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本編
秘密の花園
「え〜今日から女子部に復学した瀬能ナツルさんだ」
雫に呼ばれた後。今学校中で話題になっている謎の美少女(女の俺)の噂を聞かされた。
内容は、存在する筈なのにどのクラスにもいないとのことだ。
そもそも女子部に在籍して無いんだから当たり前だ。
しかし我等が生徒会長様はそれをよしとせず、女子部に俺の席を作ってしまったのだ。
そして今日、復学(ということになってる)の日をむかえた。
クラスは紅音と同じ二年四組なのは偶然じゃねーだろ、絶対。
「病気で休学してたそうだから、度々学校を休むこともあるそうだ。珍しいからといって傘の先で突いたり、虫眼鏡で観察しないよーに」
なんだこのやる気の感じられない説明は。
「席は…あ〜適当でいいや」それでいいのか教職者。
クラス中の女(女子部なんだから当たり前か)に見つめられ、黙ってる訳にもいかないので俺は口を開いた。
「……よろしく、お願いします」
とりあえず標準的なあいさつをしたが、みんな黙ったままだ。何となく居心地悪い…。
「格好いい…」
なんか似たようなパターンがあったような…。
「きゃ−−−!」
ウザい…つーか、怖ッ。
思わず入ってきたドアから逃げようとしたが無理だった。だって気がついたら足を掴まれ…いや、これはもう抱き抱えに近い。
「背たかーい!胸おおきー!!」
「今付き合ってる人いますか?!」
「結婚して!」
最後の誰だ。
「じゃ、あとよろしく…」
「待って先生!行かないで!!」はっきり言ってこの勢いの中一人にされるのは恐怖だ。クソッ、さっきから足をぬこうとしてんのにビクともしねぇ。妖怪かコイツ。
紅音は人垣で立ち往生してるし、ここはこの人に何とか…
「いやあたしは今月出た新作ゲームやんなきゃ」
「教え子よりゲームが大事なの?!」星鐵(ここ)の教師ってみんなどこかおかしくない?これが普通なの?
「あんたに何か教えたっけ?」とか言って担任は去っていった。
そうなんだけど他に言いようってもんがあんだろアンタ。
「瀬能さんはどこに住んでいますか?家に何か目印になるような物はありますか?」とりあえずプライベートなことにまで突っ込んでくるこの子は『委員長』
「素敵!素敵!足もすべすべでいい匂い!!踏んで!」さっきから足に纏わり付いてるこの子は『副委員長』ホントに踏んだろかテメぇ。
「瀬能さん疲れた顔をしてますよ。このお守りを貼っておくとスッキリします。お一ついかがですか?お安くしておきますよ」初対面なのにいきなり変なの売りつけようとするこの子を『会計』とそれぞれ名付けよう。
会計さん、そのお守りって冷えピタかブテナロックじゃないのか。つかどこに貼んの?
そのほかの子はなんか印象薄いから覚えなくていいや。
だんだん収拾がつかなくなってきた。最初からか。
「っ!誰だ人の胸触ったの!!」嫌な感じでやられたぞ。
「声もハスキー!」
「すごいカッコイー!!」
火に油を注いでしまった。もうやだこのクラス…。
「はーい。みなさん、そのへんでやめましょう」
ぱんぱん、と手を叩く音とともに入口付近から声がかけられた。この声は…。
「ナツルさんは休学から復帰したばかりなんですから。無理をさせてはいけません」
教室に入って来た人物は、俺を守るように俺と女子生徒たちの間に割ってはいってきた。というか佐倉だった。
「あ…あの…」佐倉の言動に紅音が反応した。
「たしかに皆さんやり過ぎではあったかもしれません。ですが、ナツルさんと仲良くなりたいというのは本当です」
明らかにいきすぎだろ、恐怖を感じたぞ。
紅音の言葉にクラスの子たちは賛同の声をあげた。誰だ恋人以上の仲になりたいつったやつ。
「そもそも佐倉さん二組の人なのにどうして…」
「わたし、雫ちゃんにナツルさんの面倒見るように言われてるんです」
なに考えてんだあいつ?俺を女子部にいれたのも噂の火消しってだけじゃない気がするが…。
「ナツルさん行きましょう。校舎を案内します」
考え事をしていたら佐倉に手を引かれて教室から出された。後ろからブーイングが聞こえる。
とりあえずあの質問攻めから解放された、地獄に仏とはこのことだ。
その後、しばらく佐倉に手を引かれて歩いた。しかし明らかに案内してくれる雰囲気じゃない。
「あの…佐倉さん?一体どこに向かって…」
「ナツルさん」
質問しようとしたら遮られた。何なんだ。
「やっと……会えました」振り返り俺を見た佐倉は、目に涙をためて頬を赤らめていた。
「ずっと…ずっと探していたんですよ?なのにどこにもいなくて…」
わたし、とっても寂しかった…と佐倉は続けた。
余談だが女の俺を探していたのは佐倉だけじゃない。
ますみは休み時間になれば「ナツルさんどこー!」と騒いでた(男子部にまで聞こえた)し、佐倉は生徒全員に聞いて回っていると噂があった。
水琴は俺に探すのを手伝うよう言って来た。
すごい人気っぷりだ、昔じゃ考えられん。
「ナツルさん…」
「はい」
「前にわたしが言ったこと覚えてますか?」
はて?なんのことだ?
「ごめんなさい、もう一度言ってくれる?」
「わかりました…」
佐倉はなぜか決意したような顔つきになった。
なぜだろう、すごく嫌な予感がする。
「わたしと、付き合って下さい!!」顔を真っ赤にして告白した。
仏は爆弾を持っていたようだ。
つーか言ってねーだろ…、どうやら雫に連れ去られた時の記憶を自分に都合よく書き換えたようだ。めんどくせぇ…。
俺はどうしようか悩んでると、いきなり腕輪が光り始めた。
「ナツルさん!」
佐倉が返事をまちきれず叫ぶように呼びかけた。
クソッ…人の気も知らないで…。
とりあえず人気の無所をめざして走る。
「ナツルさん?!」佐倉の制止の声は無視する、こんなんばっかだ。


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