大津市で昨年10月、同級生からいじめを受けていた市立中学2年の男子生徒=当時(13)=が自殺した問題が、国民的な注目を集めている。亡くなった男子生徒のご冥福をお祈りするとともに、ご両親には心からお悔やみを申し上げたい。
連日の報道を見ていて、自殺の練習をさせるなど、過酷ないじめの実態に驚くばかりだ。先週、滋賀県警が捜査に着手したが、学校や教育委員会が適切な対応を取らず、隠蔽するような姿勢を見せていた以上、当然のことであり、「遅すぎた」ともいえそうだ。
安倍政権時代、重要課題として教育再生に取り組んでいたころ、やはり、いじめを苦にした子供たちの自殺が相次ぎ、社会問題化した。
ただちに、教育再生会議として、「いじめは反社会的な行為として絶対許されない」「いじめを見て見ぬふりをする者も加害者」「放置・助長した教員も懲戒処分の対象とする」いった、緊急アピールを発表した。
いじめの実態を把握するため、全国規模の調査も指示した。ところが、信じがたいことに、北海道では、北教組(北海道教職員組合)が「いじめによる自殺はない」といい、調査を拒否してきた。いじめを苦にした遺書を残して自殺した生徒がいたにも関わらずに、である。子供の命より、自分たちの保身を優先する姿勢に愕然とした。
教育界の構造的問題も指摘されている。
学校を所管するのは教育委員会であり、高い見地、広い視野から教育行政をコントロールする仕組みだが、常勤は委員長だけで、他の委員は非常勤となっている。結果、教育長をトップとする事務局が教育委員会を仕切ることになる。事務局は、現場の学校の出向者が大半で、「現場をかばう傾向が強い」(教育関係者)という。
安倍政権では、約60年ぶりに教育基本法を改正し、教育の目標には「豊かな情操と道徳心を培う」と記した。道徳教育として、いじめがいかに卑劣な行為か、学校や家庭で教えていくように議論していた。その後の政権交代もあり、道徳教育は徹底されていない。
子供同士のいさかいはなくならないだろう。それは人間の属性によるものだからだ。ただ、陰湿で、度を超えて繰り返されるいじめは許してはならない。子供が自ら命を絶つような悲劇は繰り返してはならない。この現状を何とか打ち破らなければならない。
時に、いじめを続けていた生徒や、放置・助長した教員に対して、厳正な処分が必要ではないか。(自民党衆院議員)