相場英雄の時事日想:「美人記者」急増の危うさ……“体当たり”取材の功罪 (1/2)
最近、政治家を取り囲む記者たちの中に、“美人記者”が増えているのをご存じだろうか? 「記者として優秀で、たまたま美人」であれば問題はないのだが、もし「美人が条件で記者になった」のであれば問題だ。今回の時事日想は、“美人記者”が増えている背景などに迫った。
相場英雄(あいば・ひでお)氏のプロフィール
1967年新潟県生まれ。1989年時事通信社入社、経済速報メディアの編集に携わったあと、1995年から日銀金融記者クラブで外為、金利、デリバティブ問題などを担当。その後兜記者クラブで外資系金融機関、株式市況を担当。2005年、『デフォルト(債務不履行)』(角川文庫)で第2回ダイヤモンド経済小説大賞を受賞、作家デビュー。2006年末に同社退社、執筆活動に。著書に『株価操縦』(ダイヤモンド社)、『ファンクション7』(講談社)、『偽装通貨』(東京書籍)、『みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎 奥会津三泣き 因習の殺意』(小学館文庫)、『みちのく麺食い記者・宮沢賢一郎 佐渡・酒田殺人航路』(双葉社)、漫画原作『フラグマン』(小学館ビッグコミックオリジナル増刊)連載中。
最近、政・財・官の要人を取り囲む大手メディア記者たちの間に、ある異変が起きているのをご存じだろうか。筆者が現役記者だったころと比べ、格段に“美人記者”が増えているのだ。政治家や企業トップに密着し、マイクやICレコーダーを突き出す記者団の中に、少なからず美人がいることを読者も目にしているはずだ。
古巣や同業他社の記者仲間に尋ねると、皆同じような感想を抱いていた。結論から言うと、最近の美人記者急増に筆者は強い懸念を抱いている。「記者として優秀だが、たまたま美人」であればなにも問題はないのだが、「美人が条件で記者になった」といった人種が増えていると感じるからだ。お叱りを覚悟の上で今回は最近の現象を分析する。
悪名はついて回る
数年前のこと。漫画界の大ベテラン・X氏と長期間一緒に仕事をさせていただいた。同氏の代表作の多くは、ネオン街で逞(たくま)しく生き抜くホステス、あるいはホストを描いたもの。お手伝いする間、何度か酒席をご一緒させていただき、取材対象であるホステス、ホストの実態をつぶさに観察する機会を得た。同氏のネタ元であるホステス、ホストたちの大半はナンバーワンと呼ばれる売れっ子ばかり。だが不思議なことに、絶世の美女・美男にお目にかかる機会は少なかった。
X氏によれば、彼らに共通するのは、徹底した顧客への気配りだとか。確かに、サービスのプロとしてのプライドで、客を気持ちよく酔わせる手法は圧巻だった。逆に言えば、美女・美男でないからこそ、懸命に努力してナンバーワンを勝ち取った強者ばかりだった。
酔いにまかせ、筆者は数人の売れっ子にいじわるな質問を投げかけた。多額のカネを盾に、業務外の仕事、すなわち体の関係を強要するお客がどの程度いるのか、という内容だ。だが、返ってきた答えは、すべてノーだった。「体当たりすれば一時的に売り上げは急増するが、バレたら最後、水商売を続ける限り『枕ホステス(ホスト)』の汚名が付いてまわる」からだという。
閑話休題。
ここからは、本題の美人記者である。筆者が現役のころも美人記者はたくさん存在した。ただ、彼女らは記者としての能力が格段に高く、たまたま容姿が美しかっただけ。同じテーマを追いかけ、彼女たちに出し抜かれた回数は数え切れない。だが、今回俎上(そじょう)にのせる美人記者は、「容姿で採用したのか? と思いたくなるほど、キレイな面々が増えている」(大手紙記者)。あるテレビ局関係者によれば、「(美人記者は)政治家や企業経営者のウケが良く、ネタを引いてくる確率が高まっているから」という側面もあるそうだ。
筆者は耳を疑った。美人を餌(えさ)に、スクープを取るというのである。もちろん、最近の美人連の中にも優秀な記者はたくさんいる。しかし中には、“枕”を武器にしている輩も確実に存在するのだ。
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