一体改革:野党「公共事業」巡り攻勢 参院本格論戦へ
一体改革関連法案の参院審議の焦点と野田首相の最近の発言
消費増税を柱とする税と社会保障の一体改革関連8法案は18日、参院特別委員会で実質審議が始まる。法案は民主、自民、公明3党が修正合意しており衆院を8割近い賛成で通過したが、参院審議は野田佳彦首相にとって気の抜けない対応が求められる。民主党は参院で少数与党のうえ、法案の衆院採決をきっかけに分裂。共産、社民、みんなの党などは増税分を公共事業に回すのではないかと攻勢を強めているためだ。
「消費税を防災に名を借りた大型公共事業に重点配分する。庶民増税を打ち出の小づちにした、新たな無駄づかい宣言だ」
共産党の市田忠義書記局長は13日の参院本会議で、消費増税法案が新たなバラマキの財源になると真っ向から批判した。
市田氏がやり玉に挙げたのは3党合意で法案に盛り込んだ付則18条2項。この条項は「事前防災や減災などに資する分野に資金を重点的に配分する」とあるためだ。
首相は「引き上げ分は全額社会保障財源化し、公共事業を含めた他の目的に使用されない」と答えたが、苦しいのは、参院で民主党が少数与党であるため、公共事業の必要性を唱える自民党や公明党に一定の配慮をにじませざるを得ない点だ。
実際、首相は自民、公明両党議員の質問を受けると、防災関連の公共事業には理解を示してきた。背景にあるのは、自民党が先月、国会に提出した、民間も含め10年間で約200兆円の事業費投入を想定した「国土強靱(きょうじん)化基本法案」。公明党も10年間で100兆円を投じる「防災・減災ニューディール推進基本法案」をまとめている。公明党が強く唱える軽減税率の導入も論点になる見通しだ。
衆院解散の時期をめぐる3党間の駆け引きも焦点だ。首相は「一体改革などを含め、やるべきことをやり抜いた時」と早期解散を否定。3党合意は、最低保障年金創設などマニフェストの主要政策の撤回には当たらないとも繰り返す。先週からは、赤字国債を発行するための特例公債法案の早期成立のみならず、共通番号制度法案や衆院の「1票の格差」解消、デフレ脱却などやるべき課題を次々と挙げ始めている。
自民、公明両党は消費増税法案成立までは政府・与党に協力し、9月8日までの今国会会期末までに解散に追い込むのが基本戦略。しかし、一連の首相発言に自民党内から反発が強まっている。石原伸晃幹事長は13日、記者団に「うそつきだ。首相がこのような態度を続けるなら決別することもある」と批判した。解散をめぐる思惑が食い違うなかでまとめた3党合意のほころびを、首相がどう取り繕うか、難しいかじ取りが迫られそうだ。【坂口裕彦】