日本政府が、中国と領有権争いを繰り広げる尖閣諸島(中国名:釣魚島)を国有化する方針を打ち出したのに対し、反対を表明した丹羽宇一郎・駐中日本大使が15日、一時帰国した。玄葉光一郎外相はこれについて「尖閣諸島をめぐる中国側の主張について報告を受けるためだ」と説明した。石原慎太郎・東京都知事が購入に向けた動きを見せていた尖閣諸島について、野田佳彦首相が国有化の方針を打ち出した後、中国政府が強く反発している中、中国をけん制するため、丹羽大使を急きょ帰国させる措置を講じた、と産経新聞は報じた。
NHKが報じたところによると、玄葉外相はこの日午後、外務省で丹羽大使と面会し「尖閣諸島は明らかに日本の領土で、中国と日本の間には領土問題は存在しないという日本政府の見解を、中国に対し正しく伝えてほしい」と指示したという。
だが、丹羽大使が更迭されるのではないかとの見方も出ている。読売新聞は「(丹羽大使による)尖閣諸島をめぐる不適切な発言を受け、政府内部で更迭論が取り沙汰されている」と報じた。また、自民党などの野党も駐中大使の交代を求めている。
丹羽大使は最近、英紙フィナンシャル・タイムズとのインタビューで、石原都知事による尖閣諸島購入に向けた動きについて「日中関係の重大な危機を招きかねない。数十年にわたる(日中関係の改善に向けた)努力が水の泡となるようなことは容認できない」と語った。丹羽大使は大手商社・伊藤忠商事の元会長で、2010年に民間出身の駐中大使として赴任し、日本の財界を代表する親中派として知られている。
一方、野田首相による国有化発言の後、尖閣諸島周辺の海域に進入しようとした中国の漁業指導船3隻は、今月13日に中国近海に移動した。