第133回
富を生み出す道州制への道 ―― 九州をモデルケースに
経営コンサルタント 大前 研一氏
2008年6月18日
最近、道州制へ向けた議論を耳にする機会が増えてきた。いよいよ俎上(そじょう)に上ってきたと言うべきか。
わたしが、かねてからの道州制推進論者であることはご存知の人も多いと思う。「地域国家論」の提唱者として、わたしは19世紀的な国民国家からの脱却を世界中で呼びかけてきた。EUや中国の台頭を地域国家の集合体として見る見方も折に触れて提示してきた。
世界の繁栄する地域を見れば、その秘訣がROW(Rest of the World:その他世界)から呼び込むことにあることは明らかだ。日本ではいまだに国民の払う税金で景気刺激をするしかないと考えている人々が大半だ。富の分配はその前提として富の創出がなくてはならない。いま日本の人口はまさに少子高齢化しており、毎年40万人ずつ就業人口が減っている。GDP(国内で生み出された総付加価値)を維持するだけで毎年7%の生産性向上がなければならない。これは今の日本の能力からいってほぼ不可能な数字だ。また生産性の高い、競争力のある企業は先を競って海外に出て行っている。つまり国内での付加価値、すなわち富の創出にはこれから先あまり貢献しないだろうということだ。
富の創出の議論を忘れて道路建設や福祉の充実など富の配分の議論ばかりすれば、その原資は未来から、すなわち子孫から借りてくるしかない。しかし、将来の少なくなった就業人口でこの借金を返すことは至難の技だ。
解決策は二つに一つ。第一は今の大阪で橋下知事がやっているような歳出の削減である。5兆円の借金を1000億円ずつ返していくという話だが、それでも50年かかるということである。借金に利子が付かなければ、という話だ。利子が2%付いただけで1000億円だから、借金は永遠に減らない、という話でもある。政府の財政削減論者が言うプライマリーバランス(これ以上借金が増えないレベル)というのは要するにそういう話しだ。
もう一つが、真剣に富の創出を考える、ということである。その場合には日本を再起動するくらいの覚悟でやらなくてはならない。その一つの方法が世界に有り余るお金(このコラムでわたしが何回か「世界を徘徊する6000兆円のホームレスマネー」と呼んだもの)を呼び込むことである。道州制とは富の再配分機構としての中央集権国家を解体し、世界から富を呼び込む責任を「地域国家」に持たせる、というものである。同時に一部の立法権限を道州に委譲することによって富の創出を真に志向させるものである。すなわち、富を真に作り出すか世界から呼び込む行政の単位 ―― これが道州ということになる。
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