相場英雄の時事日想:「美人記者」急増の危うさ……“体当たり”取材の功罪 (2/2)
使い捨てされるリスク
美人記者の“体当たり”の実状を探るべく、筆者は旧知の某大企業広報担当者に尋ねた。すると、驚愕(きょうがく)すべき話がゴロゴロ出てきた。この大企業も役員、あるいはトップが美人記者の体当たりの取材攻勢に遭い、「トップと役員がペラペラと機密情報をしゃべり、みすみすスクープを許してしまった」との経緯があったそうだ。
この広報マンには申し訳ないが、筆者の独自ルートで体当たり取材された役員、そしてトップに接触した。双方ともに真っ赤な顔で否定された。だが、本業のネタを否定する際とは明らかに様子が違った。記者としての感覚で言えば、「クロ」であり、筆者が週刊誌の記者であれば躊躇(ちゅうちょ)なく書く。
筆者は現役の記者時代、キャップからこう言われた。「法を犯すことさえしなければ、何をやっても良い」――。このキャップの教えを最近の体当たり組に当てはめてみると、倫理観を除外すれば問題はない。だが、先の項目で触れたナンバーワンのホステス、ホストたちの言葉を思い出してほしい。「『枕』のレッテルを張られたが最後、水商売を続ける限り汚名が付いてまわる」。水商売の部分を報道業界に置き換えれば、自ずと筆者が言いたいことが分かってくるはずだ。
すなわち、ホステスやホストの世界と同様、報道業界も噂話があっという間に駆け巡る世界なのだ。現場を離れて2年以上も経過する筆者にさえ、こんな事態がバレてしまうのだから。
筆者は、特定の個人を糾弾するつもりは毛頭ない。仕入れたネタを写真誌や週刊誌に持ち込む気持ちもさらさらない。だが、本稿を書いている間も、“体当たり”が信条の記者たちが、政府要人や大企業幹部の周辺に張り付いている様子がニュースに映り、新聞の写真に載っている。筆者は複雑な気持ちを抱くと同時に、彼女たちに取材手法を変えるべきだと助言したい。
容姿優先で取材現場に出された美人記者諸君。くれぐれも不名誉なレッテルを張られないよう心して仕事に臨むべし。ネタを引けなくなった記者に会社は極めて冷淡だ。
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