◇名古屋場所<11日目>
(18日・愛知県体育館)
横綱白鵬(27)=宮城野=と大関日馬富士(28)=伊勢ケ浜=がそろって11連勝。平幕の魁聖(25)=友綱=は関脇豪栄道に敗れ、1敗がいなくなった。白鵬は大関琴欧洲を一方的に寄り切り、日馬富士は大関稀勢の里との激しい一番を寄り切りで制した。琴欧洲は4敗目、稀勢の里は3敗に後退した。大関琴奨菊は小結妙義龍のつき手で9勝目を挙げた。把瑠都は大関対決で鶴竜をつり出し、勝ち越しを決めた。鶴竜は5敗目。小結豊ノ島は負け越した。全勝の白鵬と日馬富士を、2敗で琴奨菊と魁聖が追う。
特別な相手だからこそ燃える。優勝を左右する一番ということ以上に、ただ純粋に日馬富士が自らの力を最もぶつけられる相手。それが稀勢の里なのだ。
「これでもか!」とばかり繰り出した合計5発中の4発が顔面にさく裂した左張り手。負けじと稀勢の里も張り手で応戦。カッとなりやすい相手の性格を見透かしたかのように上体が浮いたところで懐に飛び込む。左下手を引くとがむしゃらに突進し、最後は自分の体を預けるように相手の右足をつかみ寄り切った。
「いい意味で緊張する一番。お互い相撲をよく分かっているから。自分の心に従って力と力で手合わせできて良かった。結果にこだわらず自分を信じていった」。日馬富士は万感の思いを込め、全勝を守った大一番を振り返った。
場所前に日馬富士は2日続けて稀勢の里の鳴戸部屋へ出稽古に出掛け、両日とも火の出るような稽古を積んだ。「だって、アイツいつも一生懸命だろ。だから稽古すると本当に力になる」。ライバルと公言することをはばからない日馬富士。もちろん稀勢の里も「本当にいい稽古ができました」と2歳上の先輩に頭を下げた。
あの壮絶な三番稽古が参考になったかと問われ「稽古と本場所は全然違う。稽古のことは考えず流れでいった。稽古場の通りに勝てるなら今ごろ横綱になってますよ」と小さく笑った。
これで破竹の11連勝。横綱白鵬と首位並走し、14連勝で2度目の優勝を射止めた昨年の名古屋場所と同じようなムードが漂ってきた。
「まだ4番ある。1年前のこと? そんなこと考える余裕ないよ」。素っ気ない日馬富士だが、名古屋連覇へ徐々にその瞬間は近づきつつある。
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