“無用の被ばくは避けられた”7月15日 18時44分
放射性物質の広がりを予測するシステム「SPEEDI(すぴーでぃー)」について、政府の事故調査・検証委員会は、近くまとめる最終報告で、東京電力福島第一原子力発電所の事故で避難に生かされていれば、住民の無用な被ばくを避けられたとする見解を盛り込むことが分かりました。一方、国会の事故調査委員会は、「精度に限界があり避難の根拠にできない」としていて見解が別れています。
福島第一原発の事故で、政府は、SPEEDIの予測の前提となる放射性物質の放出源の情報が地震の影響で得られず、事故発生の当日から仮のデータで予測していましたが、その結果を、当時、公表しませんでした。
この問題について、政府の事故調査・検証委員会は、文部科学省が予測していた結果や住民がどのように避難したかを検証し、今月23日にまとめる最終報告に盛り込むことにしています。
それによりますと、去年3月15日午後の予測結果では、放射性物質は西や北西など陸側の方向に拡散していくとなっていましたが、原発近くの南相馬市や浪江町では、当時、住民が放射性物質が広がる方向に避難していました。
一方、3月16日の明け方からは風が海向きに変化し、放射性物質は海側に拡散すると予測されていました。
このため政府の事故調査・検証委員会は、SPEEDIが避難に生かされ、住民が15日には屋内にとどまり16日になってから避難していれば、無用な被ばくを避けられたとする見解をまとめています。
一方、国会の事故調査委員会は今月上旬にまとめた報告で、「SPEEDIは、予測に用いる気象情報の精度に限界があり、避難の根拠にできるほど正確性を持つものではない」という見解を示しています。
SPEEDIを巡っては、避難にどう活用するかを、9月までに発足する国の「原子力規制委員会」が検討することになっていますが、2つの委員会で見解が分かれたことは、今後の議論に影響を与えそうです。
浪江町長“悔しい思いと残念な思いが交錯”
浪江町の馬場有町長は「SPEEDIの利用が不適切だったという指摘は、私たちが主張してきたことと同じで、非常に残念なことだ。町民は無用な被ばくをしなくても済んだわけなので、非常に悔しい思いと残念な思いが交錯している。結果をすぐに関係機関や避難自治体に伝えるシステムが必要で、政府に法的な整備を望む」と話しています。
“読み取る力、われわれにも求められている”
災害時の情報提供に詳しい、東京女子大学の広瀬弘忠名誉教授は「地震のような大きな災害の時には、そもそも確かな情報が得られることはない。原発事故の教訓として、不確かな情報の中から、何がどう使えるかを読み取る力が、防災担当者だけでなく、われわれ国民にも求められていると思う」と話しています。
[関連リンク] |
|