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ロンドン五輪2012特集

【素顔のなでしこ】鮫島、日課は階段掃除

2012.7.13 05:04更新

乙女走りでドリブルする鮫島。実は内股、理にかなっているそうです

 日本女子代表「なでしこジャパン」戦士の素顔を、関係者の証言で紹介する連載の第9回は、なでしこリーグ2部相当のチャレンジリーグ・仙台へ移籍が決まったDF鮫島彩(25)。内股の『乙女走り』とかわいらしいルックスの一方で、内に秘める芯の強さと闘志を、宮城・常盤木学園高校時代の恩師・阿部由晴監督(49)が明かしてくれた。 (佐藤ハルカ)

 鮫島が通っていた高校女子サッカー界の名門、常盤木学園。阿部監督が思い出す姿がある。

 「サメ(鮫島)はね、毎日階段の掃除をしてたね。係なの?っていうくらい。朝から気付けばサメが階段を掃除してた」

 同校のサッカー部員は仙台市内で寮生活を送る。阿部監督の夫人が手作りする食事以外は、掃除や洗濯まで部員がこなす共同生活。鮫島は自分の部屋だけでなく、踊り場が「コ」の字になった階段を毎朝掃除していたという。

 鮫島はスーパー銭湯が好きな阿部監督によく同行した。寮のシャワーはタンク式のため、一気に湯を使うと空になり、最後は水になってしまう。「部員を何人か連れて行こうとなると、必ず鮫島がいたね」と、キレイ好きで風呂好きの「サメちゃん」を懐かしんだ。

 鮫島自身は「何となくサッカーをやっていただけなんです。絶対に代表を目指して、という感じじゃなかった」と振り返る高校時代だが、そんな「おっとり」のイメージを恩師は苦笑いで否定した。「本人が言っていることと、見せていた顔は違いますよ」

 同校の入学試験のサッカー実技で、阿部監督は目を見張った。コーンを縫うようにドリブルするテストで、手本の3年生より速く駆け抜けた受験生がいた。鮫島だった。「スキルフルな選手。スピードもテクニックもあるし、可能性を感じました」

 リーダータイプではないが芯は強かった。高校3年の夏休み前。鮫島は卒業後、尊敬する母と同じ看護師の道を選ぶか、サッカーを続けるかで悩んでいた。「看護師の勉強をしながらサッカーを続ければ」という監督の提案に、首を横に振った。

 「中途半端になるならサッカーやめる、と。進むべき道に対し、選択肢を持って考えながら決定していく子でした。話をしていてもブレない。自分の立ち位置をしっかり認識しているんです」

 「3・11」から1年以上たった今でも鮫島は、東日本大震災や、当時所属していて休部となった東京電力マリーゼのことを多くは語ろうとしない。サッカーを続けることが難しい立場になりながら、周囲の人たちの尽力でプレーをやめずにすんだ。さまざまな思いが、安易に口を開くことをとどまらせている。

 「代表戦に向けて準備できる態勢を作ってくれた人、周囲の意気を感じて、とらえることができる子なんだよ。本当に、いい子だよ」

 鮫島はロンドン五輪後、東京電力から移管されたチャレンジリーグの仙台に移籍することを決断した。フランスリーグ・モンペリエの退団決定後は、海外でのプレー続行を模索したほか、国内の強豪クラブから誘われた。それにもかかわらず2部リーグでのプレーを選んだところに、“第二の故郷”と被災地への思いが見て取れる。

 『おっとり』の中に隠れた芯の強さ。サッカー部寮の階段を毎日掃除していたなでしこはロンドンで、世界が驚く花を咲かせる。

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