果たし状をもらった日、仕方ないので夜中十一時に学校に忍びこむことにした。
ちなみに紅音は連れて来てない、相手が指定した日でなかったら撃たれる可能性があるからだ。
変身の時少々不安だがまあしょうがない。
これでいなかったら俺ただのアホだな…。
正門は閉ざされていたので、塀をよじ登った。将来何になるのか今から心配だ。
とくに場所を指定されなかったので、しばらく女子部の敷地内をうろうろすることにする。
ここで見つかったらなんて言い訳しよう、等と考えてると。
「!」
いきなり影ができた。慌ててその場を離れて正体を確認する。
「ほう…。一人で来たか…」
やはりというか、最近襲ってくる生徒会の役員であるケンプファーだった。名前は知らん、興味もないし。
「決闘って書いてあったからな。それに女の子をこんな夜遅くに外歩かせんのも非常識だろ」なんとか変身までの時間を稼ごうと思ったが腕輪は光りさえしない。
「減らず口を…、まあいい。わたしはお前を倒す」
「変身するまで待ってくんない?」
無理だろうけど一応聞いてみる。暗くてよくわからんが顔つきから見て…。
「断る」ですよねー。
銃口を向けてきたので横に逃げる。するともう片方の手に持ってた銃で撃ってきやがった。二つあるって便利だね。
「チィ!」俺は思わず舌打ちする。涼しげな顔しやがって、今にみてろ。
離れると不利なので危険を覚悟で接近した。弾丸が肩を掠める。
「オラ!」
「!!」
足で銃を蹴っ飛ばしてやった、ざまあ。
しかしもう一丁で俺に照準をあわせてきた。ヤベえ。
「くらえ!」
「拒否する」撃たれる前に、予め持っていた硬貨を銭投げの要領で投げつける。後で回収しないと。
「くっ…!」
うまく銃を弾けた。今のうちに逃げることにする。
いくら相手も素手だといってもケンプファーだ、俺よりも力は強いだろう。
とりあえず校舎内に入る。鍵?窓ガラスって結構簡単に割れるんだぜ。
「いつになったら変身すんだよ…!」
右腕にはまっている腕輪を見ながらあてもなく走る。閉じ込められた時のことを考えて一階のみだが。
そろそろケンプファーになんないとやばい、二度も同じ手にひっかかるとは思えないからだ。まさかそこまで馬鹿じゃないだろう。
「!、チィ!」もう追い付いて来たようだ。銃声が響き、すぐ側の壁に重婚、いや銃痕ができる。結婚してどーすんだ。
「なんて考えてる暇ないか…!」
俺は廊下よりまだ障害物がある教室に逃げこんだ。こんなことなら紅音に相談だけでもしとくんだった。
「もう逃げられないぞ」
敵のケンプファーがドアから入って来た。相変わらずキッツイ目してんなぁ。なんかいいことあったの?
「あの世に送ってやる……覚悟」そう言って銃を二丁とも俺に向けた。
「まてまて、なんで殺そうとすんだよ。俺なんかしたか?」
なるべく相手を刺激しないように両手を上にあげて聞いた。まだ死にたくはない。
「…お前のせいであの人は傷ついた」
忌ま忌ましそうに俺を睨みながら理由を語りだした。
ここ最近はむしろ俺が傷ついてんだが…。
「あの人が幸せならそれでよかった…、でもお前のせいで…!」
「誰のことだよ…雫か?」可能性としては高い。同じ色だし、カリスマあるし。
「あの女は後だ、お前のせいで…楓さんは傷ついた!」
は?楓??佐倉のことか?
「お前が男の自分が好きと言ったせいで…」
相手は顔を赤くして続けた。怒りか恥ずかしさ故にかは分からんが。
「もう立ち直ってんじゃん」
「表向きはそう見えるかもしれない…、だが心にはまだ傷が残っている!だからわたしはお前を許さない!!」
アっホくさっ。俺は被害者だぞ。
「逃げるなよ…。逃げたらお前の本当の恋人を殺す」
「気になってたんだがそもそもその恋人って誰だ?」
「惚けたことを…いつも一緒にいるだろう」
いつも一緒に?はて…
「あの赤毛の女だ」
「紅音か?!ちげーよ!!」とりあえず全力で否定した。や、嫌いじゃねーんだけど。
「問題無用…」そのまま引き金に指をかけた。
なんかだんだんムカついてきたぞ、なんで逆恨みで殺されなきゃなんねーんだよ。
拳を強く握りしめると右腕の腕輪から力がわいてくる感じがしてきた。
そのまま右手を勢いよく相手の方へ突き出す。
「!!」
「な!!」
手から炎が出た。どうやら自分の意思でケンプファーに変身できたようだ。
「条件が五分になったとこで仕切り直しといこうか…」負ける気しないけど。
「くっ…!」
相手はドアから逃げようとしたがそれより早く俺の魔法が退路を絶つ。
「そんな…炎を曲げて…!」
色々応用がきくなこれ…、まさかホントに曲がると思わなかったけど。
「散々人を殺そうとしといて自分は逃げれると思ってんのか?甘いんだよ」
「貴様…!」
銃口を向けるがそれより早く俺が懐に入る、そのまま右手に炎を集中させて拳を作った。
「言っとくけど紅音は恋人じゃない…」
焦りをあらわにした顔つきを見せる。今更遅いんだよ。
「相棒だ」
俺は勢いをつけて拳を叩きこんでやった。予想外な威力に俺まで後方に吹っ飛んだけど久々にすっきりした。
「派手にやったわね」
ケンプファーになり、一対一での初勝利に浸るっているといきなり声がした。この声は…。
「身構えなくていいわよ。争う気はないから」
「雫…」
いつの間にか立っていたのは生徒会長・三郷雫だった。
「…あんたが仕組んだってことか?」
「何をかしら」惚けやがって。
「俺を女子部に入れたのも、変な噂流したのもコイツを倒すためだろ」
倒れてる敵のケンプファーを親指でさしながら言った。
「それを肯定すると問題がありそうね」
「腹割って話そうぜ。他にいねぇんだから」
俺の言葉に雫はしばらく考えたように黙った。
その間に変身できるかためそうと…してやめる。一応敵どうしなんだよなこいつとも。
「彼女…葛原は邪魔だったのよ、わたしの行動を監視して報告していたから」
「誰にだよ」
「モデレーター」
俺たちをケンプファーにしたやつか…、どんなのかは検討もつかんな。人に変身能力を与えることができるんだから普通じゃねーんだろーけど。
「私が味方を倒すわけにもいかないでしょ」
「だから俺にやらしたのか」
「本当なら美嶋さんと二人で来ると思ってたのだけれど」
まあ俺としては自力で変身できるようになったしよしとしよう。
雫はまだ倒れてる女−−−葛原だっけ?−−−を引っ張って、背負った。
「そいつどうすんだ?つーか生きてんのか?」
後先考えずに思いっきりぶっ飛ばしたけど。
「生きてるわ…。……そういえば負けたケンプファーがどうなるのか、あなたは知らなかったわね」
前もそんなこと言ってたな。どうなんだ?
「この世から消滅するのよ、綺麗にね」
「−−?!」
何だと。
勝手に選ばれた上に負けたら消えんのか?いくらなんでも無茶苦茶過ぎんだろ。
俺が驚きで口がきけなくなっていると、雫が思い出したかのように言った。
「そうそう、瀬能君。女子部の生徒証は返す必要はないわ」
「は?」
「これからも女子部にいらっしゃいね」
雫は気絶した葛原を背負ったまま去っていった。
今回の報酬は生徒証と変身、あとはマイナスにしかならない噂くらいか…。
「割に合わねぇ…」
突っ立っててもしょーがないので帰ることにした。
もちろん、投げた硬貨を拾って。
「そんなことがあったんですか…」
次の日、紅音に葛原との戦闘と雫との会話を一部始終話した。
『なぜ相談してくれなかったのか』と初めてのうちは散々責められたが、まあそれはそれで。
「ナツルさん。自分の意思で変身できるようになったんですね」
「ああ、一応」
家に帰ってから練習したからな。これで問題が二つ解決したことになる。
……他はすぐに解決できないものばかりだ。
少しブルーな気分て通学路を歩いてると。
「ナーツル!」
声と一緒に背中に衝撃がきた。水琴だろう、見えないけど。
「元気ないじゃん。どうかしたの?」
「寝不足なんだよ…、いいから降りろ」重い…ってわけでもないな、むしろ柔らかい。
「あの…水琴さん。人前でそれはちょっと…」
紅音がたしなめるように言った。
「およ、紅音ちゃん」
水琴が俺から降りて言った言葉がこれだ。今気付いたの?
「…ナツルってさ、モテるよね」
なんだ薮から棒に。
「あんたに興味あんのあたしだけだと思ってた」
「経験談か?告白までしたもんな」瞬間的に水琴の顔が真っ赤になった。おもしれー。
「ナツルさん告白されたんですか?!」紅音ちゃんが叫ぶように声を出した。心なしか顔が赤い。
「中学のころに屋上でね、その時のナツルの返事が…」
「俺どっちかっつーと巨乳派だから」
「死ね!!」
「がぼッ!!」
言った瞬間ショートのボディブロー(むしろスマッシュ)、間髪いれずに背中越しに弧をえがいてのスイング。技名ドラゴンフィシュブローが綺麗に決まった。き・木村…。
「ぐおおぉ…!」
「ふん!行こ、紅音ちゃん!」
「は…はあ……」
顔を青くした紅音を連れて水琴は女子部の校門へ歩いていった。いつの間にか学校まで来てたようだ。
そういえば『ミコトスペシャル』を食らったのが(多分)告白された時なんだよなぁ…と感慨に耽っていると。
「ナツルさん」
後ろからまた声をかけられた。佐倉だな。
「なに…」
まだ痛む腹部と頬を押さえながら振り返り聞いた。なんで俺を睨んでんだこいつ…。
「わたし、負けませんから」
「はい?」
「わたし…。必ずあの女を手にいれてみせます!」それだけ言って去っていった。
……空が…青いぜ…………。
その数分後に通り雨に降られた。
大っ嫌いだ…大ッ嫌いだ青い空なんて……!
と言うわけで原作の二巻目が終わりました。
大まかな流れは一緒ですが、結構違ってきてますね。
作者のかってな妄想はまだまだ続きます。
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