熱血!与良政談:有権者を信じる=与良正男
毎日新聞 2012年07月18日 12時15分
以前からポピュリズムという言葉は極力使わないようにしている。日本では「大衆迎合(主義)」と同じ意味で語られることが多く、その根底には「大衆とは愚かなものだ」といった考えがあるように感じるからだ。
新聞やテレビもしばしば使う「選挙目当て」という言葉はどうだろう。これもどこか「有権者はこの程度の話で喜ぶに違いない」と見下すような意識があるように私には思える。
議会制民主主義の基本は有権者による選挙だ。政治家が国民の支持や理解を得る努力をするのは当然で、「選挙目当て」自体が悪いわけではない。むしろ政治家が「選挙目当て」と思ってアピールする話が有権者の心を打たない、つまり逆に「選挙目当て」にならないことが実は問題なのだ。
結党したての「国民の生活が第一」にあまり期待が集まらない大きな理由はここにあると思う。小沢一郎代表は「反消費増税」と「脱原発」で次の衆院選は勝てると言っているそうだ。しかし、有権者はそんなに単純か。
私たちは「政権交代したら、なんぼでも財源が出てくる」と胸を張って失敗した民主党政権の姿を既に見ている。増税なしで、どうやって社会保障制度を維持していくのか、もはや具体論なしでは有権者は納得しない。「脱原発」にしても小沢氏らがこれまでどれだけ、それに熱心だったのか。多くの人は疑問に思っているはずだ。有権者の方が、これは単なる「選挙目当て」だと見なしているといっていい。