相場英雄の時事日想:どうした自動車ジャーナリスト! 事実を語らない裏事情 (2/2)
御用ライターがクルマ離れの遠因?
日本の自動車会社の多くが新聞やテレビ、あるいはインターネットに大量の広告を出稿しているのは周知の事実だ。先に触れたリーマンショック以降、広告の出稿量が激減したため、「スポンサーの意向に沿わない内容を報じるのは相当な勇気が必要」(某民放局プロデューサー)という状況が顕在化している。これが自動車専門紙誌、あるいは専門サイトであれば尚更なのだ。
「意に沿わない原稿を出せば、試乗会やイベントに参加できなくなり、即座に廃業のリスクが高まる」(ベテランのライター)ほか、「Webサイトの主要な収入である広告がゼロになってしまう」(編集担当者)ためだ。
実際、メーカー関係者からは「手厳しいことを書かれぬよう、ベテランを中心に定期的に接待を繰り返している」(某大手広報幹部)との声が漏れてくる。
主要紙やテレビでは、新車や注目モデルの詳報を得ることは難しい。よって、筆者のようなクルマ好きは自動車専門誌を購入し、あるいは専門Webサイトで情報を得ている。自動車は数万点にも上るパーツの集合体であり、定期的に人事異動を繰り返す大手紙やテレビの記者がフォローできない専門情報が多いため、自動車評論家、あるいはジャーナリストの分析・解説記事が、クルマ好きには必要不可欠なのだ。
「メーカーと専門記者が絶対に接待の場で会ってはならない」などと青臭いことを主張するつもりは一切ない。ただ、広告確保やつなぎ止めのため、メディア側が過剰な配慮をしたり、果ては安全性に関わるような問題までメーカーの説明をうのみにしてしまうのでは、専門記者の存在意義などなくなってしまう。
実際、今年に入ってから自動車専門誌の休刊が相次いでいるのは、多くの読者がこうしたメディア側の「腰砕け」傾向を敏感に感じとってしまったからではないのだろうか。
先のアウトバーンの事例だけでなく、エコカー減税をめぐる不透明な車重区分の存在、実燃費とメーカー公表燃費の大きな差など、日本の自動車業界全体をめぐる諸問題はほとんど報じられていない。
現状、こうしたネタを制約なく書いている人は、日本に数人しかいない。自動車専門ジャーナリストの奮起を期待したい。
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