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  銀河転生伝説 作者:使徒
最終話 新たな時代へ
宇宙暦799年/帝国暦490年4月28日。
ハプスブルク大公の旗艦ブリュンヒルデが惑星ハイネセンへ降り立った。


<アドルフ>

さて、初めてハイネセンの土を踏んだ俺だが、待っていたのは当然のことながら事後処理だった。

「以上の点から、同盟を形式の上でも完全に滅亡させ直接支配下に置くのは時期尚早との意見が多いですが……」

だよね~、確か原作でもそうだった希ガス。
駄菓子菓子!

「いや、この際同盟には完全に滅んでもらう。確かに色々と問題も多いのは事実だが、この機会を逃せばまた新たな問題が出てくるだろうし」

同盟は帝国へと併呑する。
これは(俺の中で)決定事項だ。
逆らうヤツは友愛しゅくせいだ!

この後もダラダラと戦争を行う気も無いしね。

「閣下、ヨブ・トリューニヒト元議長が面会を申し込んでおりますが」

「通してくれ」

扉が開き、トリューニヒトが入ってくる。

「トリューニヒトか、ご苦労だったな。卿が裏から手を回してくれなければ、ここまで上手くいかなかっただろう」

「いえいえ、閣下が私に権力を与えてくれるならこのぐらい容易いことです」

「ほう……まあいい。ところで、地球教の情報は提供してくれるんだろうな」

「もちろんですとも。もはや彼らに利用価値は無いですからな」

あっさりと地球教を売り払うトリューニヒト。
所詮、利用し利用される関係なんて状況が変わればこんなもんだよね。
この業界で真の意味で信用とか信頼とか無いよ。

まあ、何はともあれ、これでチェックメイトだな。
地球教さえ潰せば、俺の脅威となるものは存在しなくなる。
夢のニート生活が待っているぜ!

……それにしても、面倒だな事後処理。
こんなことは専門のヤツらに任せて、俺は俺のやるべきことをやる。
それで十分じゃないか。

萌えに餓えてるであろう同盟の民衆にエロゲとエロ本を配給しようではないか。
130億の同志たちが俺を待っている!(※注 そんなにいません)

「……閣下、いったい何を考えておいでですか?」

コ、コノヱ姉さん!?

「い、いえ、事後処理のことを……」

「そうですか。ですが、くれぐれもおかしな行動を起こされぬよう……」

「は、はひ」

……大人しく事後処理するか。


* * *


事後処理もひと段落を終えたアドルフは、ヤン・ウェンリーの家を訪ねた。

「で、ヤン提督としては何か希望はありますか?」

「私は退役して年金生活を送らせてもらえばそれで満足ですよ。まあ、出来るなら歴史の研究でもやりたいですけどね」

「なるほど、ではそう計らいましょう。なんなら、帝国の非公開歴史書をある程度まで自由に閲覧する権限を与えてもいいですよ。ただ、あなたには一つやってもらう事があります」

「それは?」

「イゼルローン要塞ですよ。あなたは要塞を放棄するとき、いずれ取り戻せるよう仕掛けを施したはずだ。それを解除していただきたい。……ああ、拒否は認めませんよ。知らないと惚けることも。もし、あなたがそのどちらかを選択されるなら、残念ながらあなたにはこの世界から消えていただくことになります。もちろん、あなたのお仲間も一緒にね」

「…………」

「これは脅しではありませんよ」

「もし、私が本当に何もしてなかったら?」

「嘘か本当か確かめる術などありませんからね。自白剤で洗いざらい吐いていただいた後、宇宙のゴミになってもらったでしょう」

「私一人になんとも大層な……」

「あなたはそれだけの事をやってきたんですよ。疑わしきを罰さずには居られないほど。好む好まざるに関わらず…ね」

「分かりました、お教えしましょう」


* * *


宇宙暦799年/帝国暦490年6月20日。
銀河帝国において第37代皇帝エルウィン・ヨーゼフ2世が退位。
22日にハプスブルク大公アドルフ・フォン・ハプスブルクが第38代皇帝に即位し、アドルフ1世となった。

これと前後して、軍の人事にも大幅な移動が行われた。

統帥本部総長シュタインホフ元帥、軍務尚書エーレンベルク元帥が退役し、その後釜にナトルプ元帥とメルカッツ元帥が抜擢された。

また、アドルフが皇帝となったことで空位になった宇宙艦隊司令長官職にはシドー元帥が就任した。


皇帝            アドルフ1世
軍務尚書          ウィリバルト・ヨアヒム・フォン・メルカッツ元帥
軍務次官          ハンス・ディートリッヒ・フォン・ゼークト上級大将
統帥本部総長        グスタフ・フォン・ナトルプ元帥
統帥本部次長        クリストフ・フォン・ドロッセルマイヤー上級大将
宇宙艦隊司令長官      トルガー・フォン・シドー元帥
宇宙艦隊副司令長官     ドナルド・ダック・リーガン元帥
宇宙艦隊総参謀長      エルネスト・メックリンガー上級大将
宇宙艦隊司令官       アーダルベルト・フォン・ファーレンハイト上級大将
              アウグスト・ザムエル・ワーレン上級大将
              アルフレッド・ガーシュイン上級大将
              ウォルフガング・ミッターマイヤー上級大将
              エルンスト・フォン・アイゼナッハ上級大将
              オスカー・フォン・ロイエンタール上級大将
              カール・グスタフ・ケンプ上級大将
              コルネリアス・ルッツ上級大将
              ナイトハルト・ミュラー上級大将
              ヘルムート・レンネンカンプ上級大将
              ユルゲン・シュムーデ上級大将
近衛艦隊司令官       カール・ロベルト・シュタインメッツ上級大将
帝都防衛司令官       ヘルマン・フォン・オットー上級大将
幕僚総監          アフドレアス・ゴシェット上級大将
憲兵総監          ウルリッヒ・ケスラー上級大将
憲兵副総監         モルト大将
装甲擲弾兵総監       ヘルマン・フォン・リューネブルク上級大将


宇宙艦隊の数が14個艦隊(近衛艦隊含む)まで減っているが、これはバーミリオン会戦での損害が回復し次第、18個艦隊程度まで戻す予定であった。

それと、ミュラー艦隊であるが、旗艦のリューベックはバーミリオン会戦で破壊されており、戦艦ヘルテンを臨時の旗艦としていた。
アドルフは、バーミリオン会戦で4度に渡って乗艦を変えながら不退転の勇戦を示したミュラーに報いるため、新鋭戦艦パーツィバルを下賜した。


<アドルフ>

皇帝か……俺も偉くなったものだな。
前世では想像もつかん程の出世だ。
想像したとしても『厨二乙』だが。

だが、この書類の山だけは何とかならないものだろうか。
面倒でゴザル。
もう働きたくないでゴザル。

やっぱ  皇帝 < ニート  だよな~。

「……なら、ニート皇帝に俺は成る!」

「陛下、寝言を言ってないでちゃんと仕事してください」

ク…クソ。
俺の自由は……。

……まあいい。
さっさと仕事を終わらせるとしよう。

次の資料は……。

「地球教か……彼らには、そろそろこの世界から退場願いたいものだ」

「……殺りますか?」

「ああ、こちらの準備が完了したときが奴等の最後だ。それと、地球教とキュンメル男爵が繋がっているという情報もある」

実は原作知識だがな。

「はっ」

・・・・・

調査の結果、やはりキュンメル男爵は黒だった。
また、これで地球教による帝国への反逆が立証されたため、表立って行動に移れる。

それに、どうやら地球教の勢力と影響力は原作より低下しているようだ。
萌えに目覚める信者が増え続けているらしいしw

ククッ、奴等も年貢の納め時だな。


* * *


宇宙暦799年/帝国暦490年7月13日。
アウグスト・ザムエル・ワーレン上級大将率いる艦隊が地球征討のため出撃した。

24日、ワーレン艦隊は太陽系の外縁に到着し、25日に地球教本部に対する攻撃を開始した。
これは、地球教徒によるワーレン暗殺未遂事件が起こらなかったため、日時が1日早まったのである。

この作戦において帝国はある装備を使用した。
超装甲服『ボ○太くん』である。

『ふもふも』『ふもっふ』と声を上げながら地球教徒を狩り出していくボン○くん部隊。
これは、ある意味とても怖い。
カルト教団特有の狂信的戦意の高さも、これには敵わなかった。

さらに、萌えに目覚めた元信者たちの寝返りによって後ろから地球教徒たちを襲う。

結果、地球教はあっさりと瓦解した。
総大主教以下、地球教幹部は全員死亡。
止めの砲撃によって総本山も数億トンの土砂の下へ埋まった。

これが数百年に渡って暗躍してきた地球教の最後であった。


* * *


宇宙暦799年/帝国暦490年7月28日。
地球教殲滅の報告が帝都オーディンへもたらされた。


<アドルフ>

「そうか、地球教を殲滅したか」

「これで肩の荷が一つ下りましたな」

「それはそうなんだが、書類が増えるのはどうにかならんのか?」

見ろ、リューネブルク、ミュラー、フェルナー。
この書類の山を。

それに、ヒルダにアロマ。
書類の山見て『うわぁ』って顔してないで手伝ってくれ。
今は猫の手でも借りたいんだよ。マジで。

「おまいらも少しは手伝ってくれよ」

「ところで、エリザベート様に引き続きサビーネ様も無事懐妊なさったそうで」

む、話を逸らしやがったな。

「ああ、早く子供の顔を見るのが楽しみだ。ついでに、早く後を継いで俺を楽にしてくれるとありがたいんだが」

皆から笑いがこぼれる。
執務室は今日も平和だった(俺を除く)。

・・・・・

まったく、あいつら結局手伝わずに帰りやがった。
こっちは色々と大変だと言うのに。

銀河が統一されたことで、ここ帝都オーディンは首都として立地的によろしく無くなった。
そのため、帝都をフェザーンへ遷都するんだが、それに伴い獅子の泉(ルーヴェン・ブルン)宮殿が建設される。
また、安全保障の点からフェザーン回廊の両端に要塞を建造する。

旧同盟領側の出口にはシャーテンブルク要塞。
旧帝国本土側の出口にはフェザーン要塞――つまり、原作におけるドライ・グロスアドミラルスブルク要塞だ。

もちろん、こういった計画が進行中ということは、俺の書類必然的に多くなるということでもあるから毎日地獄だよ。

……皇帝になって書類仕事が大変かって?

ああ、大変だ。
書類の山を艦主砲で消滅させたくなるほど大変だ。

まあ、リヒテンラーデのジジイがいるおかげで大分助かっているけど。
爺さん(フリードリヒ4世)の頃もこの人がほとんどやってたからな。

しかし、このジジイももう年だから、いつくたばるか分かったもんじゃない。
誰か後任を探しとかんと。

……この先、帝国は――銀河は新たな時代を迎えるだろう。
帝国が今以上に興るか没するか、それは俺には分からん。
だがせめて、俺が生きている間は平穏であってほしいものだ。





こうして、銀河の頂点に立った元一般人の物語は、一時の終わりを迎える。
早く子供たちに後を継がせて、気楽な人生を送りたいとの野望を胸に秘めたまま……。


―― 完 ――
銀河転生伝説、これにて完結となります。
ここまで読んでいただき誠にありがとうございました。

この話の続編となる『銀河転生伝説 ~新たなる星々~』も只今執筆中ですので、そちらの方もよろしくお願いします。
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