷が溶けて異常気象が起こっている。世界中の氷が溶けて海に集まり海水が増えれば蒸発する量も増え、降ってくる雨や雪の量も増える。それがどういう形で地表に落ちてくるかは気象学の問題だから簡単にはわからない。
5年前にツバルという赤道のすぐ近くにある島国に行ってきた。人口は数百万しかなく小さな国だが、どんどん海に沈んで、もう彼らは主食をそこで栽培できない。間もなくオーストラリアに移民せざるを得ないだろう。地球は自転しているから海にたくさん増えた水は遠心力が働き赤道の近くに水が集まって膨れ上がる。そういう状況がずっと続いている。この問題について去年の暮れに世界中の科学者が南アフリカのダーバンに集まって議論した。結局結論は出なかった。二酸化炭素(CO2)の一番の排出国である米国とシナとインドが合意しなかったからだ。結局、会議は「4年後に新しいルールを決め、その5年先、つまり9年後から実行しましょう」となった。こんなものが会議の結論といえるのか。本当に怖ろしい懸案が迫ってきているが、そういうことを私たちは念頭に置く必要がある。
【キリスト教圏とイスラム教圏の争い】
もう一つの問題は、歴史の必然的な大きな波として、アフガニスタンや中東で様々な摩擦が起きていることだ。結局これはキリスト教圏とイスラム教圏の争いではないのか。米国が主導してアフガンで米軍が戦っているが、キリスト教圏の軍隊はこの戦いに勝てないだろう。私は20代の終わりごろ、ある新聞社に頼まれてベトナム戦争に行った。従軍して本当に最前線のアウトポスト(前哨基地)でポンチョをかぶりながら徹夜でゲリラを待ち、真夜中に現れたゲリラを10人のうち7人殺してすぐに撤退してきた。この戦争に米軍は絶対に勝てないだろうと思った。他の外国から来ている記者らも同じ考えを持っていたが、結局ああいう結末になった。このキリスト教圏とイスラム教圏のいがみ合いは十字軍に始まる歴史的な必然だろう。キリスト教圏の白人がアラブを含むイスラム教圏の地域を支配し植民地にしたが、今度は彼らが独立することによって牙をむくようになった。これは歴史の必然の大きな波だ。どう終結していくかは誰にもわからない。さらにもう一つの問題は、世界に情報があふれ、欧州や米国など先進国の情報に対する憧れから移民がなだれ込んでいることだ。キリスト教にしろイスラム教にしろ「人を愛せ」とか「友達を大事にしろ」と言うかぎり、民族が違うからといって移民を認めないわけにはいかない。ところがその数が増えてくると厄介な問題が起きる。欧州でも様々な問題が起き、それが欧州経済にも響いている。欧州経済はどんどん疲弊している。この間もヘリテージ財団のある人たちと話したが、専門家の意見でいうと、フィンランド、ノルウェー、ギリシャやその他のラテン系の国々まで、価値観が違う民族国家が一緒になって同じルールにしようと思ってもうまくいくわけがないと言っていた。むべなるかなという気がする。
【日米間の主要矛盾は憲法にある】
そういうなかで私たちの日本という国は、大事な同盟国である米国とこれからいろいろな形で関係を新たにし、反省するところはしていかなければならないが、日本にも日米間の問題を考えるための一番背景に「主要矛盾」がある。それはいくつかあるがその一つは憲法だ。米国が戦争中に3、4日で作って英語から日本語に訳した非常に醜い前文でできているあの憲法だ。占領軍が占領統治を完成するために作った国家の基本法が、日本がサンフランシスコ条約で独立した後まで有効な法律として国を支配している。こんなばかな事例は日本以外の世界の歴史にはどこにもない。憲法の改正ではなく、しっかりしたリーダーが出てきてこれを廃棄して捨てたらいい。そしてすぐに自分たちで新しい憲法を作ればいい。いろいろな点を直さなければならないが、この憲法を見ると「責任」というものの度合いが「権利」よりもずっと少ない。権利の主張をしながら自分の責任を意識しないという非常にいびつな国民のメンタリティーを作ってしまった。とにかくこの憲法を変えなければならない。米国は日本という有色人種が作った唯一の近代国家に戦争で手を焼いたのだろう。この国を一回徹底的にばらばらにしようということでこの憲法を作った。
【「この怪物を徹底的に解体しなければならない」】
私の親しい友人だった故三島由紀夫さんと共通の友人だった村松剛君がカナダの大学の客員教授として1年か2年務めた帰りに、ニューヨークに寄って米国の代表的な新聞のニューヨーク・タイムズの日本が降伏した日とドイツが降伏した日のエディトリアル(論説)をコピーして持って帰ってきた。ドイツが降伏したときは「ドイツ人は非常に優秀な民族だがナチスによって道を誤った。この優秀な民族が優秀な国家を作るために私たちは協力をしよう」と書いてあった。日本の場合には違う。カトゥーン(漫画)が描いてあって、この部屋ぐらい大きなナマズみたいな化け物みたいなのがひっくり返って転がっている。その大きく開いた口の中に米国の兵隊が3人、鉄かぶとを被って入っていて、その牙を抜いている。そこに「この醜くて危険な動物は倒れたが、いまだに生きている。我々は世界の平和のため、米国の平和のためにこの怪物を徹底的に解体しなければならない」と書いてあった。そしてマッカーサーの占領政策が始まった。途中で朝鮮戦争が起こり、経済需要が増え、日本もそれをきっかけに立ち直っていくが、この日本を統治していた米軍の基本的なものの考え方はそれだ。人種差別といえばそれまでだが、有色人種の日本人が作った近代国家は英国を攻めて米国に次ぐ世界第2のロイヤルネイビーを持った。彼らにとっては想像もつかなかったのではないか。それを日本人がやった。私もそれは非常に誇りに思う。
【日本の近世の成熟と近代化の意味】
トインビーという歴史学者が「日本人が行った近代化は人類の歴史の奇跡だ」と書いている。褒めたつもりでも実はトインビーは日本の近世の歴史について知らない。米国が誕生する前の日本の江戸時代は、世界で一番成熟した時代だった。東京の前身の江戸という街には100万を超す人間が居住する世界最大の街だった。上水道まであった。当時の日本には寺子屋を含めれば数万の学校があり、皆読み書きができた。そういった成熟の中で関孝和という数学者はニュートンやライプニッツより100年も前に微分積分を考え出している。残念ながらそれより15年前にインドの哲学者が微分積分を考え出しているが、ライプニッツやニュートンよりも先だ。先物買いやデリバティブ、手形などの抽象経済も英国が始める100年前に日本の大阪の商人たちがやっていた。本間家という酒田の大豪商の三代目の光丘が先物買いの指南のために書いた抽象経済の手引きは各国語に訳され、世界中で先物買いの基本的なテキストとして読まれている。こういう時代があった。それがあったから私たちは他の有色人種の国家に先んじて日本という近代国家を作り、軍事国家を作った。それが最終的には米国を相手にする戦争になった。日本を占領統治したマッカーサーは後に議会で証言している。「今から考え直してみると日本が起こした戦争は自衛のための戦争だった。我々が経済封鎖をしたために日本は仕方なくこの戦争をやったということが今になってよくわかった」と。日本の教科書にも載せることにした。それはそれでいい。
その後、紆余曲折あってここまできたが、日本の「主要矛盾」の憲法がこの国の手かせ足かせとなっている。世界で起こった問題はすぐ日本に響いてくる。軍事問題もテロの問題もある。日本の軍隊が友軍と一緒に協力して戦争をすることは今の憲法があるかぎり認められない。だからアフガン戦争のためのインド洋での給油活動について小沢一郎という政治家が「あれはおかしい」と言い出し、日本政府はそれを気にしてインド洋の給油活動をやめた。今度ソマリアに出ていく日本の自衛隊は、どんなゲリラに遭って、どういう攻撃があるかわからないのに、慈善のための仕事で行くのだから銃火器はいけないということで、ライフルしか持っていけない。こういうばかな規制に私たちはいまだに甘んじている。
【「官僚」が「軍」になってしまった】
日本の官僚は昔は優秀だったが今は非常によくない。自分たちの利益ばかり考えている。かつては岸信介や椎名悦三郎、賀屋興宣など大官僚がいた。この人たちは非常に優秀だった。勇気があり命がけで戦った。誰と戦ったかといえば軍部だ。賀屋興宣さんは「軍隊が言うことは非合理でとにかく日本のためによくない」と海軍軍縮会議でロンドンに行って山本五十六を言い負かした。山本五十六は賀屋さんに抑えられ悔しがった。山本の部下の山口多聞が腹立ちまぎれに賀屋さんを殴った。昔は日本の官僚にはそれぐらいの度胸があったが、今はだめだ。官僚が軍になってしまったからだ。官僚が絶対的な存在になり、政治家が使われている。私も25年自民党にいて政府参与もやり閣僚もやったが、いくら言ってもだめだった。たとえば、福田赳夫内閣のときに、儲かるわけがないのに瀬戸内海から橋(本州四国連絡橋)を3本も架けた。私は福田さんに「どう考えても無駄ですからおよしなさい」と言った。福田さんは「ちゃんと合理性があるんだ」と言った。「あなたが鉛筆をなめて勝手に数字を作ったんじゃないか」と言ったら怒られた。そういうものがまかり通る背景にはそこにも「主要矛盾」がある。
【30兆円ものタンス預金が眠る国】
日本の国家の会計制度にはバランスシート(貸借対照表)がない。大福帳と同じ単式簿記でやっている。先進国で単式簿記でやっているのはおそらく日本だけだ。そのため官僚が平気で金を隠し、ごまかし、本当の数字が出てこない。読売のナベツネ(渡邊恒雄)さんから聞いて驚いたのは、日本でタンス貯金を持っている人がたくさんいて、その総額が30兆円あるということだ。その30兆円のうちの10兆円は聖徳太子の旧札の一万円札だ。新札に替えないまま持っている。ある大金持ちが300億円分の旧札を新札に替えてほしいと税理士に頼んだら「やってもいいけど、なぜこんなにお金があったのかと査察が入って厄介な問題になりますよ」と言われてやめたという。それでまだ旧札で持っている。そういうお金を掴んでいながら、それをどうやって引き出して国家のために流通させるかということを今の役人は考えられない。
【北朝鮮・ロシア・シナと接する日本の地政学的条件】
世界地図を日本が載っている極東の部分を逆さにして地図を見ると、シナとか朝鮮から見れば目の前にある日本列島はとても邪魔だ。ロシアもそうだ。こういう地政学的な条件の下にある日本は今どういう状況にあるのか。これは非常に基本的な「主要矛盾」だ。まず北朝鮮がある。状況証拠からすると日本から数百人の同胞を拉致して殺したこの国は、訳のわからない核開発をやっている。その上にあるロシアはかつて条約を破って突然宣戦布告をし、日本の北方四島をかすめとった。もう一つはシナがある。シナが核を開発して、タクラマカンやゴビの砂漠で核開発をやったときにどれだけの放射能が日本に降ってきたのか。日本政府は知って知らぬ顔をして隠した。これら3つの国は核兵器を持っていて日本だけが核兵器を持たない。世界の大国でこれほど地政学的に劣悪な状況におかれている国家が他にあるだろうか。こういう地政学的な背景があるということを「主要矛盾」として私たちは見据えていったほうがいい。
【「非核三原則」と日本の核武装のこれから】
日本の防衛問題がこれからますます大事になる。これまでのように「アメリカさんのお妾さん」で「なんでもお願いします」という時代は終わらなければならない。私が「すごいなあ」と思ったのは、あの沖縄返還交渉をやったときの非核三原則だ。「作らず、持たず、持ち込まず」。これは佐藤栄作さんが言い出して断固「これを通せ」といった。参院予算委員会で私は「『作らず』『持たず』だったら持ち込ませなければだめじゃないか」と言ったら「これは自民党の党是だから批判するなら自民党を辞めたほうがいい」と言われた。私は「あなたのお兄さんの岸信介さんは「『作らぬ』『持たぬ』『持ち込む』と言ったはずではないか」と言った。実は佐藤さんは小笠原諸島を取り戻したときに米国のジョンソン大統領に「日本は核兵器を持ちたい。米国の協力で持たせてもらいたい」と言ってジョンソン大統領に断られたのだ。沖縄返還時には大統領が変わってニクソンを相手に例の非核三原則が出てきた。だが、いざというときに持ち込むのは当たり前だ。沖縄には米軍基地がたくさんある。それを運ぶ飛行機もある。私の親友の故・若泉敬が必死に働いて密約を結んで「いざというときは黙って持ち込めば日本政府は認める」となったというのはうその話で、私は嘉手納基地に行ってちょっと米軍を脅かして、しまってある核弾頭を見せてもらった。昔からあるし、今でもある。そんなことは知らぬふりしていればいい。なければこちらが困る。実はそのとき佐藤さんは、ドイツと一緒に核兵器を開発しようと考えていて、村田良平に命じてドイツと交渉する。ドイツは、東ドイツの問題もあったり、チェコスロバキアでは「プラハの春」があり、旧ソ連軍が侵入してきて抑え付けたりという動きがあって、非常に神経質になっていた。「今は時期ではない」ということで、結局、後にブラント政権になってから強引に中距離ミサイルの配備をドイツにさせて、その条約の中でドイツも一緒に引き上げるという条項を入れた。では日本はどうしたらいいのか。「核を持ったらいいじゃないか」と最近キッシンジャーは言っているそうだ。それを取材した日高義樹君がシュレジンジャーのところに行ったら「もうそろそろ日本も核を持たなければ米国も大変だ」と言ったという。どこまで本当かリップサービスかはわからない。オバマが世界中から核兵器をなくそうと「イエス・ウィ・キャン」と格好のいいことを言ってノーベル平和賞を受賞した。そして2カ月もたたないうちに米国は新しい核開発のシミュレーションをしている。だったら日本もシミュレーションをやったらいい。「日本は核兵器開発のシミュレーションをやります」と言うだけで、世界は緊張するし、ひとつの抑止力にもなる。それくらいのことを考えて、それが外交の手品みたいなタクティクス(戦術)だ。だが、日本が核兵器を持ってもそこから先は大変だろう。麻雀では上がるためにはイーハンをつけなければだめだ。国際政治の中で核兵器を持っていることはイーハンだ。ミャンマーは徹底した軍事政権で徹底的に欧米にいじめられたが、北朝鮮はどうか。なんだかんだ言いながら、食べ物を送ったりして騙された米国の方が単純にひっくり返されている。今度はさすがに食料援助はしないだろう。核兵器を持っても実際はなかなか使えないし、使える状況ではない。ただ、持たなければものが言えないという不思議なメカニズムになっている。
【小惑星探査機「はやぶさ」の快挙】
では日本に何ができるのかといえば、日本人が始めた快挙である60億キロ航行し帰還した小惑星探査機「はやぶさ」だ。「はやぶさ」に一番驚嘆して評価しているのは米国の技術者だ。60億キロ飛んで行って火星の向こうの星の土を拾って帰ってくる。途中で故障してそれを自分で直しながらオーストラリアの平原に正確に予定通りに落ちた。正確な帰還というのは難しい技術だ。この「打ち上げ」と「60億キロの飛行」とそこからの「正確な帰還」を行ったこの3つの技術を合わせると日本は何ができるのか。米国が核を気にしながら、次の戦略兵器で開発させるコンベンショナル・ストライク・ミサイル(CSM=非核攻撃ミサイル)は日本だったら簡単にできる。やるかやらないかは日本人の政治家の度胸の問題だ。通常兵器で核弾頭も積んでいないのだから。最近はGPS(全地球測位システム)技術も進んでいる。例えば東京を2千キロ、3千キロ先から撃とうと思ったら今の技術だったらできる。かつて米国は核を持とうとしたリビアのカダフィをやっつけるときに、英国の基地から(フランスが嫌がったのでフランスの上空は飛ばずに)ジブラルタル海峡から迂回して地中海を入ってリビアに行って、カダフィの居住区を徹底的に爆撃した。カダフィが一番好きだった第3夫人と子供が殺され、カダフィはショックを受けて核兵器の保有をあきらめた。それに比べればはるかに高等な技術を今も米国も日本も開発している。「あんた変なこと言ったらお宅のベッドルームに爆弾落としますよ」と。そういうCSMを日本だったらできる。日本はすぐにやったらいい。
【日本の軍事技術のポテンシャルを見せる】
米国もそろそろ日本を対等なパートナーとして扱ったらいいと思う。例えば、日本の航空機産業。これは徹底的に米国が弾圧してきた。YS―11という中小型のプロップ飛行機を作ったとき、あの販路を私たちは東南アジアに求めていたが、これは米国が妨害して潰した。同じような形の飛行機を作りつつあったインドネシアのIAe(インドネシアン・エアロスペース)の飛行機も潰された。当時、丸紅のインドネシア支店長をしていた鳥海巌君がそのいきさつをよく見ていて私に報告してくれた。その時インドネシアの飛行機を潰したのは、あのロッキードのコーチャンとクラッターだった。米国の軍用機の特に戦闘機のコックピットは全部日本製だ。中の計器にあるクリスタルリキッドの液晶体も、戦闘機が急上昇したり急降下したら温度の差で濁ってくるから日本製しか使えない。クリントン政権の最後の頃、ソニーが「プレイステーション2」という子供の遊び機器を作った。これに搭載されているマイクロチップは米国の宇宙船に搭載されているマイクロチップのビット数の4倍ぐらいあった。子供の遊ぶ機械にこんなものを搭載するのはとんでもないと米国は慌てた。「これは絶対に中国には売るな」と言ったのと同時に悔しがって軍用機のコックピットの液晶体などを自分たちで作ろうとした。当時の日本の通産省はずいぶん抵抗したが押し切られて、それを作っている日本の会社は企業秘密の生産工程までを見せた。そして結局どうなったかといえば「これはだめだ」ということになった。日本と同じようなものを作ろうとしたら日本より倍のお金と時間がかかる。やはり日本から供給させようという結論に至った。そういう経過があった。中曽根康弘さんの時代に日本は三菱重工が次期支援戦闘機(FSX)の素晴らしいものを作ろうとしていた。宙返りの直径がF―15の約半分ということだった。あの頃はステルスはなかったがこれを持ってこられると空中戦でどんな飛行機でもかなわない。だが、大変な圧力がかかり涙をのみながら三菱重工は開発を諦めた。その代わりに当時の世界最高の戦闘機だった米国のF―15を日本と米国で改良してF―15のスペシャル版を作り、日本と米国だけで使おうということになった。三菱重工は情けないことに「わかりました」と折れた。本当は作っておけばよかったのだが、米国が作らせなかった。今はそんなことは言わないだろう。私は日本ならできると思う。いずれにしろ、日本の持っている軍事力の技術的なポテンシャルを見せる必要がある。そのためには実際に核兵器を作らなくてもシミュレーションでいい。やりだしたら皆ざわざわする。ましてやそのCSMなど、やろうと思えばできる。シナは尖閣諸島を日本が実効支配しているのをぶっ壊すために、あそこでもっと過激な運動をやると言い出したが、どういうことか。あれは日本の固有の領土だし、沖縄を返還するときにはあそこの島も全部返ってきた。沖縄というところは非常に島が多いところで、私は沖縄返還のときに随員というかオブザーバーでいたが、ヨットでやるのと同じようにポイントを決めて、それを結んだ7つか8つのポイントを結んだ線から南にある海上の突起物を全部、日本に沖縄として返してもらうという条文にした。それで返ってきたら、尖閣はおれたちのものだと言い出した。とんでもない話だ。
【東京都が尖閣諸島を購入する】
東京都は尖閣諸島を買うことにした。私が留守の間に実務者が決めているだろう。栗原さんという一族が持っているが、こわごわとして迷っていた。本当は国が買い上げたほうがいいが、国が買い上げるとシナが怒る。外務省がビクビクしている。あそこに最初に燈台を作ったのは私だ。日本青年社という右翼の団体に頼んで作った。その燈台が発光しだしたから「海図に載せろ」と言ったら、外務省が「時期尚早」だと言う。日本の国土に日本人が作った燈台に灯をともして、海図に載せなかったらかえって危ない。「とにかく載せろ」と言ったが載せなかった。私の息子が国土交通省の大臣になったときに押し切って、燈台に「日本国保安庁、これを作る」というプレートを貼らせた。その尖閣も今の政府の姿勢では危ない。私は栗原さんという人は昔からよく知っている。学生たちに燈台を作ってもらったときは、島の持ち主は古賀さんという沖縄の人だった。古賀さんのところに行ったら旦那さんが亡くなって未亡人になっていた。「残念ながらついこの間、大宮の栗原さんという人が買いたいというから売りました」と言う。栗原さんの所に行ったら「政治家には一切会わない」と言われたが、栗原さんの家を仕切っているおばあちゃんの親友が取り持ってくれて会った。そのおばあちゃんは「戦争中、飛行場を作ると言われて広大な土地を接収された。私は政治を信用していませんから絶対に政治家に預けません」と言っていたが、そのおばあちゃんが亡くなり、事情が変わってきた。今の当主の栗原君が私と会って、東京が買うことにした。東京が尖閣諸島を守る。立派な漁場になる。沖ノ鳥島も中国や台湾や朝鮮から船が来て乱獲したので、漁協の組合長が頑張って漁礁を作った。日本の政府が嫌がろうと、どこの国が嫌がろうと、日本人が日本の国土を守ることで島を取得する。やることを着実にやっていかないと政治は信頼を失う。まさか東京が尖閣諸島を買うことに米国が反対するわけはないだろう。
〔世界経済新聞イン・ザ・JP〕