外国人登録に代わる新たな在留管理制度が始まった。
正規の滞在者だけを住民登録する。在留期間を過ぎても滞在するケースを減らすのが狙いだ。必要性は分かるにせよ、不法滞在であるために最低限の行政支援も受けられないようでは別の問題を生む。人道的な見地から適切に運用するよう求める。
新制度の下、正規の滞在者は日本人と同じように住民基本台帳に登録される。市町村が交付していた外国人登録証明書に代わり、国が在留カードを交付する。
新制度では、在留期間の上限が3年から5年に延びる。1年以内の再入国は許可が要らない。外国人からは利便性の向上を歓迎する声も聞かれる。
一方で、幾つかの不安を残してのスタートだ。移行に備え、市町村が外国人のいる世帯に「仮住民票」を送ったものの、宛先不明で届かない例が長野県内を含め、相次いだ。制度の変更がきちんと伝わっていない可能性がある。
外国人の転居情報は、市町村と専用回線で結ばれる入国管理局が一元管理する。転居を90日以内に届けなかった場合など在留資格を取り消せる。周知の徹底が欠かせない。国には過度に厳しくならないよう弾力的な運用も求める。
より深刻なのは、不法滞在者の問題だ。従来は外国人登録ができた。証明書が交付され、予防接種や就学の案内などが市町村から送られた。証明書は就労などの際の身分証として使われてもきた。
新制度では、こうした支援や情報提供の枠外に置かれる。仕事や住居を探すのも難しい。家庭などの事情でやむなく不法滞在になる場合もある。そうした人たちが医療、教育といった行政の支援を受けられないのは好ましくない。
政府は、公立小中学校入学などの行政サービスについて、これまで通り不法滞在者も対象とする方針を示している。とはいえ、実際には受けられない心配が残る。
不法滞在者は、強制送還などを恐れて窓口を訪れない可能性がある。また、市民団体が1〜3月に行った調査では、住民登録がなければサービスを提供できないと答えた自治体もあった。
政府は市町村に方針を周知するとともに、外国人にも情報を伝えていく必要がある。
併せて在留資格の在り方も見直したい。不法滞在であっても、それぞれの事情に沿った対応が求められる。日本で長く暮らし、生活基盤を築いている場合は在留を認めるといった柔軟さが欲しい。