~とある自由惑星同盟転生者の話~
第4話 原作知識が役に立つとは限らない
同盟は帝国領侵攻作戦において大敗を喫し、2000万人の将兵を失った。
行きは10万隻を超えた戦闘艦艇は、イゼルローン要塞に戻った時にはその4分の1に満たなかった(先に戻った3000隻の損傷艦艇除く)。
俺の所属する第十二艦隊も、ハイネセンへ戻れたのは僅か2000隻。
司令官のボロディン中将も戦死し、分艦隊司令官の中でも生き残ったのは俺だけだ。
……落ち込んでいてもしょうがない、この先のことを考えよう。
帝国では、この後リップシュタット戦役が起きる。
アドルフ・フォン・ハプスブルクというイレギュラーが居るから結果がどうなるかは不明だが、内乱の勃発は間違い無いだろう。
そして、捕虜交換と同盟での救国軍事会議の連中によるクーデターも。
クーデターによる被害はただでさえ弱っている同盟に止めを刺してしまう。
何としてでも阻止しなければならない。
しかし、どうすれば……。
* * *
結論を言うと、クーデターは阻止できなかった。
トリューニヒト議長やネグロポンティ国防委員長、ビュコック司令長官にそれとなく伝えてはいたが、すべて無駄に終わった。
グリーンヒル大将たちが首謀者なのは分かっていても、それは俺に原作知識があるからであって、証拠が無ければ何もできない。
せめて、フォークによるクブルスリー統合作戦本部長殺害未遂事件でも防げればよかったんだが、その時は麾下にある部隊3000隻の訓練を命じられていてハイネセンにいなかったためどうにも出来ず、クーデター発生後は各地の救国軍事会議勢力の鎮圧に当たっていた。
原作知識があってもこんなにも役に立たないとは……。
結局、クーデターは原作通りに終結。
俺は、救国軍事会議によるクーデターを見抜いた先見性と反乱軍の鎮圧の功績で中将に昇進し、第十二艦隊の再建を命じられた。
副司令官はアラルコン少将。
信条的あるいは性格的に問題のある人物だが軍事的にはそこそこ有能であるため、まあ良しとする。
第十二艦隊の再建を始めたようとしたところで、信じられない報告が入ってきた。
帝国での内乱はアドルフ・フォン・ハプスブルク大公が勝利者となり、ラインハルトがヴァルハラ星域での決戦で戦死したという報告だ。
これで、原作は完全にブレイクした。
先はもう読めない。
……いや、なんとなく分かる。
帝国の転生者は原作通り同盟へと侵攻してくるだろう。
圧倒的な戦力差で。
* * *
『諸君、私は女の子が好きだ。諸君、私は女の子が好きだ。諸君、私は女の子が大好きだ。
義姉が好きだ。義妹が好きだ。義母が好きだ。義娘が好きだ。双子が好きだ。未亡人が好きだ。先輩が好きだ。後輩が好きだ。同級生が好きだ。教師が好きだ。幼なじみが好きだ。お嬢様が好きだ。金髪が好きだ。黒髪が好きだ。茶髪が好きだ。銀髪が好きだ。ロングヘアが好きだ。セミロングが好きだ。ショートヘアが好きだ。ボブ縦ロールストレートが好きだ。ツインテールが好きだ。ポニーテールが好きだ。お下げが好きだ。三つ編みが好きだ。二つ縛りが好きだ。ウェーブが好きだ。くせっ毛が好きだ。アホ毛が好きだ。セーラーが好きだ。ブレザーが好きだ。体操服が好きだ。柔道着が好きだ。弓道着が好きだ。保母さんが好きだ。看護婦さんが好きだ。メイドさんが好きだ。婦警さんが好きだ。巫女さんが好きだ。シスターさんが好きだ。軍人さんが好きだ。秘書さんが好きだ。ロリが好きだ。ショタは嫌いだ。ツンデレが好きだ。チアガールが好きだ。スチュワーデスが好きだ。ウェイトレスが好きだ。白ゴスが好きだ。黒ゴスが好きだ。チャイナドレスが好きだ。病弱アルビノが好きだ。電波系が好きだ。妄想癖が好きだ。二重人格が好きだ。女王様が好きだ。お姫様が好きだ。ニーソックスが好きだ。ガーターベルトが好きだ。男装の麗人が好きだ。メガネが好きだ。目隠しが好きだ。眼帯が好きだ。包帯が好きだ。スクール水着が好きだ。ワンピース水着が好きだ。ビキニ水着が好きだ。スリングショット水着が好きだ。バカ水着が好きだ。人外が好きだ。幽霊が好きだ。獣耳娘が好きだ。
家で、街中で、学校で、宮廷で、艦中で、要塞で、戦場で、空中で
この世のありとあらゆる萌えが好きだ。二次元が、エロゲが大好きだ。
ツンデレな娘が好意を隠してツンに振る舞うのが好きだ。
ヤンデレな娘に包丁を突き付けられ空中でバラバラにされるのは結構怖い。
巨乳な娘の胸で挟まれるのが好きだ。
ロリッ娘の頭を撫でるのは気持ちがいい。
主人公とヒロインの日常を見るのが好きだ。
BAD ENDになるのは悲しいものだ。
キャラの新しい一面を垣間見た時は感動の極みだ。
ヒロインを落としてエンディングに辿り着いた時など絶頂すら覚える。
すべてのヒロインを攻略した達成感などはもうたまらない。
隠しキャラが出現するのも最高だ。
攻略キャラと信じていたのがただのサブキャラであった時は屈辱の極みだ。
……自由惑星同盟で規制がさらに強化された。
特に、18禁ものはすべて販売停止である。
萌えが淘汰されようとしているのだ、それも『自由』を冠する者たちによって。
諸君らはこれを認められるか? これを許せるか?
そう、否だ! 私はそれを認めない、許さない!
……それで、諸君らは何を望む?』
「「「「「「「聖戦! 聖戦! 性戦!」」」」」」」
『よろしい、ならば戦争だ!
我々は渾身の力をこめて今まさに放たれんとする魔法少女の魔導砲だ。
だが何年もの間規制に堪え続けてきた我々にただの戦争ではもはや足りない!!
大聖戦を!!
一心不乱の大性戦を!!
我らは20個艦隊4千万の大軍だ(陸戦隊含む)。だが諸君は一騎当千のfull強者だと私は信仰している。ならば我らは諸君と私で総力400億と0.3人の軍集団となる。
萌えを忘却の彼方へと追いやり眠りこけている連中を叩き起こそう。
髪の毛をつかんで引きずり降ろし眼を開けさせBDで見せて思い出させよう。
連中に萌えとは何なのかを思い出させてやる。
連中にエロゲの良さを思い出させてやる。
天と地の狭間には奴らの哲学では思いもよらない萌えがあることを思い出させてやる。
400億人の同志の戦闘団で、世界を萌えで覆い尽くしてやる。
萌えの良さも分からぬ愚かな同盟軍の艦隊を空中でバラバラにしてやる!
ハプスブルク大公アドルフより全艦隊へ。目標、自由惑星同盟首都星ハイネセン!!
アシカ作戦を開始せよ! 征くぞ諸君、萌えを銀河に!!』
…………な・ん・だ・こ・れ・は!?
意味不明にも程があるぞ!
そんな理由で攻めてくんなよ!
空中でバラバラとか何なの?
バカなの?
死ぬの?
て言うか0.3って何だよ!
お前の戦闘力1人分にすら及ばねぇじゃねぇか!!
しかも艦隊の数何気に20まで増えてるし。
これはさすがに多すぎだ!!
……はぁ~、頭が痛くなってきた。
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