次の日学校に行くと、俺は予感が当たってしまったことを知った。
「なあなあナツル、これ読んで見ろよ」
東田が持っている選挙ポスターくらいの大きさをした紙には俺の気分をマイナスにすることが書かれていた。詳しくは省くが、女の俺があらゆる女を食いものにしてる百合少女と記事になってる。
「凄い子が復学してきたな」嬉しそうだなテメェ…。
「我が美少女研究会としてはぜひともこの女の子の写真が欲しい」
東田は他の奴(おそらくは美少女研究会のメンバーだろう)と一緒に熱くなっていた。いい加減俺の服の裾を離せ気持ちわりぃ。
「そこでナツル、お前に頼みがある」
「だが断る」
「女子部に連絡して、あの子の写真を撮ってもらうよう頼んでくれ」
「無視か」
東田のくせになまいきだ。痛めつけるか?
「何で俺なんだよ」
「お前は女子部に知り合いがいるからな、都合がいいんだ」
盗撮とかすりゃいいだろ。
「最近俺は学校側からマークされてるからな、うかつに動けない」と東田は続けた。
本当なら俺が行きたいんだが…とか言ってなぜか他の奴らも悔しがってる。馬鹿ばっかだ
というか俺も一応マークされてんだが、いいの?
「ナツルなら知り合いから貰ったと言い訳がきくからな」
こういうとこだけ頭が回りやがるコイツは…。
「もちろん報酬は考えてある」
「なんだよ」
「会長の生写真だ、どうだプレミア物だぞ」
東田が持ってる写真には、雫が写っていた。それも真っ正面からだ。
「よく撮れたな。隙なんてなさそうなのに」俺は素直に関心した。
「ああ…奇跡の一枚だ」
カッコよさげな顔つきで言ってるけど、盗撮の自慢だからなぁ…正直微妙。
「でも写真で動けるかよ、他に何かネタはねーのか」
「これだけでもかなりの物なんだがな…」
ナツルじゃしゃーないか、と東田は頭を掻きながらぼやいた。よく分かってんじゃん。
「あ〜…女子部で発砲事件があったそうだ。まあガセだろうがな」
ドキリとした。昨日のやつか?
「いつだ?」
「今朝。案外現在進行中かもな」
聞いてから俺はドアの方へと歩きだした。
「ナツル、どこ行くんだ?授業始まるぞ」
「フケる」
俺の成績が下がったら紅音になんとかしてもらおう。
これ以上東田に借りを作るのもしゃくなので、女子部には自力で行くことにした。少々強引だが時間もないしな…。
俺は、まず男子部と女子部を隔てる壁がある裏庭に来た。
次に人気のないことを確認し、
「はっ!」
忍者のように壁を駆け上がった。
そして乗り越え女子部側へ着地、いつかSASUKEに出場しようと思って練習してたんだがこんなとこで役立つとは…。
「マリポーサみてぇだな俺」
とにかく噂の真相を確かめようとしげみに隠れながら移動していた。
「ぐふっ!!」
いきなりなんか降って来た、超いてぇ。
「て・敵襲…敵襲−!」
「やかましい!」
怒れた。こっちが怒りてぇよ。
「誰かと思えばナツルかよ、邪魔すんな!」
どうやら落ちてきたのは紅音のようだ。うつぶせなので見えないけど。
「邪魔なのはテメェだ!クソ重いんだからさっさとどけ!!」
「撃ち殺すぞテメェ!!」
そこまで言い争ってパシンと葉っぱがはじけた、気がつけば女になってた。
「襲われてんのか」
「見りゃわかんだろ、学校来たらすぐだ。おかげで図書委員の当番すっぽかした。おめえは何でいんだよ」
「冷てーなおい、心配で来てやったのに。また教師の俺に対する評価が下がった」
紅音は嬉しそうに笑った。クソッ来るんじゃなかったぜ。
「そーかそーか、そんなにあたしが心配だったか。こりゃいいや」
「いいもんか、進級出来なかったらバイク盗んで走り出してやる」
行くさきはわからんが、多分光のさすほうだ。
「こうなったら相手に八つ当たりしてやる。紅音、援護しろ」
「りょーかい」頼むぜホントに。
しげみから勢いよくでるといきなり発砲、それを走ってかわす。当たるか馬鹿。
相手も姿を晒しながら撃ってきた、おやコイツ…。
「ナツル!ボケッとすんな!!」
紅音が撃ちながら激をとばす、まあそーだな。
俺は相手の弾丸を相殺するような感じで魔法を撃つ、一応自在に使えるようになった。
それを続けてると痺れを切らしたのか俺に向かって突進してきやがった。
「ぐっ!」まさか接近してくるとは思ってなかったからもろにくらった。そのまま上にマウントポジションを取られる、屈辱。
「瀬能ナツルだな」
女は銃口を俺に向け、静かに口を開いた。
「お前らと戦ってる暇はぐぅ!」
なんか喋ってる途中だったが無視。頭を銃の真横にくるように顔を突き出し、それと同時に貫手をかます。卑怯?勝ちゃいいんだよ、ようは。
「くっ…」
「くたばれ!」
怯んだ隙を見逃さず紅音が銃を撃つ。しかし相手の方が一瞬早く、そのまま走り去って行った。
「ちっ、逃げやがった」
「どっちかっつーと引いてもらったんじゃねーの」
二対一でほぼ互角だし、一対一で戦うにはまだ経験がたんねーかな。
「無様ね」
いきなり冷たい一言が浴びせられる。知らない間に雫が立っていた。今の見てたの?
「てめぇ!」
紅音が咄嗟に銃を向ける、しかし雫が無言で短剣を見せた。牽制のようだ。
「戦闘を見てたけど、まだ素人の域を出ないわね。もう少し工夫しなさい」
「ミスったのはナツルだ。あたしじゃねえ」
最後仕留め損なったじゃねーか。
「フォローするのも相方の役目じゃないかしら?」
「……ちっ」紅音は荒々しく校舎の方へ歩いていった。
あとには俺と雫が残った。ちょうどいいかな。
「瀬能君、あなたの実力はそんなものなの?」
ほっとけ、奇っ怪な武器持った奴と戦いなれてる訳ねーだろ。
「雫。あんたどーゆーつもりだ」
「何がかしら」
惚けやがって。目をつむりながら髪をかきあげんなよ、似合うだろ。
「さっきの奴の腕輪は赤、つまりあんたの味方だ」
「そうみたいね」
「…それにあいつ。生徒会の役員じゃないのか」
俺が戦闘中に気付いたのはこれだ。前に会ったことがある。
ちなみに紅音には言わない。知ったら人前でも平気でドンパチするから。
「あら、よく分かったわね。瀬能君は観察力に優れているみたい」
「茶化すなよ」少しうれしいけど。
「俺を女子部にいれたのも関係があんのか?」
「さあ」
言う気はないようだ、黙って働けってか。
しかし、雫の方が立場は上だ。逆らっても俺が不利だな。
「もうすぐ授業よ。教室に行きなさい」
「この格好でか」今は女だ、早く自分の意思で戻れるようになりたい。
「女子部のよ」
雫は一言そう言って去って行った。
今日も一日最悪です。ありがとうございました。
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