福島のニュース

飯舘・長泥地区「帰還困難」に 荒れる故郷、墓前に別れ

バリケードの前でやるせない表情を見せる佐藤さん(右)=16日午前11時ごろ、福島県飯舘村長泥

区域再編前日に墓参りに来て花を手向ける志賀さん=16日午後4時ごろ

 福島第1原発事故の避難区域の見直しで、福島県飯舘村が17日、新たな3区域に再編された。放射線量が高い長泥地区は村で唯一、5年以上帰還不能で立ち入りも制限される「帰還困難区域」に指定された。自由に立ち入りできる最後の日の16日、住民は荷物出しや墓参りで一時帰宅し、自宅に別れを告げた。(福島総局・浦響子)

 長泥地区は村の南端で山林に囲まれたのどかな地域だ。74世帯276人が住んでいたが、原発事故で避難した。車道脇に雑草が伸び、田んぼには白い夏草の花が揺れていた。あるじを失った住宅は所々壁が傷んでいる。
 「植木も田んぼも避難後は手入れしていない」
 荒れた庭の草木を見ながら、農業佐藤明康さん(70)がつぶやく。福島市の仮設住宅に避難している。再編前に家を見に行こうと妻(62)、長女(42)と訪れた。
 翌日からバリケードで封鎖される。住民は暗証番号を使って鍵を開けて立ち入りできるが、「関」の印象が強く、帰還困難という言葉の響きと共に心にのし掛かる。
 「飼っていた牛の柵を思い出す」。佐藤さんの言葉に妻がうなずく。「隔離されている気持ち。今まで通りにスーッとは入れない」
 地区内を回ると、一時帰宅する住民がぽつりぽつりと現れた。道端で会い、「しばらく」「最後だから来たよ」と声を掛け合う。
 海産物卸業志賀隆光さん(64)は親戚と4人で自宅そばの墓にお参りに来た。福島市の借り上げ住宅で暮らす。新しいお花を供え、墓前で手を合わせた。
 「追い出されたようなもの。残念というほかない」
 区域再編で帰還が遠のく。「もう帰れないかもしれない」。村外に定住する選択肢が現実味を帯びているという。
 バリケードは長泥地区と外部を結ぶ道路6カ所に設置され、17日午前0時、国の原子力災害現地対策本部職員らの手によって閉鎖された。

[飯舘村の避難区域見直し] 2011年4月、全域が計画的避難区域に指定され、全村民が避難している。今回の見直しで、村内20地区は放射線量に応じて「帰還困難区域」(年間50ミリシーベルト超)、立ち入りは自由にできる「居住制限区域」(20ミリシーベルト超50ミリシーベルト以下)、早期帰還を目指す「避難指示解除準備区域」(20ミリシーベルト以下)に再編された。帰還困難区域は長泥地区のみで制限区域は飯樋など15地区(1662世帯5262人)、準備区域は大倉など4地区(208世帯795人)。帰還困難区域は午前8時〜午後5時に限り立ち入りできるが、宿泊はできない。


2012年07月17日火曜日


Ads by Google

△先頭に戻る

新着情報
»一覧
特集
»一覧
  • 47NEWS