nigel's bookshelves〜幌苦総合車両所・文書庫

「乗り物」好きな私の「乱雑な本棚」From KOBE。去年の台湾旅行の写真、やっと整理完了しました。

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◆Vol21:クリスト、アンブレラ・プロジェクト1991茨城

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常陸太田市・・・1991年10月



上の2枚の写真ですが・・・いったい何なんでしょう?

言うまでもなく、農村の中に立つ多数の「傘」なんですが・・・これは、1991(平成3)年10月に茨城県常陸太田市と美里村で行われた「クリスト・アンブレラ・プロジェクト」を見に行った時の写真です。

「クリスト」とは本名フリスト・ヴラディミロフ・ヤヴァシェフ、ブルガリア生まれの現代美術のアーティストで、簡単に言えば「サプライズ系の」インスタレーションを得意とする作家です。とりわけ公共建築物を「梱包」してしまって日常の世界に「非日常」を演出する一連の「作品」というか「プロジェクト」がクリスト氏の「作品」の特徴と言えるでしょう。有名なものには「梱包されたポン・ヌフ」(1985年)、「梱包されたライヒスターク」(1995年、ドイツ・ベルリン)、「ドクメンタ4のプロジェクト」(1968年、ドイツ)、「ヴァレー・カーテン」(1970-72年、アメリカ)、「ランニング・フェンス」(1973年、アメリカ)があります。

その中で「アンブレラ・プロジェクト」とは、1991年に行われた日米同時開催のイベントで、日本では茨城県北部の山間部に1340本の青い傘(アメリカ・カルフォルニア州では1760本の黄色い傘)が立てられ、約1ヶ月の会期中に50万人を動員(アメリカでは200万人)しました・・・。で、私も地元の水戸芸術館のバス・ツアーを申し込んで見に行った、というわけです。

日頃F1とか電車の記事をupしている私が「現代美術」というのは意外な感じがするかと思われるでしょうが(笑)、20代後半の頃、ちょっと現代美術にハマっていた時期がありました。私自身には「絵心」というものはありませんが、暇つぶしにたまたま立ち寄った美術館で現代美術の作品を見て、何となくですが好きになってしまいました。

必ずしもスタンダードな絵画とか彫刻というような既存の表現方法に必ずしもこだわらずに「アート」を表現する・・・というところが面白かったのか、何より作品を見ていて「何か楽しそうにやってるな」(当時流行ったフランス現代思想の言葉を借りれば「エクリチュールの快楽」とでもいうのでしょうか)と感じたところが大きかったと思います。


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クリストの「野外芸術体験」に出掛けたのは・・・確かF1日本GPのグランプリ・ウィークのとき・・・丁度1991年は日本のF1ムーブメントが頂点に達していた時期でした。「セナ」「ホンダ」「中嶋」のまさに「三種の神器」を中心に・・・「マクラーレン・ホンダ&アイルトン・セナのタイトル争い」「ティレル・ホンダの中嶋悟引退」で一色となっていたシーズンでした。競争率の高い鈴鹿のチケットなぞ取れる才覚が私にあろうはずがなく、F1に心を残しつつも水戸芸術館のバスツアーを申し込み、公式予選と前夜祭と決勝レースを録画予約して金曜夜の大垣夜行に乗り、茨城に向かいました。

JR水戸駅前で朝10時に集合、水戸芸術館でこのプロジェクトのドローイングの展示を見た後、いよいよ常陸太田市の「展示会場」に向かいました。事前に見たドローイングのイメージでは・・・もっと「所狭し」とアンブレラが並んでいる・・・というイメージでしたが、実際はいくら1300本超のブツを据え付けたといってもその範囲は半径数十kmにも及んでいただけあって、「所狭しと傘が並んでいる」イメージではなく、ちょっと「スカスカとした」感じでした。せめて写真では傘の密集感を出そうといろいろとアングルを考えてみましたが・・・。

ただ、帰りの特急「ひたち」の中でふと思ったのは、このプロジェクトに関わった人の多さでした。地元の行政機関や集落の自治会の人々、それから傘の据え付け場所を提供した農家の人々、それから警備や交通整理に当たった警察や警備会社の人々、傘据え付けの工事を担当した業者、はたまたこのイベントに反応して関連する記事を書いたり、企画展を計画した美術関係者・・・そしてものの見事に「釣られて」このイベントを見にやってきた人々・・・私なぞは神戸からのこのこ夜行列車に乗ってやって来たわけですから・・・。もちろん、据え付けられた1300本余りもの傘は、会期が終わるとこれまでのクリスト氏のプロジェクトと同様に跡形もなく撤去されてしまい、「ここであのときこんなことがあった」という記録と記憶が残るだけです・・・。

そうか、だからこそ「ここであのときこんなことがあった」という記録と記憶が「いま・ここ」のモノとして、このプロジェクトに関わった人々の中で生き続けるのか、そして私のような「釣られてやって来た」観客も含めて氏の「作品の一部」に取り込まれるのかな・・・とそのとき感じました。平たく言えば、「踊るアホウに見るアホウ、同じアホなら・・・」ということでしょうか。神戸に帰ってから、大学時代の後輩とこの時の話をしながら飲む機会がありました・・・現地には行っていない彼からこのプロジェクトの感想を聞かれたのですが、「何かクリストに”してやられた”っていう感じ。でもそれも悪くないかな」と答えたことを覚えています。

それから、ちょっとした笑い話のような本当の話なのですが・・・バスツアーの最後の方で、ガイド役の水戸芸術館の学芸員さんの話によると「今日ご参加の皆さん方は運がいい」とのこと。何故かといえば、「これまで週末は雨・風続きで、週末に傘がこのように開いたのは今日が初めて」だからだとか・・・ということは、雨が降ると傘が閉じてしまうわけですか(笑)。その話を聞いたとき、頭の中で思わず一句詠んでしまいました。

雨風に 閉じてしまった アンブレラ ・・・・お粗末(笑)。


イメージ 5

傘の裏側・・・結構かっちりと作ってあった

イメージ 6

傘の据え付け部分・・・ボルトと金具で厳重に止めてある



 
【外部リンク】
●クリスト -Wikipedia

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勉強不足なもので、初めて知りましたが、町民の結束力も並々ならぬものを感じますね。余談ですが、大垣夜行という言葉も、知らない鉄ちゃんが今やいるかもしれませんね。

2006/3/22(水) 午前 7:14 naojazeera(なおちゃじーら)

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naoさん、何かめちゃめちゃ「ディープ」なネタですね。すみません。でもこういうのは肩肘張らずに見に行ける、という点では面白かったですね。それから、確かにそうですねぇ・・・「大垣夜行」が「ムーンライトながら」のこととはもう分からない人はけっこう居られるように思いますね。でも「大垣バトル」「大垣ダッシュ」という言葉はまだまだ健在ですね(笑)。

2006/3/22(水) 午後 0:35 ナイジェル

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すごいイベントですね〜。日米同時開催というのも大掛かり!現代美術って既成概念の枠をとっぱらってからの表現が多いので、単細胞な私にとっては難解なものばかり。(^_^;) 現代美術といっていいのか判りませんが、以前神戸のフィッシュダンスを見に行って、建築士の友達にゲーリーがどうだのこうだのとウンチクを語られましたがさっぱりでした。でも面白そうというのは感じるかな。

2006/3/23(木) 午後 0:32 Fummy

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FUMMYさん、確かに「現代美術」は突き詰めていくと「コンセプト」そのものが作品、ということになってしまうので理屈っぽくなればキリがないですよね・・・。その「訳のわからなさ」自体もネタにして・・・遊ぶといい加減アタマが疲れます(笑)。そうそう、現代建築も「理屈」に行く傾向がありますねぇ・・・新京都駅を巡る「論争」も懐かしいです。

2006/3/23(木) 午後 9:11 ナイジェル

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これ行ったんですね。行きたかったけど行けませんでした。亡くなった人が出たというのにかなり落ち込みました。この人ドローイング売って制作費用作っているんですよね。包んでしまうこの感覚とってもわかるのでドローイング買ってみようかと思いましたがやっぱり高くて見るだけでした。現代美術って一度見た時の印象を味わうだけで終わってしまわずにその作家の次の作品もどんどん見続けると意味が分かってくるように思います。

2006/3/24(金) 午前 1:00 [ りんとけい ]

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りんりんさん、このイベントでそう、傘倒れて亡くなった方が1人おられました・・・そのへん巧く書けそうになかったのでWikiのリンクにお任せしてしまいました(汗)。クリストのドローイング、この前TV東京系の「何でもお宝鑑定団」で出てましたが・・・1枚50万円だとか・・・こりゃあ手が出ないです。それから現代美術は継続してその作品を追っていく・・・というのはよく分かります。なにせ「コンセプト」が作品ですから・・・何かりんりんさんにコメントをいただいて、また何か見に行きたくなりました。

2006/3/24(金) 午前 2:54 ナイジェル

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雨が降ると閉じる傘…確かに??ですね。現代アートはよくわかりませんが(汗)、これは写真で見るより、現地に行った方が楽しめそうな気はします。

2006/3/26(日) 午前 1:29 あさじん

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あさじんさん、現代アートは既成の芸術を解体していく傍ら、ある意味より「フツーの人」をアートから遠ざけてしまった側面もあるかもしれません(笑)。「見るアホウよりは踊るアホウ」である方が楽しめるのは確かです。そういう「作品」はまだまだあるようにも思えますね・・・って全然オレのいつものキャラと違うなぁ(汗)。

2006/3/26(日) 午後 10:28 ナイジェル

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