京丹後の寺に古文書 専門家「詳しい調査を」
見つかったのは、市北部で日本海に近い常徳寺(同市丹後町)に収蔵されている「瑞巌山地蔵尊縁起(ずいがんさんじぞうそんえんぎ)」。寺から南に約4キロにあった高禅寺が1963年のサンパチ豪雪の影響で廃寺になった際に移されたという。
古文書には、高禅寺の本尊の地蔵尊の由来などが書かれており、市が市史編纂のために訳したところ、「もとは竹野神社(同市丹後町)にあったが、嘉吉年間の大津波の際に高禅寺に移された」という趣旨の文言が記されていた。
市教委によると、竹野神社は、海岸近くに現存しており、高禅寺は神社から約6キロ離れた標高約120メートルの山中にあった。市の小山元孝・市史編さん係主任は「高禅寺に伝わる伝承を江戸時代に住職が書いたとみられる」としている。
丹後半島では、東側の宮津市の標高約40メートルの真名井神社に「波せき地蔵」があり、約1300年前の大宝年間に津波が押し寄せたとの伝承がある。日本海中部地震(83年)や北海道南西沖地震(93年)でも、舞鶴市を中心に床上浸水や船の転覆などの津波被害があったとされる。
丹後半島の地震の歴史に詳しい佛教大の植村善博教授(自然地理学)は「『津波』という言葉は明治以前はあまり使われないなどの疑問が残るが、津波の原因となる海底断層が日本海にもあることがしだいに分かってきており、大津波があってもおかしくない。より詳しい調査が必要だ」と話している。
古文書は26日から京丹後市内の書店で販売される「京丹後市の伝承・方言 京丹後市史資料編」に掲載されている。問い合わせは、市教委(0772・69・0640)へ。