定量下限値とは何ですか。

福島県在住 40代 会社員 男性 の方からいただいたご質問
食品の放射能調査結果についてお教えください。
福島県が行っている食品の検査で11月からNDという言葉を使わなくなったことに気づき、調べていましたら厚労省の事務連絡に「3. 検査結果について、放射性物質が不検出、または定量下限値未満であった場合には、検査結果欄に「<(検出下限)」を記載すること。なお、検出下限については測定時に得られる検出下限値を記載すること。」とあるのを知りました。ここで言う定量下限値が何を調べてもわからないのです。検出下限値=定量下限値なのでしょうか。それとも検出下限値<定量下限値なのでしょうか。Csが検出されても定量下限値未満であったら”検出せず”と発表されてしまうのでしょうか。
最近は基準越えの食品をずいぶん耳にするようになり、検出せずの本当の意味について不安が増すばかりです。どうか素人にもわかりやすく検出下限値、定量下限値について説明してください。具体的な事例も示していただければ助かります。
どうか、よろしくお願いいたします。
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今回の福島事故関連で用いられる検出下限(検出限界)及び定量下限の定義を平易に言い換えると、それぞれ以下のように表すことが出来ます。

検出限界値:測定した試料の中に放射性物質(放射性セシウム等)が「ある」か「ない」かを判断できる限界の量
定量下限値:測定を行って得られた値(放射性物質が含まれる量)が「十分な信頼性」を持つ下限の量

このように、同一試料を同一の測定条件で測定した場合、定量下限値は検出限界値よりも大きくなります。分析化学の分野では、定量下限は検出限界の3.3倍とすることが一般的だとされているようですが[1]、放射能測定の分野では統一した計算方法は無いとされています[2]。
ただし現状では、報道や政府通達レベルで検出限界と定量下限を混同している例[3]が見られたり、足並みを揃えるためか測定機器・測定条件や検査機関を縦断して検出限界を統一している例が見られたりするなど、もともとの語の定義から少々外れた状態でこれらの言葉が用いられているようです。報道等でこれらの言葉が出てきた際は、上記の定量下限の意味をもつと考えれば間違いは少ないかと思います。

[1] 日本分析化学会:検出限界と定量下限の考え方
http://www.jsac.or.jp/bunseki/pdf/bunseki2010/201005nyuumon.pdf
[2] 日本分析センター:検出限界等について
http://www.nsc.go.jp/senmon/shidai/kanhou_shishin/kanhou_shishin003/siryo3-4.pdf
[3] 厚生労働省:食品中の放射性物質の検査結果について
http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r9852000001q51k-att/2r9852000001qjsv.pdf

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