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本編
佐倉とデートに行くことになった。
これだけならただの自慢話だ。クラス,いや学校の男子一人にでも知られたら、俺はその日が命日になるだろう。しかし誘われたのは女の俺だ、初デートが女同士とは思わなかった。現実は非情である。
「あたし…男の人の部屋に入るのはじめてです……」
次の日曜日にデートすることになったのだが、どうしたらいいか分からないので、紅音に相談のため家に来てもらった。
「……俺も母親と幼馴染以外を部屋に入れたのは初めてだよ」なんとなしにそう言った。
正確には両方勝手に入って来るんだけどね。
「ナツルさんナツルさん、わたし、女の子ですよ?」
「たしかライターがこの辺にあったな…」
俺は迷わず机の引出しを開けた。よかったちゃんとあった。
「冗談ですよ、冗談。だから火はよしましょう。ビニール燃やしたような匂いがします」
「次はねえぞ」とりあえず科学繊維の焼ける匂いを嗅ぐのは嫌だからな。
俺はジッポーライターのフタを開けたり閉めたりと指遊びをした。親父がお土産にくれた物だ。
「ナツルさん…ご両親は……?」
「熊本に転勤。母親も一緒に行ったから一人暮らしだ」
自由なのはいいけど食事とか面倒なんだよなぁ…。
「そ…そうなんですか……」
紅音は顔を赤らめてうつむいた。なんか変な想像してないか。
「それで、当日は紅音ちゃんについて来てほしいんだけど……」
「またですか……」
仕方ないジャン。自力じゃ変身できないし、心細いし。
「デート、しなければいいんじゃないですか……」
そうなんだけど、簡単に約束破るのはなぁ……。筋が通らないだろ。
「まあ、これっきりにするつもりだから」
「いっそ付き合っちゃたらどうです?全校生徒あこがれのアイドルなんでしょ」とハラキリトラ。
「そりゃいい、ケンプファーが女と付き合ったら調停者(モデレーター)もビックリするだろうぜ」
うひゃひゃひゃひゃひゃひゃ、ととても不愉快な笑い声で言ったのは紅音が持ってきた臓物アニマル,セップククロウサギだ。血走った目がとても精神を不安定にさせる。
なんでも、一人じゃ心細いからボディガード代わりにつれて来たらしい。殉職させたろか。
「たしかに佐倉はいい女だが、俺は女じゃねえよ」
「とっちまえよ」
「介錯してやるからおとなしく死んでろ」小物入れから取り出したカッターをちらつかして言った。
おもしれえやってみろ。とセップククロウサギが言うので実行するために椅子から立ち上がった。
「まってください。佐倉さんはどうするんですか」
紅音が慌てたように言った。そうだった、つい話が脱線しちまった。
「一回だけデートしてあきらめてもらうよ」
「結局デートはするんですね………」
ガックリという感じで紅音は肩をおとした。仕方ないじゃん約束しちゃったんだもん。


約束した日曜日。天気は晴れ。雨降って雨天中止とかにならねえかな。
紅音は俺が女になるために変身してもらったがすぐに元に戻ってしまった。その後もいくら言っても変身したくないとダダ(?)をこねられた。
不安だが少し離れた所からついて来てもらうことにした。
だって泣くんだもん…強く言えるわけないじゃん……。
「ごめんなさい……」しょんぼりといった感じで落ち込んで言う紅音。
「いいよもう…、でも危なくなったらよろしく」
「はい……」
「そんときゃばらしゃいいんだよ」「お気をつけて、先立つ不幸を祈っています」
腹裂きコンビが、あとで見とけよ。



駅で待ち合わせをしていたのでとりあえずボーっと立っていた。
……この人込みの中に敵のケンプファーがいるかもしれねぇんだよな…。いたとしても今回は静かにさせてほしい。初デートだからだ。
「お待たせしました」
気がつくと佐倉が目の前にいた。
「ごめんなさい。退屈してました?」
「あ…いえ、こちらこそごめんなさい。少しボーっとしていて」
とりあえず始めと同じように猫をかぶることにした。
視界の隅で口をおさえて振るえ臓物アニマルが見えた。どないしてくれよう……。
「あの…、どうかなさいましたか…?」
「いえ…、佐倉さん素敵な格好ですね」
話題をそらすためにも、とりあえず服装を褒めることにした。
「ほんとですか?よかった…、実はどんな服を着て行こうか悩んじゃって遅れそうになっちゃたんですよ」彼女の服装は若干短めのスカートと半袖。
「佐倉さんなら何を着ても似合いますよ」
俺はこんなキザな台詞をサラっと言える男だっただろうか……?紅音みたいに性格変わってきたのかな…。
「そんな…、ナツルさんの方こそ素敵な格好ですっ」顔をほんのりと赤らめている。本心なのだろう。
「私はファッションには無頓着だから…、でもそう言われるととても嬉しい」はにかみながら口元に指を曲げてそえる。佐倉が一層顔を赤らめ下を向いた。
何となくやってみたが効果はあったようだ。
「ところでどこへ行くの?」
「あっ…はい、えっと〜…」
多少右往左往していたがやがて。
「映画館です。楽しみにしていたのが、ちょうど上映中で…よければナツルさんと一緒に行きたいなって」
「私でよければ喜んで」
というわけで映画館に行くことになった。映画なんていつ以来だろうか。
「どんな映画を見るの?」
佐倉がとても楽しげな雰囲気を出していたので歩きながら聞いてみた。
「あっはい。とても面白い映画ですよ」
面白い…?今日初めて見るんじゃ…。
「あ、見えて来ました」
何となく嫌な予感がした。
佐倉が指さすもののタイトルは…
「臓物アニマルですっ」
『進め臓物アニマル 血まみれ獄門丸かじり』
久々に見るもんにしては少々ヘビィすぎんだろ……。


「面白かったですねっ」
「独創的ではあった……」
悪夢のような二時間だった。いや同時上映だった『臓物たちの夜』とか訳わからんミステリーだかホラーだかを見せられたから三時間半だ。
九時頃から見ていて、今は一時ぐらい。昼飯時だ。
近くのパスタがうまいイタリアンな店に来たんだが…正直、パスタが腸に見える。こりゃ当分肉料理は食えねぇな。
仕方なくスープを飲んでると大変なことにきずいた、腕輪が光っている。
「ちょっとトイレ」佐倉に返事を待たずに席を立った。
マズイ……!紅音は『進め臓物アニマル』の時はスクリーンを食いつくように見ていたが、その後の作品の時はいなくてはぐれてしまったのだ。
腕輪の点滅が早くなった。もうダメだ……。
そう思ったが急に普通の状態に戻った。なんで?
よくわからんが悪戯に時間をつぶす訳にもいかないので、佐倉の待つテーブルに戻った。
「ごめんなさい、急に席を立って」
「いいえ、気にしてないわ」
……!この声は!
「楓には席を外してもらったわ…あなたと話しをするために」
「生徒会長…!」
俺は咄嗟に三郷を見たまま出口に走ろうとした。何となくそうした方がいい気がしたからだ。
「焦らないで、瀬能さん…と言った方がいいかしら?」
「…なんのことです?」
「惚けなくていいわ、私もあなたと同じ。ケンプファーだから」
三郷は右腕の袖を捲った。腕輪の色は…赤だった。
「あなたの敵よ」
俺の勘はよく当たるようだ。嫌なことだけ。


とりあえずここで騒いでも不利なだけなので、三郷と向かい合わせになるように座った。
俺コイツ苦手なんだよな…。いろんな意味で。
「そう警戒しなくても大丈夫よ、ここで戦う気はないから」
「はい、そうですかで安心できるほど御人好しじゃないんでね」
それに俺は自分の武器をまだ知らない。どうやって出すの?
「楓の時と放し方がずいぶん違うのね」おめえ相手に猫かぶってられるか。
「図書館で襲ってきたのはあんたか?」
「ええ、そうよ」何気にしに言いやがった。いっそ清清しい。
「……会長」
「雫でいいわ」
「雫。あんた何が目的なんだ?ただ敵を倒すってだけじゃないだろう」
もしそうならこうやって話す必要はないはずだ。
「知ってると思うけど、ケンプファーは戦うための存在。お互い敵と味方に別れてね、でもなんで戦うか知ってる?」
「知らん」つーかこの前なったばかりだ。分かるはずがない。
「私も知らないわ…。カンデンヤマネコが言うにはケンプファーになって戦うと莫大な権力が与えられるそうだけど、鵜呑みにするほど馬鹿じゃないわ」
こいつの臓物アニマルはカンデンヤマネコのようだ。にしても…
「戦う理由を知りたいから戦ってるのか。本末転倒って気がするけどな」
少々小馬鹿にするような口調だが雫は気にした様子もなく。
「そうでもないわ。戦い続ければなにか理由が見えてくるかもしれないし、モデレーターの目にも止まるかもしれないでしょ。その時に全てを理解できるでしょうね」
そう言って髪をかきあげた。今きずいたが髪の内側が銀色になっている。ケンプファーに変身してる証なのだろう。
「だからあなたたちとも決着がつくまで戦うわ」
あなたたち(・・)かよ、まあ図書館で襲ってんだから紅音の存在はばれてるだろうが。
「なんで俺が他人(ひと)の出世の道具にされなきゃなんねーんだよ」
「あら、嫌?」
「たりめーだ」倒されて喜ぶってどんなマゾだよ。ビギナーがプロに勝てるか。
「楓は私が預かってるわ」なんだと?
「……生徒会長が生徒に手だしていいのか?」
「心苦しくはあるわね」
「俺が乗るとでも?」
「違うの?」
「……………」
「あなたは知り合いを見捨てる人では無いわ」
雫は伝票を持って席を立った。代わりに支払ってくれるようだ。
「日時と場所はあなたたちで決めて。……一週間以内で」
また会いましょう、と言って去っていった。
…………正直勝てる気がしねえ……。



その後はぐれていた紅音と再会をはたした俺は、雫のことで話し合うために自宅へ戻った。
「あたしがいないところでそんなこと話してたのか」
変身した紅音は、雫が図書館で襲った犯人だと知ると怒りだした。
「そんなことは戦う時にぶつけりゃいい。問題は他にもある」佐倉のこととか。
はっきり言って雫は強い。勝てるイメージがわいてこない。
「なあ紅音会長の武器、なんか弱点とかないか?」
「ないんじゃねの?」
そんなあっさり…。
「ありゃあ(シュヴェアト)だな。短剣に鎖をつけて、自由自在に操ってる」
どうでもいいけどコイツは今、俺のベットの上でポッキーくわえて座りこんでる。ほんとどうでもいいけどな。
「悩んでるうちに視界の外からぶっすりきそうだ」
もともと二刀流は防御に優れているそうだから、そう簡単に懐に入り込ましてくれんだろうしな……。
「あのー、ナツルさんは楓さんが捕まっているから戦うんですよね」
とハラキリトラ。そういえばいたんだコイツ。
「まあな」
「でしたら、会長を放っておいて楓さんを助けるというのはどうでしょう」
いい案だが…。佐倉がどこにいるかわからんしなぁ。
「お前らはいいのか?ケンプファーが戦わなくて」
「おもしければよし、だ」とはセップククロウサギ。おいこら。
「いいかもな」
今までポッキーを食っていた紅音がにんまりと唇の端をつり上げて言った。
「いいこと思いついたぜ」
それはいいけど、ポッキーの食いカスをベットに落とすなよ。
番外(9話)ネタばらし
 馬鹿な…急所だぞ?
  バ○オ2。レオン、オープニングの台詞。
 火事場のクソ力
  筋肉マン。皆さんがお好きな方で。

次あたりが原作でいう一巻終了。長いか短いかは不明。


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