ずいぶん遅くなりました。すいません。
今回はルビが多いです。携帯で読んで下さる方は少し読みにくいと思います。
5話 決闘
ヴェストリの広場は『風』と『火』の塔の間、中庭にある。西側にある広場のせいか、日中にもかかわらず日が差すことはなく決闘には適した場所だった。
溢れかえっている生徒たちがいなければ、だが……
「諸君、決闘だ!」
ギーシュの高らかな声に
「ウオーー!!」と歓声を挙げている。
噂を聞きつけてきたのだろう。私たちの決闘を楽しみにしているようだ。
「ギーシュが決闘だぜ!相手はルイズの使い魔だってよ」
「勝てよ、ギーシュ!貴族の力を見せ付けてくれ!!」
ギーシュは大きく腕を振り、歓声にこたえている。
そうしてからようやく私の存在に気づいたようにこちらを向いた。
「よく逃げずに来れたな。その勇気は誉めてやろうじゃないか」
手に持つ薔薇の造花をいじりながら言ってくる。先ほどまであった怒りの感情を上手く隠しているつもりだろうが、やはり苛ついているようだ。あからさまに挑発してくる。
「ククッ。私が逃げるだと?なにを言っているんだ、小僧。それは私のセリフだ。君こそよく逃げなかったじゃないか」
「ほ、ホントに君は貴族に対しての礼儀がなってないな。まあいいよ。二度とそんなこと言えないように僕が躾けてやるさ」
この少年は実に怒りやすい。挑発を返しただけでここまで怒るとは。
「では始めるか。
ルールは相手に参ったと言わせるか、意識をなくさせれば勝ちだ。あとは…まぁ、君にはないが杖を落とせば勝ちというのが決闘のルールだ。
僕は『青銅』のギーシュこと、ギーシュ・ド・グラモンだ。君に言う必要なんかないんだけどね、これも一応礼儀だからな」
そう言うとギーシュは薔薇の花を振った。
一枚の花びらが宙を舞い、地面につくと同時に形を成す。
背は人間と同じくらい、甲冑を着た女戦士だ。ただその体は青銅でできていた。
「僕は魔法使いだ。だから僕の魔法、青銅のゴーレム『ワルキューレ』に君の相手をしてもらう。
先に言っておくけど、僕は誰かに何かを教授するといった経験はないんだ。間違って大怪我させちゃうかもしれないけど、許しておくれよ?」
ギーシュが薔薇を振るう。それに答えるように、ワルキューレも動き出す。どうやらあの薔薇がギーシュの杖であるみたいだ。
「わかった。そういえば自己紹介していなかったな。
私はエミヤだ。二つ名はないんだが…そうだな。しいて言うのなら“アーチャー”だな」
「へぇ、君は平民の癖に二つ名を持ってるのか。そうかアーチャーか」
「いや、二つ名ではないんだがな。一時期そう呼ばれていてな。それでもだいぶ愛着がある」
そう話している間もワルキューレは近づいている。青銅であるのならば『強化』で十分だろう。
呪文を唱える。
エミヤシロウだけの呪文、意識を【魔術使い】に代えるためのオリジナル・スペル。
「同調・開始」
さぁ、戦闘開始だ。
・・・・・・
sideオスマン
コルベール君の話は大変興味深い話だった。
伝説上の使い魔『ガンダールヴ』が現代に蘇った。
主人である始祖ブリミルが呪文の詠唱中、盾となったとされる最強の使い魔。変幻自在に武器を操り、多くの敵を葬ったといわれている。
なぜだ。なぜ現在になって伝説が蘇った?
コルベール君は伝説の存在ということで大変興奮して言ってくる。
「わかりましたか?あの青年の左手のルーンは確実に『ガンダールヴ』のルーンなのです!!」
「わかった。わかったからそう興奮しなさんな。とにかく、君の結論を聞かせてくれ」
「だからさっきから言ってるでしょう!あの青年は『ガンダールヴ』です!これが興奮しないでいられますか!!」
彼は嬉しそうにしているが、これは喜んでなどいられるはずがない。
強すぎる力は別の力を引き寄せる。これから先、私たちは平和に暮らせなくなってしまうかもしれないのだ。
「そのな、ルーンが一緒だったというが…… その青年は平民だったのじゃろ?それが何で『ガンダールヴ』になったんじゃろうな」
「わかりません。ただ、彼は確かに普通の平民でした」
「そうじゃな。ワシはやはりその青年を『ガンダールヴ』と決め付けてしまうのは早計だと思うのじゃよ。それに、そのルーンは不完全なんじゃろ?」
「ええ。彼は一度『コントラクト・サーヴァント』を抵抗しました。その後ちゃんと契約できましたが、それでもルーンの力は完全に使えないかと」
「そうか。うーむ、どうしたものかの」
私がこの問題について考えていると、ドアがノックされた。
ムッ。話に夢中になっていてここまでの気配に気がつかなかった。失態じゃの。
「誰じゃ?」
「私です。オールド・オスマン」
よかった。彼女なら大丈夫じゃろう。
もし彼女以外の教師に話を聞かれていたとしたら、青年に被害が出てしまうかもしれない。別に他の教師たちのことを信頼していないわけではないのだが、それとこれでは話が別だ。
「何か用かの?」
「はい。ヴェストリの広場で決闘が行われているようです。大騒ぎになっていて、止めに入った教師も生徒たちに邪魔されてしまい、場を抑えることができていません」
「まったく。こっちはそれどころじゃないというのに。暇な貴族ほどたちの悪い生き物もおらんのう。
それで誰が暴れてるんじゃ?」
「一人はギーシュ・ド・グラモンです」
あのグラモンとこの馬鹿息子か。あやつの父親も色の道でなら剛のものだったからのう。
どうせ女の子の取り合いじゃろう。
「そしてもう一人は、ミス・ヴァリエールの使い魔です。
まったく… メイジではないというのに、ギーシュ・ド・グラモンは何を考えているのでしょうか」
驚いた。まさか相手がコルベール君と話していた例の青年だと思っていなかった。
「教師たちにいたっては『眠りの鐘』の使用許可を求めています」
「なにを言っておるんじゃ。たかがケンカに秘宝を使う必要があるか!放っておいてもよろしい」
「わかりました。では」
ロングビルはオスマンに一礼すると学院長室を出て行った。
「オールド・オスマン」
「うむ。まかせよ」
確かにケンカ程度に秘宝は使えない。だがそれ以上に青年が『ガンダールヴ』か知るいい機会だ。
悪いがギーシュ君には犠牲になってもらおう。死ぬようなことはないだろうし。
それに彼が伝説じゃなかったら、何もないわけだし別にいいしの。まぁ、ミス・ヴァリエールの使い魔は大怪我するかも知れぬが、生徒というわけでもないし、いつでも対処できる。
杖を振る。壁にかかっている鏡に広場の様子が映された。
・・・・・・
sideルイズ
圧倒的だった。
ギーシュのワルキューレは強い。人間には出せないであろうほどの速度の拳と蹴りによる格闘戦。その強さは戦闘授業での優秀な成績が実証している。
だというのに、私の使い魔はそのワルキューレの攻撃をすべて避けるか、いなしている。その顔に浮かべている微笑からは余裕さえ見て取れる。逆にギーシュのほうが焦っているほどだ。
昨日、エミヤは私に言った。
私を守ることができると、召喚できたことを幸福だったと思わせると。
私はエミヤの言葉の意味をちゃんとわかっていなかったようだ。いやわかったつもりでいて、その実まったくわかっていなったというのが正しい。
私は強いといってもせいぜいそこらの平民より強いだけでメイジには勝てないものだと思っていた。
だけど違った。エミヤの強さは想像以上のもので、たぶんだけどあれでも本気ではないと思う。
エミヤはワルキューレの攻撃を避け、いなし、距離をとる。さっきから同じような光景の繰り返し。エミヤは息さえ切らしていない。
「どうした、小僧。大怪我どころか、傷ひとつつかないぞ?」
「おい、貴様!貴族に向かって小僧だと。僕は名乗ったんだからちゃんと『ギーシュ様』って呼べよな」
今のところギーシュも本気を出していない。本来、ギーシュの魔法は7体のゴーレムによる自動攻撃。その四方八方からの攻撃は学院の先生に、接近戦は優秀、という評価をもらったぐらいである。
ただそれでもエミヤには届かないだろう。
確信がある。私はエミヤがどんな戦い方をして、どれほど強いのか知らない。それなのに私には確信があった。
目
あの鋭い目を見たらわかる。エミヤは絶え間なく続くワルキューレの攻撃を全て“視て”から対処しているのだ。
「さて、そろそろ反撃させてもらおうか」
エミヤはそう言うと距離をとった。今までより少し遠くまで下がっている。
ワルキューレはエミヤの後を追う。ギーシュによって標的にされたエミヤを自動で追うようになっているからだ。
対してエミヤは身体を畳むように足を折る。まるで大砲が弾を詰められ、今か今かと発射を待っているかのように。
ワルキューレがエミヤの足の届く範囲に入った瞬間、
ドゴォン、とその音速の蹴りが撃ち出された。
・・・・・・
sideエミヤ
「さて、そろそろ反撃させてもらおうか」
ワルキューレの性能はわかった。青銅の自動人形。ただそれだけだ。
特別突き抜けた何かを持っているでもなく、特殊な能力を持っているでもない。
攻撃は単調で実に捌きやすく、あとはただ早いだけ。といってもあのランサーはいうは及ばず、魔術を使ったキャスターよりも遅い。
ワルキューレのブローを受け流しつつ大きく距離をとり、蹴りの体勢に入る。
ただの人形といっても相手は青銅の塊。『強化』していても生半可な攻撃では効果はないだろう。
迫ってくるワルキューレを蹴り飛ばすための力を溜める。イメージは矢を射る寸前の弦。限界まで引き絞り、ワルキューレの腹部辺りに狙いを定める。
そして十分引きつけてから蹴り飛ばした。
うむ。いい当たりだ。角度も申し分ないと思う。ワルキューレはもう満足に動けないはずだ。それを証明するかのようにお腹にはくっきりと足の跡がつき、ワルキューレは腕をだらりと下げている。
そんな光景を見てギーシュや周囲の野次馬は唖然としている。
それもそうだろう。ギーシュと決闘することになったとき、シエスタは「殺される」と言った。
なぜか。
それは普通に戦っても魔法使いには敵わないからだ。自分の武を最大限に鍛えられたならメイジを打倒することができるかもしれない。しかしそうなるまでに多大な時間と鍛錬が必要となる。
メイジと平民では最初からアドバンテージがありすぎる。才能さえあれば簡単なものとはいえすぐに使えるようになるメイジと、一生を経て鍛え上げていかなければならない平民とでは差が大きすぎるのだ。
それが鍛えていない者ならなおさら。無数の岩が飛んでくるだけでも脅威になる。
「な、なななにしたんだよ」
「なにを、と言われてもな。ただ蹴っただけだ。
そんなことよりも、早く本気になれ、小僧。出さないのなら負けてしまうぞ。ただの平民にな」
「くそっ!…わかったよ。見せてやる、わが兵士たちをな」
ギーシュが杖を振るう。花びらが舞う。
もしあの花ビラからワルキューレができているのならば、これでもう終わりだろう。杖には1枚も花びらが残っていない。
瞬時に6体のゴーレム、ワルキューレが現れる。
正直厄介だ。2、3体ならばどうにかできただろうが、今の私では何をしようと6体のワルキューレを打倒することはできないだろう。
―――ならば作れ。敵を打破出来るモノを―――
―――もとより、私は戦う者ではない―――
―――私は生み出す者にすぎない―――
―――だから作れ。使い慣れた双剣を―――
「投影・開始」
手には白と黒の夫婦剣。
この手に最も馴染んでいる【干将・莫耶】。伝説の名工がその妻を代償に作り上げた希代の名剣。
そして、なぜだかわからないが手のルーンが輝き始める。
同時に頭に入っていく、干将・莫耶の『適した使い方』。その中には前から使っている方法や、自分が使っていなかった方法がある。
なんだこれは?ルーンの力?後で調べなければならないな。
ルーンに集中していたせいか、取り囲んでいるワルキューレたちに気づかなかった。
ワルキューレたちは近づき攻撃を仕掛けてくる。
はじめは正面低いところからローブローとその真後ろからの回し蹴り。
正面からのパンチは足を上げて避け、蹴りは莫耶で受け止める。
入れ替わるように左右から渾身のストレート。
両方を干将・莫耶で受け止め、払い、体勢が保てなくなったワルキューレに斬りかかる。1体の腕を切り落とすことに成功。
すかさず、今度は正面から二体のワルキューレがハイキック、そしてもう二体は後ろからのローキックが迫ってきている。そのすべてを干将・莫耶で受け流し、弾く。
そして距離をとるために後ろに大きく跳躍する。
さすがにあの状況で絶え間なく攻撃を続けられたならば満足な反撃しずらいし、相手の攻撃が当たってしまう可能性さえある。
相手の戦いやすい状況を作るというのもあまり褒められたものではない。
「6体の…いや、本来は7体か。ワルキューレ7体による自動攻撃。なるほど、確かに手強いな。そうそう反撃する暇もない」
「ふふ、そうだろう。やっと気づいたか、僕の強さに。
もう降参したまえ。僕を本気にさせた以上、無事ではすまさないからな。
だけど僕は優しいんだ。君が土下座して謝れば許してやってもいいよ」
・・・・・・
sideルイズ
「ふふ、そうだろう。やっと気づいたか、僕の強さに。
もう降参したまえ。僕を本気にさせた以上、無事ではすまさないからな。
だけど僕は優しいんだ。君が土下座して謝れば許してやってもいいよ」
ギーシュののんきな声が聞こえる。別にギーシュは大声で叫んでいるわけじゃない。いたって静かに、普通の会話をするくらいの声だ。
だというのに、ここからでもギーシュの声がよく聞こえるのは、先ほどまで盛り上がっていた周囲のギャラリーが静まりかえっているからだ。
突如エミヤの手に現れた剣に込められている、規格外な魔力。
知らない。あんなモノ知らない。小さいころからいろんなマジックアイテムを見てきた。それでもあんな魔力が込められている剣なんて見たことも、聞いたこともない。
いや、それ以前にエミヤはどこにあんなもの隠していたんだろうか?いくらうまく隠そうがあんなに魔力が漏れている剣なんてすぐにばれてしまうだろう。仮に私がわからなくても、他の生徒や先生たち中からでも気づく人間が出てくるはずだ。
今その魔力にギーシュが気づいていないのは混乱しているからだと思う。
ギーシュの気持ちはわからなくもない。自分が信頼していた魔法が平民に破られたのだ。しかもそれはただの蹴り。これでは混乱もしよう。
「降参か。悪いがそれは断らせてもらう。
マスターにいいところを見せると約束していてな。そう簡単に退く気はない」
「そうかい。まぁそこらの平民にしてはがんばったほうだよ。
じゃあ終わらせてやろう。ワルキューレ、やれ!」
ギーシュは杖を振り下ろす。
死の宣告。ただそれはエミヤにではなく、ワルキューレに対してになってしまう。
急加速。
意思をもたぬがゆえに、ギーシュの命令を忠実に実行に移すゴーレム。しかしワルキューレではエミヤには勝てない。この魔法学院でも勝てる人間は相当限られてくるだろう。それほどまでにあの剣の魔力と、エミヤの身体能力は大きい。
キィン、キィンと金属と金属の無骨な音が響く。
このトリステイン魔法学院では見る機会自体が少ない、原始の戦い。
片方が人間で、片方がゴーレム。
エミヤは先ほどの微笑のまま次々と迫りくる拳を受け流し、弾き、ワルキューレに斬りかかっている。
まるで身体の一部であるかのように剣を操り、着々とワルキューレの残骸で山を作っていく。
決闘は終わった。
徐々に数を減らしていったワルキューレも全てバラバラ。いくらゴーレムでも、もう動けないだろう。
エミヤはギーシュに近づいていき、刃を首に向ける。
「チェックメイトだ」
・・・・・・
sideエミヤ
「チェックメイトだ」
刃を向ける。
干将・莫耶を投影したときから周囲は静まり返っている。
ギーシュの人形は全て破壊し、また杖にもバラの花びらは残っていない。
勝負あり。まだギーシュに戦う手段があるのなら話は別だがないのであれば私の勝ち。
「杖を落とせ。そうすれば決闘は終わりだ。
まだ戦えるというのなら付き合うが、もう魔法は使えないのだろう?」
ギーシュは杖を落とさない。どうやら自分の意思では落とすつもりはないようだ。
手は震え、汗をかき、顔は強張っている。しかしその目はまっすぐにこちらを見据えている。
「ぼ、僕は貴族だ。平民相手に僕の杖を落とすつもりはない!
ああ、認める。君は僕より強い。貴族でも君みたいに動けるやつ見たことないよ。でもな、これは貴族の意地だ。平民に負けた上に自分から杖を落としたらグラモン家の恥になる。
だからな、僕はどんなことになっても絶対にこの杖だけは落とさない。
どうしても落としたいんだったら、ち、力づくでこい!!」
“貴族のプライド”というのはこんなにも強いのか。
自分の命が危ういというのに、それでも自分のプライドが大事。
それは家族の恥になるのなら自分の命すら惜しまないということ。おそらく貴族とやらは名誉のために自らの命を絶つことができるのだろう。世間一般からはみればとてつもなく立派。
でもそれは、大切に想ってくれている人達にとってはただのわからずや。
どうして死んでしまった。なんで生きてくれなかった。
一時の栄光の為に、死ぬまで悲しみ続ける人が出てくる。
そんなのは間違っている。どんな人間にだって一人はそんな人がいる。その人たちが願っているのはただ無事な姿だけだ。
「いいんだな」
干将・莫耶を消し、拳を顔の前に突き出しながら尋ねる。決闘とはいえ、もう何も抵抗する手段がないものを殴るのは気が引けるが仕方がない
ギーシュは、コクッ、と頷く。
認めてやろう。確かに私では理解できない、理解したくもないことだが実に立派である。
「言ってるだろう。僕は貴族だ!平民なんかに負けを認めるわけにはいかないんだ!」
「わかった。貴様が言ったことだ、私を恨むなよ。 ギーシュ・ ド・ グラモン」
顔を引きつらせながらもそう答えるギーシュの勇気に敬意を表して、放つ。
正拳突き。拳はひねり、まっすぐに相手に向かう。足は一歩踏み出し、拳に自分の体重を乗せる。狙うは腹部。一撃の元に昏倒させるのが目的だ。
「うぐぉ」
拳は見事ギーシュのお腹を捉え、そのまま人だかりまで吹っ飛んでいった。
・・・・・・
「エミヤー」
しばらくするとルイズが駆けつけてきた。
「ルイズか。どうだった?」
「どうだった、じゃないわよ!あんた、なんであの剣のこと黙ってたのよ?」
「なに、君は私の力を信じていなかったようだしな。別に言わなくてもいいと思ったのだ。
それより、私に言うことがあるのじゃないのか?」
「うっ」
ルイズにも先ほどのギーシュのようにプライドというものがあるのだろう。
どうも私に謝罪するのに抵抗があるようだ。
「やれやれ。君は約束を破るつもりかね?
まぁ。それでもかまわないのだが、貴族というものは平民との約束は守らないのだな。
ふむ、またひとつ勉強になった」
「なっ、なにいってるのよ!私はまだあんたのことを認めていないだけよ。ギーシュを倒したぐらいで調子に乗るんじゃないわよ」
手応えがないと思ったが、ギーシュはあまり優秀な魔法使いではなかったのか。
まぁいい。ルイズが納得されなかったのは残念だが、少しは私の力がわかってもらえただけよかったと思おう。
・・・・・・
sideオスマン
勝ってしまいおった。
コルベール君も驚いておる。
「オールド・オスマン、やはり彼は伝説のガンダールヴです。平民である彼が貴族を倒したのです。これは確定でしょう」
「まぁまぁ、落ち着け。だからさっきも言ったように君は早計じゃ。
ガンダールヴは魔法を詠唱するときに無防備になってしまうメイジを守る盾、始祖ブリミルが従えた最強の使い魔じゃ。あらゆる武器を使いこなしてきたと言われておる。
だが、彼は最初から武器を使っていたか?違うじゃろう。彼は自身の身体能力を以ってギーシュ君のワルキューレを圧倒したのじゃ。
確かに彼はガンダールヴかもしれない。じゃがそう決めてしまうのは早い。
それにな、あの剣のことはどう説明するのじゃ?
悪いがワシは今まで生きてきてあんな剣は見たことがない。おそらくあれはラインメイジ1人分ほどの魔量が込められている」
「む……」
コルベール君は口篭る。無理もない。
あんな圧倒的な力を見て、しかもそれが平民だったのだから伝説の名前を借りてでも納得したいのだろう。
強大すぎる力。
人は自分よりはるかに高い力を見たとき、たいていは恐れ、また少数はその力に憧れる。多分に漏れずコルベール君はあの力を恐れたようだ。だから何とか自分が納得できる理由を作る。例えそれが自分でも信じられないものだったとしても、それで安心できるのなら。
「今までの話は一旦置いて、彼が本当にガンダールヴだと仮定して話をしよう。
彼は初めからガンダールヴではなかった。だというのに契約したときにガンダールヴになったと…
彼をガンダールヴにしたのは誰じゃ?」
「はい、それはミス・ヴァリエールです」
「その彼女は優秀な生徒なのかの?」
「ええ〜と、そのですね、どちらかというと…無能かと」
「うーむ、謎じゃの。優秀でないメイジがガンダールヴの力を与えたか……
まぁよい。これは他言無用じゃ。絶対に王室のバカどもの耳に入らんようにな。あやつらにばれたらすぐに戦の道具されてしまう」
「は、わかりました」
「ではの。また何かわかったら報告しに来てくれんか?」
「では」
コルベール君はワシの言葉に頷いてから、出て行く。
それにしてもガンダールヴか。なぜ今になって伝説上の使い魔が現れたのか。これはこれから何か起こるという前触れなのか。
物騒なことが起こりそうじゃの。
はぁ〜〜。
自然に溜め息が出る。学院のトップである私が溜め息をするのはよくない。普段はミス・ロングビルの前でしかしないのじゃが、今生徒たちの前に出たら思わずしてしまいそうじゃの。
「なにが起こってもワシたちに何も起こらんように祈るしかないの」
ちょっとギーシュを強く書いてしまったかもしれません。でも私は7体のワルキューレが本気で戦ったならラ・ロシェールで戦ったときのワルドよりは強いんじゃないかなと思ってます。原作で戦ったときは突然のことだったので本当の力は出せなかったんじゃないかな、と。
初めての戦闘描写です。正直書けば書くほど変になっている気がしていて自信がないです。もし、ここ変だなと思いましたら教えてください。参考にして直したいと思っております。
1話のときから言っていた、ガンダールヴの能力で使えないのは身体能力の向上です。これ以上アーチャー強くしたら瞬殺だと思いまして。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。