一応、時系列としては転生順に
現代日本 → 銀河英雄伝説世界 → 古代迷宮世界
となるんですけど、原作蘭に『銀河英雄伝説』を入れる必要ありますかね?
そこら辺、ちょっと良く分からないんで。
第1話 古代迷宮
古代迷宮――それは1000年以上前からこの世に存在する4つの迷宮のことである。
この世界の歴史は1000年しか無い。
否、それ以前にも人類の歴史はあったが、記録やその他の一切がちょうど1000前を境にしてピタリと不自然に途切れている。
それ以前の歴史は失われた世代と呼ばれており、その存在を示すものは現時点において皆無であった。
古代迷宮を除いて……。
そう、古代迷宮は失われた世代の存在を示す唯一の証拠であり、古代迷宮が発見されたからこそ人々は失われた世代が存在した事を知ることができた。
また、古代迷宮内では何処からともなく魔物が湧き出して人間へと襲い掛かってくる。
魔物を倒すと、その死骸は何故か残らずその場には代わりに1つの結晶が残る。
この結晶は魔導具の製造や魔法の行使に必要不可欠であり、魔導技術・魔法技術が確立された今では国家にとって欠かせないファクターとなっている。
それ故、国は迷宮ギルドを創設し結晶の収集を推奨。
古代迷宮には日々、冒険者を名乗る人物たちが一獲千金を求めて潜り続けている。
――世界暦1000年――
メギルド帝国内の城塞都市リクセリアにあるアルデンヌ迷宮。
深淵へと続くその古代迷宮は、発見から2世紀以上経った今でも未だその全容が明らかになっていない。
50階。
それが現状で判明している最深の階層であり、それ以降はまったく未知の領域。
その42階で、一人の男と魔物が戦っていた。
『スパッ!』という音と共に人骨の魔物の胴体が2つに分かれる。
剣の一閃によるものだ。
二つに分かれたスケルトンは霧のように消え去り、後には1つの結晶が残る。
「ったく、かったり~な」
それを成した男はどうでも良さそうに一言呟くと、金の指輪を填めた手を結晶に向ける。
すると結晶は捻じれた空間に吸い込まれていき、それを確認した男は何事も無かったように歩きだした。
男の名はアドルフ・フォン・ハプスブルク。
メギルド帝国十二大貴族の筆頭たるハプスブルク公爵家の次男であった。
* * *
ローシア大陸の東部一帯を支配するメギルド帝国。
メギルド帝国は広大な国土と豊富な資源・人口を背景として強大な国力を誇り、大陸でも五指に入るほどの大国であるが、その隆盛と古代迷宮には深い関係があった。
世界暦784年。
まだメギルド帝国が王国と名乗っていた頃、1つ目の古代迷宮――アルデンヌ迷宮――がメギルド王国内で発見される。
アルデンヌ迷宮が発見されたのは特に何も無い場所であったが、迷宮(の魔物)から産出される結晶の価値が判明すると次第に人が集まって街が形成されるようになった。
リクセリアと名付けられたその街は結晶を用いた魔導具が普及し始めるとたちどころに発展していき、その景気効果は王国全域に及んだ。
しかし、そのような『一人勝ち』状態は争いの火種と為りかねない。
ましてや、メギルド王国の国力は周辺諸国より頭一つ飛び抜けてはいるものの、所詮その程度となれば尚更であった。
世界暦804年。
迷宮の利権を欲した周辺諸国は、メギルド王国へ迷宮の解放(つまり共同管理)等の要求を突き付けた。
無論、そのような要求など呑めるわけはなく、メギルド王国は直ちに魔導兵装で身を固めた魔導兵団を編成し、併せて、周辺諸国からの要求を拒否した。
要求拒否の知らせを受けた周辺諸国はメギルド王国への侵攻を決定し、大規模な連合軍を編成。
総兵力10万という圧倒的な戦力で以ってメギルド王国へ攻め寄せた。
後の歴史において第一次迷宮戦争と呼ばれる戦争である。
だが、当初の予測は裏切られ、諸国連合軍はメギルド軍1万6000によって撃退された。
その後、自国の安全を確保したメギルド王国は南部に位置するミレニカ王国へ逆侵攻を行う。
その際、投入した兵力は約1000。
僅か1000の魔導兵によってミレニカ王国は滅亡した。
この第一次迷宮戦争は通常戦力に対する魔導兵の優越を証明した戦争であり、以後、各国は魔導兵の増強に努めることになる。
しかし、魔導兵装の製造に必要な結晶はメギルド王国でしか産出せず、またメギルド王国は結晶や魔導具の国外への持ち出しに高い税金を掛けたため、各国の魔導兵の増強は遅々として進まなかった。
これは世界暦815年に大陸南方のノーツラント王国で第2の古代迷宮が発見されるまで続き、この年を以ってメギルド王国の一国優位体制は消滅した。
とはいえ、依然メギルド王国が優位な立場にあるのは変わりなく、長年の研究で培ってきた魔導技術は他国を遥かに突き離していた。
また、魔導具を媒介として放つ魔法に関する研究も進められており、軍でも魔法師隊が設立されるなど導入に積極的であった。
世界暦831年。
メギルド王国内で第3の古代迷宮が発見されると、第二次迷宮戦争が勃発。
第一次迷宮戦争での戦訓から諸国連合軍も魔導兵装で身を固めており、一時期は王都ランバルトへ迫るほどの勢いを見せた。
が、これはメギルド王国の狡猾な罠であった。
王都近くまで誘い込まれた連合軍はメギルド軍の別動隊によって補給路を断たれ、軍の士気が下がる中、王都間近のドルニア平原でメギルド軍に決戦を挑んで、その勝利に望みを託した。
だが、この27年の間にメギルド王国の国力は以前とは比較にならないほど上がっており、ドルニア平原の戦いではその強大な武力を遺憾なく発揮して連合軍を一方的に殲滅した。
ちなみに、この戦いを含む第二次迷宮戦争全般で活躍した12人の貴族が後の十二大貴族であり、貴族に公爵、侯爵、(辺境伯爵)、伯爵、子爵、男爵という区分けが出来たのもこの後であった。
閑話休題。
第一次迷宮戦争時を上回る圧倒的な勝利を手にしたメギルド王国は逆侵攻を行って各国を併呑。
領土が元の3倍以上に膨らんだメギルド王国は国名をメギルド帝国へと改名し、一気に大国の座へと躍り出た。
そして…………。
世界暦982年1月1日。
メギルド帝国十二大貴族の一角であるハプスブルク公爵家に一人の子供が生まれる。
その子供の瞳と髪の色は黒色。
黒色の瞳と髪(の両方)を備えた人間が今までこの世に存在したという記録は無い。
だが、ハプスブルク公爵家の当代の当主であるアルベール・フォン・ハプスブルクは「前例が無いだけだ」と笑い飛ばし、生まれて来た子供にアドルフという名を与えた。
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