◇名古屋場所<10日目>
23度目の優勝がかかる横綱白鵬(27)=宮城野=と、昨年の名古屋場所以来の優勝を狙う大関日馬富士(28)=伊勢ケ浜=が、ともに10戦全勝。白鵬は大関鶴竜を内無双で退けた。鶴竜は4敗目。日馬富士は大関琴奨菊をすくい投げで破り、琴奨菊は2敗に後退した。他の大関陣は、稀勢の里が関脇栃煌山を寄り切って勝ち越しを決めた。把瑠都は琴欧洲に上手投げで敗れ、ともに7勝3敗となった。勝ちっ放しの2人に平幕の魁聖が1敗で続き、琴奨菊と稀勢の里が2敗で追う。
優勝22回の横綱であり、横綱在位30場所目。それでいながら白鵬は今も進化を続けている。左腕で鶴竜の右足を内側から払い、下手を引いた右からひねりながらの内無双。何とこれが関取昇進後初の決まり手であり、そんな新たな勲章とともに33場所連続の2桁勝利を飾ってみせた。
「あの技で決めると思わなかった。足があったんでやってみた。完璧だった」
稽古場でやったことがあったとしても、本場所でそれを見事に決めてみせる。さすがは横綱だが、内無双の名手である元大関琴光喜を参考にしたことを明かした。
「最近、フェイスブックで琴光喜関のを見たんだ。それだけじゃないけど、一番記憶に新しいのはそれかな」
きょう11日目からの終盤戦。これで横綱も完全に乗ってくるだろう。先場所は横綱ワーストの10勝止まり。「味わったことのない場所の一つだった」というほど、精神的には苦しんだ。
ただ、「そこで腐らずね。(先場所後に)モンゴルに行ったり、忘れることも早かった」と帰国が気分転換になったという。その帰国中、車で草原を走っていると「ガゼルのような鹿の群れが走っていった。その前を見たこともない大きなウサギが走っていた」。何台かある車の中で、横綱が乗っている車の前を選ぶかのようにして横切っていったという。
周囲から「縁起がいいねと言われた」。後続集団を引き離しながら走り抜けるウサギに、名古屋場所での自分を重ね合わせていたのだろう。
名古屋場所が終わってからも、帰国する予定がある。「平原で寝転んで馬乳酒飲んで、肉を食ってゆっくりする」。そのためにも、ゴールまで振り返らずに突っ走っていく。 (岸本隆)
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