断言する。ここまで徹底的にアホな映画は、日本映画の歴史上そうあるもんじゃない。いやいや、単にヘタくそのノータリンなだけの「バカ映画」なら掃いて捨てるほどあるけれど、この『狂わせたいの』は、例えばジョン・ウォーターズいうところの ”趣味のいい悪趣味”なんて言葉がぴったり当てはまる、まさにアホの至高点、ウェルメイドかつ知的な映画なのである。

タイトルの出典はもちろん、山本リンダのあの名曲。他にもニッポン歌謡ポップス黄金期のめくるめくナンバー(オリジナル歌手by中村晃子、金井克子etc.)が、考えうる限りバカバカしい状況の中で歌い踊られる!

ほこら女、電車女、タクシー女・・・主人公の気弱男を甘美な女難地獄へ誘い込む、この謎の”女”たちっていったい?見終わっても解決なんて絶対しないカフカ的不条理(笑)がアナーキー。普通の神経じゃ予想不能のギャグにもコケます。

ビザール極まるセクシーダンサーは、京都が世界に誇るパフォーマンス集団「ダムタイプ」の面々。でもメイン・キャストは美術畑を中心に集められた素人ばかりとか!やっぱ映画役者ってキャラ勝負だと再認識。
京都弁(≠関西弁)の不思議なニュアンスにも注目すべし。

日本映画にいちばん不足しているのは美術センス。監督の石橋義正はパフォーマンス・アートやビデオ・インスタレーションなど現代美術のフィールドで活躍してきただけに、命を賭けて作り込んでいるのがウレシい。
凝りに凝ってこのバカバカしさは偉大だ!


石橋義正監督作品
Go!

キュピキュピ