留置担当官が容疑者の国選弁護人の選任手続きを怠った諏訪署 |
諏訪署の留置担当官2人が、建造物侵入と盗み未遂の疑いで逮捕、勾留されていた住所不定、無職男性(36)から依頼された国選弁護人の選任手続きを忘れたため容疑者の権利を損なう恐れがあるとして、伊那区検は25日、この男性と、共犯として逮捕された名古屋市の無職男性(31)を、いずれも処分保留で釈放した。
県警留置管理課によると、こうした事案は「過去聞いたことがない」としている。今後は任意捜査に切り替えて捜査を続けるというが、取り調べの求めに応じてもらえなくなる可能性がある。
2人は今月7日、駒ケ根市内の無施錠の工場に侵入し、配線ケーブルを切断して盗もうとした疑いで駒ケ根署が逮捕。管理面の事情から諏訪署に勾留されていた。県警捜査3課によると、共に容疑を認めていた。
36歳男性は14日に諏訪署留置管理課の警部補(56)に、17日には同課の巡査(29)に、それぞれ国選弁護人を付けたいと申し出た。しかし、その後も弁護人は訪れず、男性が21日、別の担当官に「弁護人が来ないがどうなっているのか」と尋ね、手続きされていないことが発覚した。
31歳男性は9日に国選弁護人を選任していた。
県警留置管理課に対し、警部補と巡査は共に「手続きを忘れてしまいました」と話しているといい、同課は詳しい事情を把握し次第、処分などを検討する。同課の高見沢和実課長は「誠に遺憾。経緯の調査を徹底し、再発防止に努めたい」とのコメントを出した。
刑事訴訟法は、死刑、無期、上限が3年を超える懲役・禁錮に当たる事件で容疑者に勾留状が出ており、容疑者が貧困などの理由で弁護人が選任できない場合、裁判官は請求により容疑者のために弁護人を付さなければならないと規定している。
長野地検によると、伊那区検が問題を知ったのは22日夕で、事実関係を確認後に同区検の判断で25日、釈放した。長野地検の小池充夫・次席検事は「弁護人の依頼権は容疑者の大切な権利。それを失念して拘束したまま調べるのは容疑者の防御権が保たれない恐れがある」としている。
渡辺修・甲南大法科大学院教授は、今回の諏訪署員2人の対応について「弁護人に相談する権利は最も重大な権利で、あってはならないことだ」と批判。具体的には、容疑者が弁護人と相談し、示談や謝罪文などの「有利な情状」を整えられなくなる―と指摘した。一方、検察側が処分保留で釈放したことについては「(容疑者の)防御の準備を待つことは賢明な判断だ」と述べた。