ウェブで無料で読める以下の記事の書き出しを読むと、どうやら朝日はこれをスクープ扱いしているようです。
米空軍の新型輸送機オスプレイがアフガニスタンで不時着して4人が死亡した一昨年の事故で、事故調査委員長を務めた空軍幹部がエンジンの不調が事故につながったという報告書をまとめたところ、内容を変更するよう上官から圧力をかけられたことが分かった。
事故の調査に携わったドナルド・ハーベル退役准将が朝日新聞にそう証言したというのですが、このニュースはぜんぜんスクープではないどころかニュースですらありません。
アメリカの空軍関係者向け週刊新聞「エアフォース・タイムズ」は、この話を去年の1月22日に伝えているのです。
Generals clash on cause of April Osprey crash
記事は、ハーベル准将が「砂漠地帯で長時間運用したためエンジントラブルが起きた」との報告書をまとめようとしたところ、上官のシコウスキ中将が異議を唱えたという内容で、当時すでに退役していたハーベル氏が「圧力をかけられた」と上官を告発しています。
しかしアメリカでは、このニュースはほとんど話題になりませんでした。なぜなら、問題の事故機は機密保持のために事故直後にブラックボックスごと破壊されており、そのため決定的な証拠はなく、オリジナル記事のタイトルが示すように、問題はあくまで調査に携わった軍関係者間の意見の相違にすぎないからです。
ちなみにアメリカでは、オスプレイの危険性を声高に叫ぶのは今や(なぜか)「ワイアード誌」くらいです。開発段階では事故が相次いで未亡人製造機と呼ばれたオスプレイですが、今や安全性が向上し、自衛隊も採用している大型ヘリのCH53などに比べて事故率はずっと低いのです。
朝日は「内容を変更するよう上官から圧力をかけられたことが分かった」と、さも大発見をしたかのように書いていますが、これは「朝日新聞の取材により判明した」ということではなく、「朝日新聞が1年半前のニュースに今気づいた」という意味です。
1年半前のニュースに今頃気がつき、さらにはそれをあたかもスクープのように見せかけて記事のインパクトを増そうとするとは、なんという情弱、そして姑息な大衆扇動。
ちなみにハーベル氏は、つい先日産経新聞のインタビューを受けており、朝日の煽り記事とはまるで印象の違うコメントをしています。