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2012年7月18日(水)付

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大飯4号機―再稼働は本当に必要か

きのう関東甲信や東海、近畿、中四国で梅雨が明け、各地で最高気温が35度を超えた。夏本番、猛暑の到来である。電力事情が最も厳しい関西電力管内では、需要がピークの午後4時台[記事全文]

地域の防災―雨の降り方が変わった

記録的な集中豪雨が襲い、九州を中心に大きな被害をもたらした。近年の天候は荒々しさが際だつ。警戒する地域や、避難方法の再考が必要だ。福岡、熊本、大分、佐賀の4県では一時、[記事全文]

大飯4号機―再稼働は本当に必要か

 きのう関東甲信や東海、近畿、中四国で梅雨が明け、各地で最高気温が35度を超えた。夏本番、猛暑の到来である。

 電力事情が最も厳しい関西電力管内では、需要がピークの午後4時台で約2500万キロワットと供給力の89%だった。余力は約300万キロワット。原発約3基分に相当する。

 この夏、関電管内で需要が2500万キロワットを超えたのはきのうが初めてだ。昨年は同じ17日段階で5回あった。

 7月以降のピーク時の使用率も、おおむね供給の80〜90%にとどまった。

 ここ半月ほどをみれば節電効果は着実にあらわれている。企業だけでなく家庭でも、人々が電気の使い方に気を配っている結果といえるだろう。

 こうしたなか、関西電力は18日、大飯原発4号機を再起動する。フル稼働になるのは早くて今月25日だという。

 すでにフル稼働している3号機とあわせ、計236万キロワットが原発から送られる。

 10〜20%の余裕があるのに、当たり前のように再稼働を進めることには抵抗感がある。

 需給が最もひっぱくするのは、梅雨明けから4号機がフル稼働するまでの間だといわれている。だが、関電の予想では24日までの使用率は82〜89%、その後も27日まで最大で82%だという。現状では計画停電なしですむ水準だ。

 一方、電力使用量がピークになるのは8月に入ってからだ。火力発電所がトラブルを起こすリスクも考慮する必要がある。

 だとしても、関電は節電意識が浸透しつつある現実に目を向け、需給予想を不断に見直すべきだ。そのうえで本当に4号機再稼働が必要か、最新情報をもとに考えるべきではないか。

 16日、東京・代々木公園では脱原発を訴える「さようなら原発10万人集会」が開かれ、全国から約17万人(主催者発表)が集まった。

 政府が大飯原発の再稼働を決めた6月以降、脱原発を求める声は全国に広がり、毎週金曜に首相官邸周辺である抗議行動の参加者も急速に増えている。

 この抗議行動の盛り上がりと軌を一にして、人々の節電意識も高まっている。それが猛暑下の電力の余裕につながっているのだろう。

 この夏の関西の需給状況は、政府による他の原発の再稼働判断にも影響を及ぼす。野田首相は「原発を止めたままでは日本社会は立ちゆかない」と言った。本当にそうなのか、政府は立ち止まって考えるべきだ。

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地域の防災―雨の降り方が変わった

 記録的な集中豪雨が襲い、九州を中心に大きな被害をもたらした。近年の天候は荒々しさが際だつ。警戒する地域や、避難方法の再考が必要だ。

 福岡、熊本、大分、佐賀の4県では一時、約36万人に避難指示・勧告が出された。土石流や土砂崩れなどによる死者・行方不明者は30人を超えた。

 豊かな自然に恵まれる九州は一方で豪雨被害に見舞われることが多い。くわえて、最近は短時間に猛烈な雨が襲うゲリラ豪雨も頻発している。

 最も多くの死者が出た熊本県阿蘇市では24時間で1カ月分に相当する507.5ミリと、観測史上最多の降雨があった。

 災害がおきる恐れがある地域では、危険区域や避難の経路、めざす場所などを地図に記したハザードマップは住民を守る効果的な手だてとされる。

 だが、マップの警戒区域の外だからといって、安心はできない。土石流があった阿蘇市の一部は、土砂災害警戒区域になっていなかった。

 ハザードマップの作り直しが必要ではないか、県や市町村は地域全体を調査すべきだ。

 気象庁は今回、「経験したことのないような大雨」というわかりやすい表現をつかった。甚大な災害が迫っていることを伝え、住民に厳重な警戒を呼びかけた。

 新たな表現は気象庁が先月、気象情報の伝え方として用意した。使ったのは初めてだ。切迫感を伝えるのに役だったかもしれない。その効果を検証し、今後に役立てたい。

 いち早く避難指示や勧告が出されても、逃げられなくてはなんにもならない。

 課題は、高齢者をはじめとする災害弱者に、どう避難してもらうかだ。今回の豪雨でも、死者・行方不明者の半数以上が65歳以上のお年寄りだった。

 内閣府や消防庁による「災害時要援護者の避難支援ガイドライン」は、高齢者らの情報を日頃から知っておき、一人ひとりの具体的な支援計画をたてるよう市町村に求めている。

 ところが、個人情報保護の過剰な意識が壁になり、同じ自治体の役場内でも要援護者リストを共有し、活用することが進んでいない。政府は、避難の支援に役立つ法整備を急がなくてはならない。

 老老介護の家庭や独り暮らしの高齢者を避難させるには人手がいる。だれがどう助けるか、決めておく必要がある。

 スギなどの人工林を根の深い照葉樹に戻していくような災害に強い国土づくりも課題だ。

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