全世界で景気が低迷し、減産を強いられている中、中国政府が許可した華南地区(広東省等)で、首都、宝山、武漢の大手鋼鉄グループの高炉建設が着工した。
すでに中国には公開データ上で、8億5000万トンの粗鋼生産能力がある。だが地方で未公認のBILLET等半製品を生産している会社を含めれば、もっと多い。日本はこの20年ずっと1億トン程度である。
私の予測では、華南投資が完了すれば、未公認を含めて、10億トンを超える粗鋼生産力を中国が持つ。
世界需要が数年後15億強トンなので、中国は完全に狂った投資をしていることになる。
こんなに作ってどうするのか?
中国の主張は、広東等華南地区には高炉の製鉄所がないのだから、投資は必要という論理である。またアフリカ諸国が鋼材を必要とするので、数年後には需給バランスは回復すると見ているようだ。
中国中央政府が打ち出した旧設備の廃棄も進んでいない。「スクラップ アンド ビルド」という言葉はなく、建設(ビルド)のみが急速に進んでいる。
製品が売れないのに、稼動をとめられない高炉は、石炭や鉄鉱石を食べ続ける。高炉の減産技術を持っているのは、欧米と日本だけである。韓国POSCOも持っていない。
そのため受注が無くても、延々と作り続けることになり、BHP等鉄鉱石や石炭の鉱山会社だけを儲けさせることになる。
一定の需要があると原料の価格が下がらないので、ほとんどの製鉄メーカーは赤字になる。
通常は赤字なるとつぶれ、設備が廃棄される。しかし、韓国POSCOは国営であり、中国の大手は全てが国営である。彼らはつぶれないのである。
造船や半導体で繰り返した国営企業との不平等な競争が、日米欧の素材メーカーにはダメージになる。
WTOが各国をまとめて、国営企業による生産品目は、輸入国関税を上げたり、輸入制限をしてとってよいことにすればよい。日米欧、ASEAN諸国一致協力が必要である。
現状のままでは、政府の補助金でつぶれない国営企業だけが、大不況の後でも残り、自由貿易を阻害することになる。
韓国も国内需要や海外需要の精査等せずに、需要の2倍の設備を作るので有名であるが、中国の無策の膨張政策は世界危機を招く。
「自由主義」対「国家民主主義」という対立構図は政府レベルだけでなく、企業レベルでもおきている。保護主義が蔓延することを阻止しないとならない。
赤字を出しても、絶対につぶれない国営企業と同じ土俵で戦うのは、死なない「ゾンビ」と戦う人間と同じ構図である。同じルールで評価されるものではない。
行過ぎた「市場経済」を規制するのと同様に、政府や公的機関の出資が20%を超える企業は、国際入札や輸出量に制限を加えるべきである。
自由貿易のメリットを享受したいなら、同じ土俵で戦うべきである。これに文句を言うのであれば、自ら合理化して、組織をすっきりさせ、トップの人事を政府から受け付けないようにするべきだ。
メーカーが大手銀行のような「親方日の丸」意識では未来は無い。健全かつ将来性のある国営企業等、今までおお目にかかったことはない。
当記事はJTT海外展開のブログより管理人の相田和宏氏のご好意で転載させていただいています。
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