走りに走って男子部と女子部を隔てる壁がある裏庭に来てしまった。
しかし裏庭に来たとたん、腕輪が光るのをやめた。
「なんかやな予感…」雫に決闘を申し込まれた時とそっくりだ。
俺がそう呟いたとたん銃声が短く二回響いた。
「!?」慌てて弾丸がきたであろう方角を見る。木の上か。
そこには銃を二丁構えた女が立っていた、腕輪の色は…赤。つまり敵だ。
「ナツルさん!」
そこまで確認したところで声をかけられた。紅音だ。
「…………」
俺を襲った女は紅音が来てから苦虫を噛んだような顔をして去っていった。
「ナツルさん…どうかしたんですか?」紅音は驚き半分、といった顔で聞いてきた。
「いや…ちょっと襲われただけだから」
「全然ちょっとじゃないですよ!」
そうかな。
「また襲われたら厄介だな…」
今の俺は変身が不安定な状態だ、いくらなんでもケンプファーになってない時に攻撃されたらひとたまりもない。
「あの、それならあたしがずっと側にいます!」
紅音が変身した後ならともかく珍しく大声をだした。
「あたしならいざというときナツルさんを守ってあげられますし、変身が解けても大丈夫です!」
「紅音ちゃん…」
女の子に守られんのもどーかと思うが贅沢は言えんな。
「ありがとう、頼むよ」
紅音はパァァという擬音が見えるほど明るい表情になった。
その後しばらくは雑談しながら教室へと戻っていたのだが、佐倉に告白されたことを話したら紅音は沈みながら先に行ってしまった。
コントの途中だったのに、不完全燃焼だ…。
自分のクラスに帰ろうとしたら少し迷ってしまった、それだけならまだしも校舎をうろうろしてたら女子が俺の後をついてくる。ハーメルンの笛吹きか俺は。
教室についたら廊下でドア付近に張り付いていた生徒たちが一斉に道をあけた。今度はモーゼか。しかもみんな俺を見てる、こ…恐ッ。
「紅音ちゃん…どうしたのこの集団」
「…………」
こっそり紅音に聞いたが無視された、ショック。
告白されただけなのにまだ根に持ってんのか、OKした訳でもないのに。
「皆さん、瀬能さんを見に来てるんですよ」
委員長が近づいて来て説明を始めた。
女子部は娯楽が少なく、新しく入った奴が来るとしばらくはその噂で持ちきりだそうだ。
女の俺は美人なので学年関係なく生徒が集まっている、と副委員長も説明してくれた。どうでもいいが足に引っ付くのは止めろ。蹴っ飛ばすぞ。
「このままだと儲かり、いえ利益がでませんので」
会計が無表情で語る。言い直した意味あんの?
「瀬能さんは我がクラスの共有財産になりました」
「いえーい」
「どんどんぱふぱふ」
激しく殴りてぇ…、俺の周りは非常識なんばっかりだ。
「私の意思は…」
「あら、本当にハスキーボイス」そういうのいいから。
「では記念すべき第一回目の依頼です」
どうやら俺の意思は完全に無視するようだ、凄い不幸が降り注げばいいのに。
「どうも〜、新聞部で〜す」
不幸は降り注いだ。俺に。
「噂の美少女、瀬能ナツルさんにインタビューしに来ました〜」
西乃ますみ…!どんだけ俺に付きまとう気だコイツ……!
「じゃあ瀬能、行ってこい」
期待してなかったが教師にまで見捨てられた。つーか売られた。
「授業は…」
「これからゲーム買いに行くから」
一縷の望みにかけたが、無理だった。堂々と職場放棄してんじゃねぇよエセ教師が…!
俺への取材は女子新聞部部室ですることになった。
ますみは部活を二十ほど掛け持ちしてるそうだ。異常だろ流石に。
「さっきも言いましたが今日はナツルさんのことについて聞きたいと思います、題して」ますみはそこで一旦区切って無駄にタメを作った、はよ言え。
「復学生大追跡!謎のベールに包まれた私生活を暴け、です!」
タイトルからしてすでにうさん臭い、今すぐ帰りてえ…。
「さっそくですが、いつ復学したんですか?」
「今日から…かな」席を作られたのが昨日だしな…。
「え〜、じゃあこの前学校にいたのは何でですか?」
コイツボケてるくせに変なとこで鋭い…、なんとかごまかさねぇと。
「あの時は…復学する前に校舎を見ておこうと思って」
「そうなんですか」
なんとかごまかせたようだ。この調子でいけばいいが…。
「休学してたのは何でですか〜?」
何だろうね。
「……病気…?」
「なんの病気ですか?あと何で疑問形なんですか?」
いちいちうっさい奴だな…。
「発光病って言って、手首辺りがたまに光るの。病気か体質かよくわかってなくて…」よくこんな訳わからん嘘を言えるよな俺も。
「へ〜変わってるんですね」
少なくともコイツには言われたくねえ。
「じゃあ次は…、女の人に告白されたことありますか」
何で女とかピンポイントな質問すんの?
佐倉にされたから思わず言いよどんでいると、ますみはその隙を見逃さなかった。
「あ〜あるんですね、やっぱり」ハイエナかコイツは。
「誰に、どんな感じで告白されたんですか〜?」ますみはペンをマイク代わりに突き付けてきた。
「……………」
「言ってくれないと想像で書いちゃいますよ〜」
でっちあげじゃん、プライバシーってもんがあるだろ普通。
俺がまた気絶させようかと考えていたら、部屋のドアが急に開いた。
ドアを開けた人物は水琴だった、その後ろに紅音もいる。
「あなたが瀬能ナツルさんですね。あたし、近藤水琴といいます」
水琴は部屋の中を見渡し、なぜか俺をギロリと睨んだ。そしてますみの側に行き。
「ほらますみ行くよ、授業サボっちゃ駄目」
「あん、ちゃんと先生には許可取ってるよ」
「うちの担任は怒ってるの!」
水琴とますみはコントのようなやり取りをしながら帰っていった。一年の教師はまともらしい、いいな…。
「ナツルさん、大丈夫ですか?」
紅音が心配したような顔つきで聞いてきた。
「ちょっと危なかった…、何で水琴と一緒に?」
「ナツルさんが連れて行かれて…どうしようか考えながら新聞部に来てみたら、水琴さんが」
どうやら偶然らしい、助かったからいいが。
「……ますみはどんな記事を書くんだろうか…」
「さあ……」
かなり嫌な予感がする、外れてくれりゃいいけど…。
この小説は原作とは違う終わり方を希望しています(それまでもてばいいんですが…)。
どうか温かい目で見てやってください。
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