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~とある自由惑星同盟転生者の話~
第1話 千億の星、千億の光
俺の名はアルト・スプレイン。
日本では平凡な26歳の社会人だったが、ある日、いきなり突っ込んできたトラックに跳ねられた・・・と思ったらこの世界に転生していた。

最初に自由惑星同盟という自分の所属する国家名を聞いた時は驚いたものだ。
銀河英雄伝説!?
しかし、国家名としては別に銀英伝でなくともあり得る名だったので、その時はあまり気にしなかった。
が、後で調べてみると、やはり銀英伝の世界であることが分かった。

話は変わるが、幼い頃はホント地獄だった。
考えてみてほしい、自分でトイレに行けないんだぜ。
つまり・・・削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除削除

まあ、そんな黒歴史をどうにか乗り越え、俺は軍士官学校へと入学。
同期にはヤン・ウェンリーやラップがいた。
仲は可も無く不可も無く。

俺は前世でも某有名大学を卒業し某一流企業に勤めるなど、それなりに頭は良かったので成績は常に上位をキープ。

そして、士官学校を次席で卒業(主席はマルコム・ワイドボーン)。

その後、順調に昇進を重ね現在の階級は大佐。
現在、第六次イゼルローン要塞攻防戦の前哨戦が行われており、俺はワイトル少将率いる分艦隊(1500隻)の参謀として戦場に立っている。
丁度、小賢しい敵――ラインハルトではない――を他の3個分艦隊と連携して半包囲下に追い込んだところだ。

「よし、敵を半包囲したぞ。こちらは敵の2倍、このまま叩き潰してくれる!」

ワイトル少将は歓喜の声を上げる。
あの小賢しい敵を討ち取れば昇進もあるかもしれないという打算もあるのだろう。

が、敵は紡錘陣形をとり、隣のユースタス分艦隊へと突入する。

やられた!!
こちらの兵力は敵の2倍とはいえ4つに分散しており、各艦隊1500。
3000対1500では、その圧力に屈するのは当然の帰結だ。

俺の想像通り、敵艦隊はユースタス分艦隊を蹴散らし半包囲陣を突破した。
だが、このまま黙って逃がすわけにはいかない。

「閣下、追撃しましょう。確かあの方向にはミッチェル少将率いる3000隻の分艦隊がいるはずです。上手くいけば挟撃できるかもしれません」

「う、うむ。全艦、敵を追撃せよ」

・・・・・

結果的に、追撃は無駄に終わった。

敵はミッチェル分艦隊に遭遇後、猛烈な勢いで攻め立て、ミッチェル少将が艦隊を立て直すため一旦後退した隙にあっさり引いて逃げられたのだという。

その話を聞いて、原作では語られて無かったが、あのような実力者もいたんだなと改めて思わされた。
それとも、あの分艦隊の指揮官は原作キャラの誰かだったのか?

うーん、わからん。


* * *


いよいよ、第六次イゼルローン要塞攻防戦が始まる。

俺の所属するワイトル分艦隊は、前哨戦が終了しての再編の結果2000隻に増強された。
つまり、あの『小賢しい敵』の突撃でユースタス少将が戦死し、残存艦艇を他の分艦隊で三等分したということだ。

この第六次イゼルローン要塞攻防戦は、同盟軍は帝国軍と互角に渡り合うもののラインハルト一人に翻弄され、結局トールハンマーをくらって敗北する。

原作を読む限り、同盟軍に行動は最後のラインハルト艦隊へと追撃を除いて特に問題ないように思える。
ならば、俺のすべきことは最後のトールハンマーによる被害をどれだけ減らすことができるかだ。
もっとも一大佐に過ぎない俺が影響力を及ぼせるのは、このワイトル分艦隊の中だけ。
せめてこの艦隊だけでも無事に救いたいものだ。
主に俺の命の為に。

・・・・・

これまでに、俺が聞いた報告をまとめると以下のようになる。

1.ホーランドの奇襲部隊が撃破され、総司令部が襲撃される。
2.帝国軍部隊が突出し出し、同盟軍が予備兵力を投入し混戦状態へ。
3.ローゼンリッターが帝国艦を次々に襲撃。
4.消耗戦に陥る。
5.ホーランドが柔軟で機動性を極めた艦隊運動で活躍。
6.同盟軍で撤退の意見が主流になる。
7.イゼルローン要塞を出撃した2000隻ほどの艦隊が同盟軍の後背に出て退路を断つ動きをみせる。
8.同盟軍、2000隻の艦隊を30000隻で追撃。

報告を聞く限り、第六次イゼルローン要塞攻防戦は原作と同様の展開のようだな。
このままだと危ない!

「撃て撃て、あの小艦隊を逃すな!」

「閣下、ダメです。後退しましょう」

「何故だ?」

「たった2000隻を30000隻で無秩序に追いかけるのは無意味です。それに、見てくださいイゼルローン要塞を」

「ん・・・なっ!!」

「このままではトールハンマーの射程内に引き込まれます」

「しかし、この流れでは後退など・・・・」

「艦隊の針路を斜め左にとり、この流れから徐々に抜け出すのです。そして・・・」

「トールハンマーが!!」

やばい、閣下・・・ダメだ硬直している。
なら俺が―――

「全部隊、回廊の天頂方向に急速上昇!天井に張り付けー!」

直後、トールハンマーが放たれた。

光が同盟軍の艦艇を呑み込んでいく。

よし、この艦隊は無事だ。
他の艦隊は・・・酷いことになっているな。

「第二射きます!」

「総司令部より退却命令」

「閣下」

「あ、ああ。全艦退却!」


12月10日17時40分――第六次イゼルローン要塞攻防戦は自由惑星同盟軍の全面退却をもって収束した。

同盟軍の戦死者は75万4900名。
帝国軍のそれは36万8800名。

同盟軍はイゼルローン要塞攻略という戦略上の目標を達し得ず、損害においても敵を大きく上回った。
トールハンマーが発動するまでは互角に戦ったという戦術レベルでの自己満足のみが残り、それと引き換えに一都市の人口に等しい人命が失われたのである。

・・・・・

「スプレイン大佐、君のおかげで我が分艦隊はトールハンマーによる犠牲は出なかった。君には感謝している」

「ワイトル閣下・・・」

「どうかね?今夜は一杯」

「良いですね。お付き合いさせていただきます」



この銀河系には千億の星が存在し、千億の光を放っている。
アルト・スプレイン大佐――彼が同盟にどんな光をもたらすのか、それはまだ誰にも分からない。


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