コラム

窪田順生の時事日想:NHKが、火災ホテルを「ラブホテル」と報じない理由 (2/3)

[窪田順生,Business Media 誠]

「ラブホはNG」という「報道の作法」

 この火災の少し前、茨城県土浦市で、ラブホテルの受付女性が強盗に刺された時もNHKは頑なに「ホテル」と報じている。ここまで徹底して「ラブホテル」という言葉を毛嫌いする背景には、放送コードもあるが「プライバシー」によるところが大きい。

 というのも、ラブホテルで亡くなったということをニュースで全国に報じて、もし遺族からクレームが入った場合、テレビ局はただ平謝りをするしかないからだ。

 世間体もあるんだから勘弁してよ、という当然の遺族感情もある。もし仮に不倫カップルなどの場合、死者にムチ打つような事態を招く恐れもある。そういうリスクを総合的に考えると、「ラブホはNG」という判断をするテレビ局もある。

 もちろん、これぞ正義だという自負もある。みなさんからすると好き勝手なことを書き飛ばしているイメージがあるだろうが、なにせ「報道」と呼ぶぐらいなので、「華道」や「茶道」と同じく高い美意識をもち、厳密なルールもある。

 早い話が、「ラブホはホテル」というのが「NHK流報道」の作法というわけだ。

yd_kubota2.jpg NHKでは「ラブホはNG」(写真は東京都渋谷区にあるNHK)

カメラマンが見せてくれた「お蔵入り映像」

 個人的には報道の権利よりも優先すべきものがあると思っているので、「ラブホをホテル」はしょうがないなあと思うが、「報道の作法」を気にするあまり、本質的なことを報じられなくなるという問題もある。

 東日本大震災の発生から1週間後。親しい某ニュース番組のテレビカメラマンから「お蔵入り映像」を見せてもらった。

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