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効果疑問のEM菌 県内3町が奨励

2012年07月11日

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EM菌の培養作業をする中泊町職員。菌の原液を培養する左奥の装置は約50万円。培養した菌をタンク(手前、右奥)で培養し町民に配布する=中泊町

 板柳と中泊、鰺ケ沢の3町が、科学的に効果が疑問視されるEM菌を「水質浄化や農地改良に有効」として町民に薦めている。各町はEM菌を培養し、町民に配布。板柳町はEM菌販売業者に4000万円で効果検証を委託し「有効」としたが、専門家は検証を「科学的に無効」と指摘する。

 EM菌は乳酸菌や酵母などの「有用微生物」を配合した微生物資材。普及団体のEM研究機構(沖縄県)は、農地改良や水質改善、放射能対策に役立つと主張し、開発者の比嘉照夫・琉球大名誉教授は、効果は「重力波と想定される波動による」と説明する。効果が確認されない例が多く、理論も現代科学と相いれないとして、「非科学的」との批判がある。

 板柳町では舘岡一郎町長が就任した1999年、町長の同窓生が在籍する市民団体の勧めで、EM菌の活用を開始。翌年、菌の培養器を購入し、町民への無料配布を始めた。開発者の比嘉氏を招いた勉強会などを繰り返し開き、町民に「作物に良い影響を与え、台所にまけば下水の水質が改善される」と説明している。

 2009年度からは3年間、リンゴ栽培などでの効果検証を県内のEM販売業者に委託し、3813万円を支出。業者の報告書は、EM菌で作った発酵肥料を使ったリンゴの「糖度が上がった」などとしている。

 だが、EM菌の効果検証の経験がある後藤逸男・東京農業大教授は、この報告書について「条件の同じ畑で、EM菌を使った場合と使わなかった場合でどう違うか、という比較ができていない。科学的検証としては無効」と指摘する。

 日本土壌肥料学会は1996年の検証シンポジウムで、EM菌の農業上の効果に関する検証例を収集したが、顕著な効果の報告はなかった。99年の後藤教授の報告も、EM菌で作った資材(肥料)と既存の有機肥料で、作物の生育への影響に差はない、としている。

 中泊町は旧中里町時代の10年ほど前から、EM菌の培養と町民への無料配布を実施しており、年間経費は30万〜40万円。鰺ケ沢町は09年から町民に1リットル50円で販売している。

 96年の検証シンポを主導した茅野充男・東京大名誉教授は「行政が薦めることは、一般利用者には効果のお墨付きになる。個人が自己責任で利用することは止められないが、科学的に効果が証明されていないものを行政が薦めるのは問題」と指摘した。

 EM菌の効果を認めない多数の報告について、朝日新聞はEM研究機構に見解を求めたが、回答はなかった。
(長野剛)

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