コラム

窪田順生の時事日想:生活保護の不正受給は簡単? マスコミにダマされてはいけない (1/3)

お笑いコンビ・次長課長の河本準一の母親が受給していたことで、生活保護が注目されている。廃止や制度改革も訴えられているが、増加する不正受給の「裏」では何が起こっているのか。かつて不正受給をシノギにしていた暴力団関係者が語った。

[窪田順生,Business Media 誠]

窪田順生氏のプロフィール:

1974年生まれ、学習院大学文学部卒業。在学中から、テレビ情報番組の制作に携わり、『フライデー』の取材記者として3年間活動。その後、朝日新聞、漫画誌編集長、実話紙編集長などを経て、現在はノンフィクションライターとして週刊誌や月刊誌でルポを発表するかたわらで、報道対策アドバイザーとしても活動している。『14階段――検証 新潟少女9年2カ月監禁事件』(小学館)で第12回小学館ノンフィクション大賞優秀賞を受賞。近著に『死体の経済学』(小学館101新書)、『スピンドクター “モミ消しのプロ”が駆使する「情報操作」の技術』(講談社α文庫)がある。


 今から10年ぐらい前、サブカル雑誌の編集をしていたことがある。

 かなりダイナミックな編集方針の雑誌で、犯罪の体験談を掲載していたため、警視庁から、「現在、取調中の被疑者がこちらに情報提供したと言ってるんですけど……」と連絡があって、捜査員が証拠としてバックナンバーを取り寄せに来るなんてこともちょいちょいあった。

 そんなアブない「投稿者」たちの中で、最も多かったのが不正受給。なかでもダントツは生活保護だった。

 偽装離婚をする、ホームレスを装う、個人経営のクリニックに「うつ」だと診断させる……。投稿者たちは“あの手この手で役所をダマした”と自慢気に語ってくれた。その中のひとりで、指定暴力団関係者のA氏と数年ぶりに会った。まだ相変わらず不正受給をしているのか? と尋ねたら、意外にもこんな答えが返ってきた。

 「もう無理でしょ。仲間も何人か断られたけど、昔みたいに最初からパクろうと思って申請しても100%見破られる。よくネットでは“うつ”のふりをして診断書を書いてもらうなんていまだに言っているけど、あんなのは10年前の手口。役所だってバカじゃない。必要書類も多いし、家なんかも厳しくチェックされる。今、不正受給をするんならとっかかりは“本物”じゃないとダメだろう」

もっとも苦しんでいるのは「一般受給者」

 本物というのは、詐病などではなく本当の病気やケガで働けなかったり、あるいは偽装離婚ではなく本物の母子家庭だったりという人々だ。つまり、最初は正真正銘の生活保護受給者だったのが、経済状況が改善しても、「もらえるモノはもらっておこう」と継続して不正受給者に変わるというわけだ。

 「(次長課長の)河本なんかもそうだろ。最初は本人も食えなかったわけだし、親も大変だった。それを売れてからももらい続けちゃったわけだ。このようなスキームを計画的にやったら不正受給になる」

       1|2|3 次のページへ

Copyright© 2012 ITmedia, Inc. All Rights Reserved.



Special

バックナンバー

誠Focus