発信箱:「基地」を笑う=大治朋子(外信部)
毎日新聞 2012年07月17日 00時13分
沖縄で大人気のコント「お笑い米軍基地」の公演を名護市内で見た。若手芸人たちが、基地問題を辛口の風刺で笑いに変える。
観客席が最も沸いたのは「尖閣諸島」ネタだった。玩具売り場で東京都知事と同じシンタロウという名前の男の子が「尖閣諸島」のおもちゃをママにせがむ。そこに中国人らしき男たちが現れ、「尖閣」を取ろうとする。警備員が、不審船を見つけた海上保安庁のように「君たち、出て行きなさーい」と叫ぶが、なかなか出て行かない。
そして上階に入店する「アメリカさん」の登場。迷彩服の男たちがハリセンで「シンタロウ」から「中国人」まで、全員をぶったたいてこう言う。「このデパートはぁ、アメリカーがいるからもってるんじゃないのかぁ」。米国産のビーフジャーキーを買えと全員に迫り、断るとまたたたく。店員がつぶやく。「早く出て行けばいいのによ」
そう、「デパート」は沖縄で、「アメリカさん」は米軍基地だ。米軍がいるから沖縄は安全、という「定説」を皮肉っている。
笑いの底に見え隠れするのは深い怒りだ。東京で「売れない芸人」だった那覇市出身の小波津(こはつ)正光さん(37)がシリーズを思いついたきっかけは、04年夏の沖縄国際大への米軍ヘリ墜落事故だった。当時、本土はアテネ五輪に興じていた。「アテネで聖火が燃え上がっていたころ、沖縄ではヘリが燃え上がってた」。思わず口にしたネタが大うけしたという。