最初に投稿した小説から大分時間がたち、久々の投稿。
この作品はTS・性転換・転生要素があるのでそういうのが苦手な人は回れ右でお願いします。
一章:第一回試召戦争
1-1 Fクラスに加入した理由
場に緊張感が流れる。
手に持った5枚のカードで相手を挑発するかのようにひらひらと前後に振る。
既に顔が汗で酷いことになっている対戦相手は真っ青になりながらそのカードに釘付けになる。
「レイズ」
「ま、まだ上がるだと!?」
周囲の観客からどよめきが走り、対戦相手の震えがさらに酷くなる。
クスリと小さく哂えばさらに怯えは隠し切れなくなる。
「ふふふ……それでどうするんですか?応じますか?おりますか?」
対して自分の顔はまったく変わらず笑みを浮かべているだろう。
分かりきっている結末に動揺したりはしないのだ。
「も、もう勘弁してくれ!!」
「ふふ」
「ひぃ!?」
お馬鹿さんですね、そう言いたげに微笑むも相手には理解されなかったらしい。
ふと椅子の周囲に倒れふしている男達の強面を見る。
「なかなかいい顔をしている、そう思いませんか?」
「な、ななななな何をだ!?」
がっ!
動揺への返答は椅子の傍で既に気絶している巨漢への蹴り。
それにさらに怯えを強くした相手は小さく悲鳴をあげて椅子から転げ落ちる。
手にもったカードを落とさないのはプロである彼の最後の抵抗だろう。
「さて、結果は分かりきったので答え合わせといきましょうか?」
「答え合わせ……だと?」
「はい。私がこのカジノに目をつけたのは……まぁ単に目についたからです。特に理由はありません」
そんな理由で、そう呟く彼はきっと極上に運が悪かったのだろう。
「連日連夜通い詰め、毎日大金をかけながらも少しずつ負ける人物。
当然あなた方も既に理解していると思いますが、私はカモを装っていたのですよ」
「…………」
「そして『偶然』仲の良くなったバーテンダーのお姉さんに帰国の日程を話し、カジノに来る最後の日を伝えます。
『偶然』それを知ったあなた方が最後に私から掛け金をむしりとろうとするんです。ふふふ……偶然って怖いですよね?」
その場にいる誰もが理解した。
ああ、こいつ性悪だなと。
「そしてあとは簡単です。最初のほうは小額で負け通し、私は最後だからという呟きで高いレートの台へと向かいました。
もちろんその台にイカサマが仕込んであったのは見抜いてましたし、簡単に阻止できるだけの実力もありましたから」
そして、と言ってから私はそのカードを公開する。
「クイーンのフォーカード。望みさえすれば常にクイーンは私の下に集まるのですよ?」
ま、非常識ですが最近日本でオカルトを利用した学校があるから非常識も常識ですよね。
「……そ、それもオカルトだというのか!?」
「ふふ。フルハウス如きで得意げにどんどん値を吊り上げていく貴方にプロならば絶対に見つける私の動揺のサインを見せれば後は簡単です。
貴方の敗因はただ一つ……私をウサギだと思い、さらに自分の技量に自信を持ちすぎました。あれ?二つですね」
私ってば馬鹿ですねぇ、と苦笑いをして後ろから青い顔をして見ていた店員の顔を踏みつける。
まぁ降りろとサインを流しているにも関わらず得意げに値を吊り上げていくディーラーを見て武力に訴えたのが悪い。
え?サイン?当然こっちは『オカルト』で妨害しましたよ?フォーカードのほうは我ながら不思議ですが。
「それで、どうします?応じますか?おりますか?」
「ん、んー!さすがに毎日カジノに通い詰めは疲れちゃいました」
伸びをしてスカートのポケットから携帯電話を取り出す。
時刻は既に午前3時……夜中じゃないですか。
「明日はゆっくり寝ますか」
明らかに違法行為へと手を伸ばしているであろう荒くれ者達の視線を無視して表道へと出るために迷路のような裏道を歩く。
しかしさすが違法カジノ、たんまりお金は溜め込んでいたようだ。
やはりあの辺で手打ちにしておいて正解だったようだ。
あれ以上値を吊り上げていたならば彼らの命に関わってくるので命を狙われていただろう。
別にその程度、前世においてこの世界にはない魔法を習得している私にはあってないような刺客だが。
ちなみに私には前世というものが存在する。
何を間違ったのか──間違ったのは性別だが──前世では男なのに女として産まれてきた元魔王。
それが私の全てを語るのに相応しい。
幼少の頃はよく「詩織が男の名前で何が悪い!」と近所の子達を殴って泣かせてたなぁ……。
まぁそれが両親にバレて淑女としてのスパルタ教育をほどこされ、無事少女になったわけだが。
今までは少女(笑)だったからなぁ。
「そういえばそろそろクラス振り分け試験があるから帰らないといけませんね」
2年生から転校生として入る文月学園。
妹のクリスも新入生として入学することになる学園だ。
詩織は丁度2年から開始される召喚戦争───そのクラス振り分けの為の試験を受けるよう藤堂カヲルから言われた。
「あんたもFクラスは嫌だろう?」とは藤堂学園長の言である。
別に詩織はFクラスだろうとAクラスだろうとどうでもよかったのだが学園行事なので一応受けようと思っていた。
思っていた、が。
「あら?……試験、昨日でしたね」
カジノで粘りすぎたらしい。
桜が舞う坂道を登校する詩織は久々の日本に小さく歌を歌いながら歩いていた。
あの後文月学園、藤堂学園長へと連絡してクラス振り分け試験について聞いてみたがやはり再試験はダメらしい。
まぁ厳しいところなんだろうと納得し、チャーターしたジェットで帰ってきた。
時差の関係で多少眠いが平気だろう。
「あー……そういえばクリスちゃんに連絡してませんね。ふぅ、また文句を言われます」
ふと妹がぷんぷんと怒る姿を思い出しため息を吐く。
別に怖くないのだが恐ろしくしつこいのだクリスは。
「お前が詩織=レッドフィールドか。遅刻だぞ」
校舎へと入ろうとした時にかけられた声のほうへ向くとそこにはいわゆるガチムチ体系のジャージ教師が。
……実践的ないい筋肉ですね。
「そうですよ。これでも急いだんですけどね」
なんせジェットをチャーターしましたし。
「急ぐ急がない以前に試験当日に外国でゆっくりしてるのが悪いと言ってるんだ」
仰るとおりです。
「しかし本当にいい筋肉ですね……何か格闘技でもしてるんですか?」
「人の身体をジロジロ見るのは関心せんな。まぁいい。そういう話はまた今度だ。受け取れ」
箱から取り出して差し出されたのは一枚の封筒。
箱の中身を見れば既に空だったので自分が最後らしい。
「……?なんですこれ?」
「中の紙にクラスが書かれている」
「事前にFクラスと聞いてるんですが」
「それでも、だ。文月学園は試験校だからな。こういったシステムはその一環だ」
はぁ、そうですか。
そう気のない返事を返して丁寧に封筒から中の紙を取り出す。
『シオ=レッドフィールド……Fクラス』
「当然ですね」
「しかしお前、なんたって男のフリして転校したんだ?」
「藤堂学園長に聞いてませんか?」
藤堂は研究者なので学園経営者としての才能はなくはないが、凡才だったはず。
しかしそれでも組織における伝達を適等にするほど凡愚ではないはずだ。
「聞いてはみたんだが、本人に聞けとの一点張りでな」
ふむ、そういうことですか。
「簡単な話ですよ」
「ん?」
「Fクラスって大半が男なんでしょう?なら男として入学したほうが場に溶け込みやすいじゃないですか」
この作品で二次って今更だよなぁ…………まぁなんかアニメ二期が出るらしいけど。
ちなみに作者はアニメのほうはまったくみてません。
原作を読んでからアニメみると想像からの劣化が激しくて…………。
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