窪田順生の時事日想:生活保護の不正受給は簡単? マスコミにダマされてはいけない (2/3)
例えばA氏の仲間である男性は、年老いた親が寝たきりで24時間介護のために働くことができないということで、医療費も合わせて20万円近くの受給額を不正にもらっている。といっても、親が寝たきりで介護が必要というのは本当だ。が、実際の介護はすべて妹にやらせて、金だけはすべて自分が懐に入れている。これを「不正受給」ととるか、兄妹間の搾取ととるかはかなりビミョーだ。
「ヤクザをやっていたけど、食えなくなったので生活保護をもらってる連中は多い。けど、それは不正受給じゃなくて本当に厳しいの。まあ、もらったカネでパチンコやったり、シャブ食ったりしているわけだけど、こういうヤクザだって受給資格をちゃんと満たしている」
貧しいヤクザ。収入ができても「もらえるモノはもらっておこう」と受給を継続する不届きなカタギ。これらがごった煮のように混在しているため、「不正受給者」というイメージが、なかなか定まらない。
このような状況で、もっとも苦しんでいるのが「一般受給者」だ。先日取材をしたBさんもそのひとりである。
きっちり分けて考えることがキモ
「なんだか生活保護をもらっているというだけで周囲から白い目で見られる。肩身が狭いよ」
建築作業員のBさん(47)は事故で、首の骨に重い障害が残り働けないので、生活保護をもらって生活をしている。6月の受給額は、生活扶助8万1610円、住宅扶助4万8000円、計12万9610円。治療費を含めて医療関係の費用はすべてタダだが、生活は決してラクではないという。
「不正受給が注目されてから、テレビや週刊誌で毎月18万円もらって遊んで暮らしているみたいな話ばかりがでている。役所で聞いたら、『寝たきりか、重い障害がなければ18万円は支給できない』と資料を出して説明してくれた。担当者も『どうしてこんな話がでてくるのか……』と首を傾げていた」(Bさん)
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