「あたしと付きあってよ」
顔を真っ赤にして、彼女は言った。
夕暮れの校舎、遠くから聞こえてくる部活に精を出す声、下校を知らせるチャイムの音、俺が中学の時に体験したことだ。そう、俺がこの後彼女に告げた答えは確か…。
「―――――――……」
そこで現在に戻された。なんか懐かしい夢だったな。
さて、朝だ今日も元気だごはんがうまい。
「もうお昼ですよ」とハラキリトラ。どうりでだるい訳だ。
とりあえず腹が減った。
「パンが食いたいな…」
よし、チャーハンにしよう。いや、昨日の夜作って残りがあるからね。食わないと。
今日も俺は朝から絶好調だった。いや昼か。
レンジで温めたチャーハンを食ってたら、突然玄関のドアを叩く音がした、チャイムが壊れてるのでしょうがないとはいえ乱暴だなぁ。
居留守を使おうかと思ったけど「早く開けなさいよ!」や「居るのはわかってんだから!」といった声が聞こえる。近所迷惑だからでた方がいいな…。
「はいはい、今出ますよ−」俺が玄関のドアを開けるとそこには信じられない人物が。
待て!次回!
「て、終わらせるな!!」
「ぐはっ!」殴られた、当然か。
「あんた全然変わってないわね…」
「どちらさんで?」
知らない奴から変わってないって言われてもなあ。
「あたしを忘れてたの?」
そうかも知れん。俺は身体能力が高い代わりに記憶力が低いからな。
「幼なじみのことぐらい覚えておきなさいよ」やれやれ、といった感じで目の前の娘は呟いた。
はて…幼なじみ……?
「俺が欲しかったのは、美人で世話好きなツンデレ幼なじみだが」
「死んでいいから」
心の底からそうですって目だった。そしてこの物言いは…
「水琴…か?」
「やっとあてた」
近藤水琴。一才年下、幼稚園からの付き合いでいわゆる幼なじみだ。
しかし昔から学者である両親と一緒に世界中を飛び回っているので、正直微妙な感じだ。
「ずいぶん久しぶりだな、いつ帰ってきたんだ?」
「昨日、…久しぶりに会う幼なじみにほかに何か言うことはないの?」
そう言われてもなあ。
「少し太ったか?」
「死んじゃえ」
外したようだ。冗談なのに。
まあ昔よりかなり美人さんにはなってるよな。言わないけど。
「ナツル。いつまでも寝ぼけてないで学校行こ」
よく見るとこいつの格好は星鐵学院の制服だ、復学したのか。でも…
「今日創立記念日で休みだぞ」じゃなきゃ流石に昼まで寝てねーよ。
「えっそうだっけ?」
長年いなかったから忘れてたか。無理もない。
「ま、いいや。あがるよ」
水琴は気にした様子もなく家の中に入った。返事聞いてからにしろよ。
水琴が家にあがってからしばらく、そろそろ土産話がウザくなってきたころ。また玄関のドアを叩く音がした。
なぜか昼飯を食ってる水琴をほっといてドアを開けた。
「どうも……」
紅音が頬を赤らめながら立っていた。なんで?
「あの…その……と・図書委員の集まりがあって…」
帰りに寄った、というところか。
紅音の手にはケーキ屋の袋らしき物があった。気を利かせなくていいのに…。
「まあ、あがってくれ」水琴がいるけど。
「あ…はい…」
俺の台詞に紅音は顔を明るくした。
リビングに通したら、調度品をいじっていた水琴が開口一番に。
「あれ、紅音ちゃんじゃん」
「…近藤さん?」
なんと、二人は知り合いらしい。それも気になるが……。
「おいなんで棚とか時計とかが不気味な感じになってんだ?」
「ちょっと淋しい気がしたから飾り付けてあげたの」
ぶち殺すぞ、なんか夜中に動き出しそうじゃねーか。
「お土産だよ。うれしいでしょ」
本気か?つーかどこに持ってたんだ?紅音が顔青くして怯えてんじゃねーか。
「今すぐ元に戻せ」
「え〜なんで〜」
本気なのかコイツ?むしろ正気か?
「なんでもだ」
その後水琴は渋々と調度品を元に戻し、紅音の持ってきたシュークリームでお茶にすることにした。
ちなみに紅音と水琴は中学からの知り合いらしい。
「ナツルは紅音ちゃんとどうして知り合いなの?」どう答えたらいいか悩む質問だな。
ケンプファーだからと言う訳にもいかないので、俺は仕方なく嘘をついた。
「図書館で本を選んでるうちに知り合ったんだ」
「ふーん、本のタイトルは?」
「『人をおちょくる二十の方法』」
聞いた瞬間二人は食っていたシュークリームを落とした。
……どうでもいいけど俺の分は無いんだな。
時は過ぎて次の日、水琴と二人で学校に行った俺は。校門で別れ、自分の教室へ向かった。
「おいナツル」
自分の席についた途端東田に声かけられた。
「水琴ちゃん、帰って来たってな」俺の首に腕をまきつけながら。
「なんで知ってんだ」
「日頃から教職員に金掴ませてるからな」
コイツみたいなのが今の世の中上手くやっていけるのかもな。でももっと他のことに使おうよその努力。
「な。こんど、水琴ちゃんの写真撮らせてくれよ」
自分が頼んでも無理だって分かってんだろうな。
「撮った写真売るのか?」
「まあな。そうだ、一年の可愛い子を隠し撮りしたヒット商品があるんだ。一枚どうだ?」
いらん。コイツはしょっちゅうこういうことをしている。写真の技術は高いんだが八割は隠し撮りだ、いつか捕まるぞ。
「やだよ。自分で勝手に商売されてるなんて知ったら怒るだろ。第一俺が言っても無駄だ」
「そこを何とか、大丈夫お前の頼みなら聞いてくれる」
「やだよ、あいつ怒ると強いんだ。もうミコトスペシャルはくらいたくない」
「なんだその必殺技っぽいの」
俺も知らん。くらったと思った瞬間、病院で寝てたからな。三日三晩生死の境をさまよったらしい、頑丈に産んでくれた両親に感謝しなさいと言っていた医師の目は笑ってなかった。
「悪いことは言わん、諦めろ」一応、警告はしておく。まだ知り合いの葬式にゃあ出たくないからな。
午前午後と授業が終わり帰る準備をしていたら。
「失礼します。瀬能ナツルさんはいますか」
とっさに窓から飛び出しそうになった。何でだろ?
「おいナツル、あの子生徒会の役員だぞ」
東田の言う通り、女子生徒は役員を示す腕章を付けていた。
「生徒会長がお呼びです。至急生徒会室までお越し下さい」なんか真面目そうな生徒だなあ。
雫からの呼びだしか、嫌な予感がする。
主要人物が大体そろってきました。そろそろまたオリジナルの話を書こうかと考えてます。
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